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籠の中の鳥

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「ん…」

鳥のさえずりで目をさます。時計。いつも枕元に置いてある時計がない。手を伸ばして探るが何もつかむものはなくて、目を開いたら天井がいつもと違った。
(あ、ここヒバリさんの家なんだっけ)
隣を見ると、すやすやと眠るヒバリ。その寝顔に何か胸がしめつけられ、自分のほうに投げ出された腕をやんわりとはずす。
「おはようございます」
起こす気はなく、そう小声で言うだけ言ってベットから降りた。足音をあまりたてないように気をつけながらキッチンへ向かう。おなかがすいた。
「冷蔵庫……」
開くと、お弁当はない。朝だけは軽く作ろうと思っていたからだろう。冷蔵庫には、ベーコンと卵、牛乳があった。
「卵。うーん」
目玉焼きなら作れる。ただ、勝手に台所を使ってもいいのだろうか。見るとフライパンや包丁などはきちんとそろっている。
ツナはしばらく悩んでから、思い切って作り始めた。

形は少し不恰好だがちゃんと完成した。テーブルに二人分の朝食を用意する。なんだか気持ちが弾んだ。たまには料理もいいもんだ。
そう思いながらコップに牛乳を注いでいたとき、ちょうど階段を下りる音が聞こえてきた。
「綱吉?」
「あっヒバリさん。おはようございます」
「おはよう」
黒い、少しだけ大き目のパジャマに身を包み、まだ寝ぼけ気味のヒバリが、一言そう挨拶してからテーブルに視線をうつした。並んだ二つのお皿をみて、ヒバリはしばらく黙っていた。
「あ、あの、ヒバリさん?」
「……」
「やっぱり台所使っちゃいけませんでした?ごめんなさい……」
沈黙を不機嫌と捉え、ツナはあやまる。
「あ、いや。君が作ったの?」
「はい。ごめんなさい」
「あやまることじゃない。じゃあ、食べようか」
「はい」
椅子に座って、しょうゆをかける。かけるものは人それぞれだから何もつけずにいたのだけれど、ヒバリもしょうゆ派だった。
「ヒバリさん?しょうゆ、多すぎません?」
「あっ」
ためらいがちに言うと、ヒバリはあわてて手を止めた。
「どうかしたんですか?」
「いや、緊張してしまって」
「は?」
「君の手料理だから」
ヒバリは目を伏せてばつの悪そうに呟く。予想外の言葉にツナは脱力した。
「手料理って……」
言うほどでもない。目玉焼きなんて、正直味付けの必要もないし誰が作っても同じだ。それでもヒバリはおいしいおいしいと、言われるほうが恥ずかしくなるほど褒めて、あっという間に平らげた。
「おいしかったよ。ごちそうさま」
あんまり料理に慣れてなくて、こげていたけどヒバリは何も文句も言わなかった。この程度の料理なのになんでこんなに喜ぶのか、と思いつつも、自分が作ったものをおいしいと言って食べてくれるのは思いのほかうれしかった。今度母さんの手料理を食べるときにはそういってあげよう、と心に決める。

「ヒバリさん何してるんですか?」
ワイシャツに着替えて、学ランを肩にひっかけるヒバリをみて、ツナは声を上げた。
どうみてもそれは学校に行く格好だ。
「委員の者に呼び出されてね。今日やらなければならないことがあるんだ」
風紀委員長ともなれば仕事も多い。わかっているが、ヒバリは自分と一緒にいてくれるものだと思っていたから落胆が大きかった。この家に一人でいて何をしろというんだろう。
「どうしても、今日行かなくちゃだめなんですか?」
「うん。手違いがあってね。大丈夫、すぐ戻るから」
ヒバリ自身も、学校に行く気はなかったから、急の用事にいらついていた。
「早く帰ってきてくださいね」
残念そうに言うツナの顔が、余計にヒバリを苛立たせていた。電話をよこしてきた委員、あれは絶対にかみ殺す。
「16時までには戻る。行ってくるよ」
「……いってらっしゃい」

何とはなしに言った言葉が、ヒバリの苛立ちを溶かしたことをツナは知らない。

用意してくれてあった着替えにきがえる。めったに見られない平日のテレビを見ていても、すぐに飽きてしまって、ツナはソファーに寝転んだ。ふかふかのソファー、気持ちいい。クッションを枕にして目を閉じる。
いつ帰るのか、なんで自分をつれてきたのか、『僕の気持ち』とはなんなのか。考えながら、それでも思考はまとまらなくて、急速な睡魔にあっさりと身を預けた。どうでもいい。ただヒバリといると心が安らぐから。深く考えなくても、ただそれだけでよかった。

作品名:籠の中の鳥 作家名:七瀬ひな