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天空天河 五

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 咄嗟に靖王が、長蘇を庇う為、黒い龍から遮ろうとした。
「殿下、大丈夫です。」
 と、長蘇は一歩、前に出た。

 龍は次第に飛流に姿を変え、長蘇の前に来た時には、すっかり飛流の姿になっていた。
 飛流は長蘇の胸に飛び込んだ。
「飛流、ご苦労だった。」
「黒い龍が飛流に、、、、?。
 、、しかも、大きくなっている?。
 、、、、、一体、どういう、、、。」
 長蘇に、『黒い龍は飛流だ』と言われても、靖王には、『人が龍になれる訳が無い』と、固定観念から、信じてはいなかった。
 飛流の頭を撫でながら、長蘇が意味深に笑う。

「宗主!。」
 そう言うと、鎧を着た謝玉の配下達が、長蘇に跪いた。
 靖王は驚いた。
「何ッ!、この者達は、江左盟の配下だと??。」

「最も辛い場所で、密偵をさせた。
 長年、謝玉の元で、、正義に背く任務も多かっただろう、、。」
 慰めるように、長蘇は跪いた兵達に言った。
「いえ、、江左盟が、我らの任務の後の片付けをしてくれましたので、安心して事に当たれました。」
 先頭で跪く一人が、答えた。

 密偵の者達は、謝玉に、村の焼き討ちや、村人の殺害等の令を受けたが、逃げる人々の急所を避けて矢を撃ったり、峰打ちにして、気絶させ、命を取らなかった。
 その後を、江左盟がその地に入り、息のある者を救っていった。
 彼らが密偵になって、謝玉の不条理な命令から、幾らでも救える命を救おうと動いたが、始めのうちは、救えた命はわずかだったが。
 謝玉を快く思わぬ者は、巡防衛の中に燻っており、この将校は仲間を増やしていったのだ。
 そして仲間と共に、要領良く、謝玉の信頼を得たのだ。

 軍の有り様が分かるだけに、逆らえぬ軍務が、どれ程辛いか、長蘇にはよく分かっている。
「悪行に目を瞑ったり、加担する事は、どれ程辛い事か。
 本当に良くやってくれた。
 今後は靖王殿下の元で、力を発揮してくれ。」
「はっ。」
 若い将校は、靖王に頭を下げ、配下達もそれに倣った。
「何故、、、私の元だと、、?。
 彼らは巡防衛の所属だ。」
「誉王の懐刀、慶国公は失脚。
 片翼の軍公、謝玉もこの有様。」
 謝玉は見るも無惨に、ざんばらの白髪を直すことも出来ずに、床に伏して呻いている。
 卑屈に見上げる眼は曇り、かつての鋭い眼光は消え失せた。誰が見ても、廃人同然だった。

「謝玉は巡防衛や軍部を私物化していた。それは誰の目にも明らかで、陛下も分かっているはず。
 覚え目出度き靖王殿下以外に、誰が任されると?。
 信じられぬのも無理はありませんが、是非、お受け下さい。
 この者達を、救ってください。」

 暫く考え、靖王は頷き、兵士達に語った。
「巡防衛は、本来この都の治安を守る者。
 真っ当な職務に戻し、本来の巡防衛の姿に戻せば、この者達は救われるのだな。
 本当に私に、巡防衛の任が来るかは分からぬが、そうなったなら、尽力すると誓おう。」
 将校たちは、靖王に跪拝した。
「私になど、拝礼の必要は無い。」
 そう言って、靖王は将校を立たせた。

「靖王府の殿下の配下を、ここに呼びましょう。
 謝玉が何をしたのか、しっかりと聞いてもらわねば。
 そなた達も、聞くべきだ。
 まずは、寧国公府の門を開き、靖王府の皆さんをここへ。」
「はっ。」
 長蘇が言い、将校達は、寧国公府の門の方へと去った。

 そして長蘇は、飛流に言う。
「飛流、話せる程度に、少しの力を、謝玉に入れてくれぬか?。」
 長蘇にそう言われると、飛流は掌に、拳大の闇を作り出した。そして、フッ、と息で飛ばし、謝玉にそれをぶつけた。
「グッ、、、。」
 謝玉は呻く。

「飛流、戦英達に来るようにと。」
「云!。」
 長蘇の令に、飛流は素直に返事をすると、軽々と飛んで、門の方へ向かった。

「コラ飛流!!、龍に変わっては駄目だぞ!!。」
 長蘇は、飛んでいく飛流に言った。
 夕暮れに飛ぶ、飛流の周りが、黒く靄がかっていたのが、消え、飛流は、寧国公府の屋根を越えて、飛んで行った。
 長蘇と靖王は、眩しそうに飛流を見た。
 辺りは夕日に照らされ、間もなく、日没になるだろう。




「さて、謝候、話してもらおうか。
 赤焔事案での、謝候の役割を。」
 長蘇は謝玉に向き直り、言った。
「魔物め、、、。
 陛下の寵臣の私を、、、。
 、、天下を騒がせて、怖くないのか、、。」
 謝玉が長蘇に毒を吐く。
 飛流に力を入れられて、やっと座れる程度にはなった様だ。
 やっとの事で動ける有様なのに、悪態をつく謝玉を、鼻で笑って、長蘇が言う。
「魔物のお前に、魔物呼ばわりとは、、笑えるぞ。
 陛下は、お前を疎ましく思い始めていたのだ。
 排除する機会を得て、陛下は私に感謝するだろう。」
「ぐうぅぅ、、、。」
「生きていたいのだろう?、謝玉。
 欲の塊の様な、お前の望みが見抜けぬと?。
 生きてさえいれば、返り咲く機会があると、そう思っているのだろう?。
 、、先程、飛流が力を入れた。
 だが、それも僅かなものだ。
 お前の命も、あと十日程?、いや、、数日か??。ふふふ。」
「、、、何だと、、ぁぁぁ、、、、。」
 謝玉は己の力を、飛流に吸い取られ、立つ事も出来ぬ程の、損傷を受けた。謝玉は自分でも、身体がどうなっているか、よく分かっていたのだ。
「生きたいか?、謝玉。
 お前がした事を全て明かせば、生きるだけの力を戻してやろう。
 これから靖王府の軍が、ここに来る。
 皆に、全てを話すのだ。
 包み隠さず明かすのだ。
 そうすれば、お前が生きられるだけの力を戻そう。」
 謝玉は、長蘇を睨みつけ、
「話す、な?、謝候。」
「、、、、。」
 謝玉は暫く考え、こくんと頷いた。
「謝候に感謝を。
 話してくれれば、その後に、力を戻しましょう。」
 長蘇は謝玉に拱手する。


 密偵の後に、靖王府の配下等が十数人、ぞろぞろと続き、霜林閣の中庭へと入ってきた。
 戦英が靖王と長蘇に拱手して、挨拶をする。
 靖王は力強く頷いた。

「さて、謝候、話して頂けますね?。」
「、、ぅ、、う、、、、、。」
 謝玉は中庭に並ぶ者を見回し、目を瞑ると、話を始める。
 あの溌剌(はつらつ)としていた謝玉とは、別人の様で、乱れた白髪は、まるで先の短い老人のようだった。
 だが、謝玉に間違いは無い。
 辺りは水を打ったように静まり、謝玉のか細い声に、聞き耳をたてた。

「赤焔軍は、、、逆賊では無い、、、。」
 辺りはその一言に、息を飲んだ。
「、、、だが、、私だけで陥れた事では無い。
 私は唆されたのだ。」
「誰にです?。」
 謝玉は一瞬、長蘇を見た。そして、重い沈黙の後に、口を開いた。
「、、、、それは、、、、、、か、、、、。」
 重々しく、言葉を吐いた、その瞬間だった。
「うっ、、、。」
 謝玉の胸に、矢が刺さる。
「しまった!。」
 霜林閣の向かいの建物の、屋根に動く黒い影が、消えた。
「飛流!、捕まえろ!。」
 すぐさま、飛流は影を追う。
 戦英と配下が、それを追った。

 謝玉は心の臓を射られ、絶命していた。
「何と、呆気ない最後だ。赤焔事案の再審は、また振り出しに戻ったのか、、、。
作品名:天空天河 五 作家名:古槍ノ標