二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ワクワクドキドキときどきプンプン 2日目

INDEX|16ページ/32ページ|

次のページ前のページ
 

 義勇たちへの気遣いばかりでもなく、全種類制覇も本気で言っていたんだろう。ジェットバスに義勇たちが向かったときには、すでに宇髄らの姿はなかった。家を出る前に真菰のタブレットで施設の内容は見ているし、どんな順番で回ろうかと相談もしている。落ち合う場所も決めているのだから、中学生二人を心配をする必要はないだろう。
 次は錆兎が興味津々だった電気風呂に行ってみたが、子供たちには刺激が強すぎ、我慢比べどころじゃないと早々に上がる。真菰がねだるままに本当は一人用らしい壺湯に全員で入ってみたときには、さすがに狭くてぎゅうぎゅうとくっつきあうことになった。
 お湯よりも、互いの身体が触れている面積のほうが多いんじゃないかと思うくらいだったけれど、子供たちは狭い狭いと言いながらも楽しそうだった。寝ころび湯では禰豆子が本気で眠ってしまいそうになり、次の湯まで義勇が抱っこして運んだりもした。
 風呂だけでもそれなりに楽しめるものだと、少しばかり感心しつつ、色々と巡っているうちに時間は過ぎていく。

「露天風呂に入ってから、ツリーハウスに行くか」
「そうだね。そろそろ煉獄さんたちも行ってそうだし、そうしよっか、禰豆子ちゃん」
「うん! ツリーハウス楽しみ」
「義勇さんもそれで大丈夫ですか?」
 子供たちが盛り上がるのにうなずいてやりながら、義勇は、少しだけ不安を覚えた。
 体力が覚束ない義勇は、日ごろ長湯をすることがない。一緒に入っている錆兎はといえば、じつはけっこうな風呂好きで、本来なら鱗滝や真菰が呆れるぐらい長湯だ。けれど今は、義勇に付き合って自分もさっさと上がってしまう。
 いつだって我慢ばかりさせてしまっているから、こんなときぐらいは、たっぷりと風呂を堪能させてやりたい。だが、今の自分の体力で最後まで付き合えるのか、心もとなさは如何《いかん》ともしがたかった。短めの時間で次々と回っているとはいえ、湯に浸かるたびにだんだん逆上せてきている気がする。気分が悪くなる前に自分だけ上がらせてもらえるといいのだが。
 でもきっと、途中で自分が出てしまったら錆兎もついてくるだろう。もちろん、炭治郎も真菰も、禰豆子だって同様だ。せっかく楽しんでいるのに、自分のために中断させるのは忍びない。
 だから義勇は、つい我慢してしまったのだ。いつもよりも進んだ食事や、熟睡できたことで、楽観していたのは否めない。少しぐらいなら大丈夫。以前の自分と同じと言わないまでも、もう少しぐらいは。きっと大丈夫と。
 露天風呂に行くことが決定して、義勇は内心ホッとした。露天風呂の後はツリーハウスのある中庭で少し休むと、家を出る前からすでに決めてある。義勇の体力を考えた真菰が、あらかじめみんなに言い聞かせていた。
『私たちはツリーハウスで遊べるし、義勇たちはベンチで休めるでしょ? 休憩所やレストランより空気もよさそうだし、遊んで汗かいたらまたお風呂入って、その後でご飯。決まりねっ』
 そう言った真菰はもちろん、錆兎や煉獄たちもきっと、休憩を挟むことで義勇が気兼ねするのを案じたに違いない。不甲斐ない自分に合わせてもらう申し訳なさは変わらないが、意地を張ればなおさらみんなを心配させてしまう。
 休憩しているうちに体調も戻るだろう。あとちょっと我慢するだけでいい。それぐらいなら大丈夫。そう思っていたのだ。まさかあんなことになるとは、かけらも想像することなく。


 露天風呂に行くと、宇髄と煉獄が先に入っていた。ほかにもちらほらと女児がいるせいか、禰豆子や真菰が近づいてももう慌てる様子はないが、それでもやっぱり二人とも少し照れくさそうだった。
「あのね、禰豆子、ぎゆさんとお揃いなの! ほら!」
 湯に浸からないようにと、真菰によっていつもより高い位置で結ばれた義勇の髪を指差して、禰豆子がポニーテールにした自分の髪を揺らしてみせる。
「おー、そういう髪型も似合うな、禰豆子。しっかし……冨岡はそうしてると、後ろから見たらまんま女子じゃねぇ?」
 一瞬ビビったわと宇髄に笑われ、義勇は思わずムッと眉を寄せた。
 宇髄や煉獄にくらべかなり細いのは明らかだし、こんな髪型では女に見えなくもないだろうと、自分でも思わなくもない。だが、思っても口にしないでほしい。
「そんなことないよ。似合うんだから男子とか女子とか関係ないでしょ」
「そうだぞ、天元。公衆浴場で髪をだらしなくお湯につけてるより、全然いいだろ」
「へいへい、俺が悪かったって。んな睨むなよ」
 不満は錆兎と真菰が代弁してくれたし、宇髄の謝罪で終わった話のはずだった。
 会話を黙って聞いていた煉獄が目前に近づいて、しげしげと義勇を眺めまわしてきたのも、訝しくはあったがまだいい。痩せた体を見られるのはいたたまれないが、男同士だ。嫌がるほうが変なのかもしれないとも思ったし。

 問題はその煉獄が、ふむ、と一言呟いた後のこと。いきなりガシリと義勇の肩をつかんだ挙句、前日の宇髄のようにぺたぺたと体を触りだすだなんて、誰が思うものか。

 道着の上からでさえ面食らったというのに、面と向かって素肌を触られまくった義勇の驚きは、一瞬で限界値を超えた。思考は停止状態。声もなく目を見開くことしかできない。
 逆上せかけていたはずが、ダラダラと冷や汗が流れ出す。だというのに煉獄は、至極真面目な顔でうんうんとうなずくばかりで、手を放してはくれない。
「なんで義勇さんを触るんですか!? よしよしは慣れてからにしてくださいって言ったのに!」
 煉獄とのあいだに割り込んで抱き着いてきた炭治郎が、叫ぶように言う。言葉の内容はともかく、助かったと義勇は安堵しかけたが……。
「いや、筋肉を見たくてな! 宇髄の言うように冨岡は女子と同じぐらい細いだろう? スタミナもないと言うわりには剣先がブレなかったから、かなり良質な筋肉なのだろうと思ってな! ……うん、思ったとおり柔らかくていい筋肉だ!」
「柔らかいといいんですか?」

 待て。そこで興味を持つな、炭治郎。そう言いたかったけれど、咄嗟には声にはならない。
 おまけに。

「ああ、そういやいい筋肉の条件はそうらしいな。普段は柔らかくて力を入れたときだけ固くなる筋肉のほうが、アスリート向きだってよ。イチローの筋肉とか、すげぇ柔らかいって聞いたことあるぜ」
「そうなのか? 義勇は細いけどちゃんと筋肉はついてるし、触ると腕とか肩とか柔らかいんだ。イチローみたいないい筋肉ってことだな!」

 よけいなことを言うな、宇髄。うれしそうにしてないで助けてくれ、錆兎。

「へぇ! あ、本当だ。義勇さん柔らかい!」
 困惑しきって焦る義勇をよそに、抱き着いたままの炭治郎は背中だの胸だのを触ってくるし、どれどれと後ろに回り込んできた宇髄も腕やら腹筋やらに触れてくる。煉獄の手はまだ肩に乗ったまま。となれば、当然のように禰豆子も触りたがるわけで。本当だぁと無邪気に笑うのはいいが、足を揉むのはやめてほしい。