二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

天空天河 五

INDEX|4ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

 長蘇は、無邪気に笑って見せた。

 謝玉はわなわなと体を震わせている。
「梅長蘇!!!。
 私を愚弄するとは許さぬ!。殺してやる!。」

 笑いながら、長蘇は言う。
「謝候ともあろう方が、庶民を理由もなく殺すと?。
 私の手には、証拠がある事をお忘れで?。
 私の身に何かがあれば、配下が動きますよ。
 そうしたら、謝候はお終いだ。あはははは、、。」

「ハッ!!、皆、お前のでっち上げだろう!!。
 陛下の寵臣に、お前如き一介の民が、何が出来る。
 陛下は私を疑わぬ!!。」

「あはははは、、、、。
 謝候、本当にそうなので?。
 一見、国の厄介事を、片付けるように見えて、謝候が、皇太子派として動いているのは、見え見えなのでは?。あの闇炮坊だとて、謝候が皇太子を唆したのでしょう?。
 陛下は全てご存知で、最近は謝候にうんざりしているのでは?。
 その証拠に、陛下に召される日が減ったとか。
 それ所か、会ってもらえぬ日もあるとか?。
 あははは、、。」

「梅長蘇!!!!。」
 謝玉は怒りを露(あらわ)にした。
 確かに謝玉は、皇帝に疎まれつつあった。
 以前からその兆候はあったものの、言葉と軍圧で、皇帝の不満を押さえつけてきた。
 確かに長蘇の言う通り、昨今は、目通りを断られる日も。
「お前が、、お前が陛下を唆し、、謀ったのか!!。お前如きが!!、この私を!!!。」

「謝候は、詰めが甘いのですよ。
 綻びはそこかしこに。
 謝候の杜撰(ずさん)さには驚きですよ。私が拾える所に、証拠を置いておく、、無防備過ぎますね。道標かと思いました。あははは、、、。
 まぁ、謝候程度の頭では、仕方の無い事ですね。
 力なぞ、何の役にも立たぬのですよ。
 楽しい夢を見たと思って、観念なさるのが宜しいかと。」

「黙れぇッ!!!」
 ドンッッ

「、、、ぐッ、、、。」
 長蘇は、力強い衝撃に飛ばされ、床に打ち付けられた。

「、、、ぅ、、ぁ、、、はぁッ、、、、、。」
 長蘇は、衝撃で息が付けなくなり、時間をかけて、やっと呼吸ができる様になった。
 謝玉は離れた所にいて、直接、謝玉に手を出された訳では無い。

「一体、、、何が、、、。」
 長蘇は驚いて見せたものの、これこそが、長蘇が待っていたものだった。
 謝玉の持つ『魔』の力。
 謝玉の『魔』の功力を受けて、長蘇は飛ばされたのだ。
 長蘇は、内心、にやりとしたが、謝玉に対して、『何が起きているのか分からない』と、呆然とした様子を見せてやった。

 怯えた様子の長蘇に、謝玉は高笑いをする。
「良い気になるなよ、梅長蘇。お前はここで終わるのだ。」
 謝玉の広げた両手は、闇で覆われ、大きくなる。
 謝玉がその両手を合わせると、闇の玉は更に大きくなり、唸りを上げた。
「は────ッ!!!。」
 謝玉が長蘇に向けて、闇の塊を投げつけた。
 長蘇は床に座ったまま、身動き一つ出来ない。

   キイン

「ギヤァァァァ、、。」
 金属と金属が当たる様な音がして、叫び声が上がる。

「馬鹿者!!!。」
 靖王が長蘇に言った。

 長蘇の目の前には、靖王がいた。長蘇を守るように、謝玉の攻撃を遮っていた。
 長蘇は、数発は、謝玉の攻撃を、受ける覚悟と用意はしていたのだが。

「、、一体、何が?、、。」
 呆気に取られて、靖王に尋ねた。
「分からん。
 、、、来るなと言われたが、お前が心配で、こっそり、寧国公府の庭に隠れて、見守っていたのだ。
 お前と謝玉の言い争いで、、、危ない目に遭ったら助けようと、、、。
 謝玉の手から、黒い靄(もや)の塊がお前に向けて発せられて、、、、。
 無我夢中でここに、、、。
 必死であまり覚えてはいないが、、、、剣で跳ね返した様な気がするのだが。」

「謝玉の攻撃を、跳ね返した??!!。」
 ぽかんと靖王を見る。
 確かに、靖王は剣は抜いていたが。
 靖王の持つ剣は、良い剣ではあるが、『魔』を制する為に作られた、聖剣でも何でもない。
 普通の武人が持つような剣だ。
「その剣で跳ね返しただと??!!。」
「それより、そこの屋根に飛流も居るのに!。飛流を何故、呼ばぬのだ。
 飛流ときたら、主がこれ程の危機にあると言うのに、助けに行く素振りも無い。
 お前の配下は何なのだ??!!。」

「、、ぅ、、、おのれ、、、、。」
 自分が繰り出した『魔』の功力を浴び、倒れ、のたうち回っていた謝玉が、我に返った。
「おのれ!!、、、梅、長蘇!!!!、、、。」
 その声は謝玉のものでは無く、この霜林閣の建物を、ぶるぶると揺るがす響きを持っていた。

「、、、ただでは済まさぬ。
 邪魔をした靖王と共に、亡びよ!!、、、。」
 天を仰ぐ様に、両腕を上げると、謝玉の頭上に、黒い靄が焼き出して、建物の高い天井一杯に広がった。
 闇の靄は、轟音と共に、ばりばりと雷まで響かせ、更に強大になった。


「なんて強大な、、、。あれは一体何なのだ?。
 、、小殊、私の陰に隠れているのだ!。」
 靖王は体で、謝玉から長蘇を遮り、守ろうとした。

「ハハハハハハ!!!!。」
 謝玉が高笑いして、更に強大になろうとしている。

「退避しよう!、小殊。
 外に靖王府の軍が居る。
 飛流に、我が軍を呼ばせよう。
 謝玉が、外に出ぬようにせねば。」
 靖王が長蘇を、立ち上がらせた。
 長蘇を支えて、霜林閣を出ようとしている靖王を拒み、この場から動こうとしない。
 そして靖王ににっこりと笑いかけるのだ。
「小殊?、何を呑気に、、。」
 眉を顰める靖王。
『任せておけ』という表情を向けた。
━━小殊!!。━━
 まるでその表情は、何かを企む林殊そのものだった。

「飛流───!。」
 透き通った長蘇の声が辺りに響く。
 その声は、謝玉の繰り出す、闇の轟音にも勝った。

 直ぐに漆黒の龍が、霜林閣に入り、謝候の周りを、遠巻きに回っていた。

「謝玉の周りに、黒い龍が!、、、。
 奴は、黒い龍まで出せるのか?。
 謝玉はどれほど、強大になるのだ!!。
 一先(ひとま)ず、お前をここから出す。」
靖王の真剣な眼に、長蘇は少し可笑しさを覚えた。

「景琰、慌てるな。よく見るがいい。」
「景琰?。」

 うっかり長蘇が、『景琰』と呼んだのを、靖王は聞き逃さなかった。
 しまった、と思ったが、口から出てしまった言葉は、取り消せはしない。
 長蘇は、取り繕うように、言った。
「あの黒い龍は、飛流だ。」
「何ッ!、飛流だと?!。」

 黒い龍はぐるぐると、謝玉の出した黒い靄を、混ぜるように回っていたが。
 黒い龍が回っている間、次第に謝候の靄は薄れて、消えていき、黒い龍は呆然とする謝玉を、締め付ける様に巻いた。

「ぎぁぁぁぁ、、、、、。」
 龍の塒(とぐろ)の中で、謝玉は絶叫した。

「飛流!!!、殺してはならぬ!。」
 長蘇が黒い龍に言う。
 すると龍の塒は解けた。

 中から出てきたのは、真っ白になった髪を乱した謝玉だった。
 謝玉はその場に、力なくどさりと倒れた。
「、、、ぅ、、ぅ、ぅ、、、、、。」
 謝玉は死んではいない。倒れたまま呻いていた。

 黒い龍は、長蘇に向かって飛んできた。
作品名:天空天河 五 作家名:古槍ノ標