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ワクワクドキドキときどきプンプン 2日目

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 炭治郎は真菰の言葉に少し言葉を詰まらせていた。口にしていいのかわからないという顔をしている。
「禰豆子ちゃんはね、炭治郎にも我儘を言ってほしいんだよ。私や錆兎が、義勇に我儘を言ってほしいって思うのと同じなの。大好きだからいっぱい我儘言って、いっぱい甘えてほしいんだよ。私と錆兎は、義勇に我儘言ったり甘えたりもするよ。私たちが我儘言って甘えると義勇がうれしそうにしてくれること、ちゃんと知ってるから」

 義勇のことが大好きで、義勇も私たちのこと大好きって思ってくれてるの、知ってるから。

「炭治郎と禰豆子ちゃんも同じでしょう?」
 笑う真菰の顔は、とてもやさしい。やっぱりお姉ちゃんみたいだ。炭治郎と同じ、温かくてやさしい笑顔。
「うん、禰豆子も、真菰ちゃんとおんなじ。お兄ちゃんが大好きだし、お兄ちゃんが禰豆子のこと大好きなのも知ってるよ」
 義勇と炭治郎は違うのかと、炭治郎の向こうに見える義勇へと禰豆子は視線を向けた。涙でぼやける義勇の顔は、それでもきれいで、ちょっと困っているように見える。炭治郎が困っているのと同じように。
「あの……俺……」
 ためらいながら口を開いた炭治郎を、全員で見守ってしまう。宇髄の口が声にしないまま「言え、言っちまえ」と動いてるのがわかった。煉獄と錆兎も固唾を呑んで炭治郎を見てる。鱗滝も箸を止めてじっと炭治郎と義勇を見ていた。

「俺っ、本当はさっきやきもち妬きました! 俺だって義勇さんと一緒にお風呂入りたかったから! 義勇さんの髪を洗ってみたかったし、俺の頭も義勇さんに洗ってほしいです! 一緒にお風呂で百まで数えたいし、偉いって褒めてもらいたいし、義勇さんのお尻の傷だって俺も見たいし、それから、それから、あの……」

 一気に言った炭治郎が、少し肩を落として隣の義勇を見上げた。

「俺、義勇さんの弟弟子になりたいです……義勇さんと一緒がいいです……」

 義勇をじっと見つめて小さな声で言った炭治郎に、宇髄と錆兎がよしっとうなずきあう。煉獄も微笑んでいた。鱗滝も笑っているけど、ちょっと涙ぐんでるみたいだ。
 まだ涙が止まらない目で真菰を見れば、真菰もうれしそうに笑ってうなずいてくれて、ようやく禰豆子の顔にも笑みが戻る。
 でも、まだ義勇の答えを聞いていない。一番肝心なのは義勇の気持ちだ。
 みんなの視線が義勇に向けられる。義勇はますます困っているように見えた。だけどじっと炭治郎を見つめている。瑠璃の瞳は炭治郎の赫い瞳から外れず、ただじっと見ている。
「……炭治郎が大変なのは、嫌だ」
 暫しの沈黙のあと、紡がれたのはそんな言葉。けれど、しょんぼりとうつむきかけた炭治郎の顔をふたたび上げさせたのも、義勇の言葉だった。

「だけど、もし炭治郎が俺の弟弟子になったら……うれしい。すごく、うれしい」

 言いながら、義勇の顔がゆっくりとうつむいてゆく。炭治郎の顔が上げられたのとは反対に。
 義勇も炭治郎も不器用だ。不器用で、とてもやさしい。やさしすぎて自分のことは全部二の次にしちゃうくらいに。
 大好きだから我儘を言いたい。大好きだから困らせたくなくて言えない。それを繰り返す。二人を見ているとなんだか胸の奥がほわっと温かくなるのは、きっと大好きが溢れているからだ。

 パァッと輝いた炭治郎の顔。少し戸惑っているようだけど、それでもうれしさを隠しきれていない義勇の瑠璃の瞳。二人が幸せそうなのが、禰豆子にはただうれしかった。
 大好きなお兄ちゃんが、もっと義勇に甘えられたらいいと、禰豆子は思う。炭治郎はお兄ちゃんだけど、禰豆子と同じで小学生なんだから。義勇よりずっと子供なんだから。
 たまにはお兄ちゃんだって弟になればいいのだ。竹雄や花子みたいに甘えん坊で我儘な、義勇のかわいい弟に。義勇が──やさしくて強いお兄ちゃんが、きっと炭治郎を甘やかしてくれるはずだ。

 禰豆子が甘やかしてあげられないのは残念だけれど、でも悔しい気持ちはすぐに消えた。炭治郎が笑ってくれるなら、それで禰豆子も幸せなのだ。

「義勇、明日は炭治郎たちに稽古をつけてやれ」
 親御さんには後でわしから相談することにしようと、少し涙ぐみながら鱗滝が言ったのに、義勇が小さくうなずいた。
「炭治郎、俺の予備の竹刀をやる。がんばれよ」
「禰豆子ちゃんには私のをあげるね。お父さんたちがいいって言ったら、鱗滝さんとお迎え行くよ」
 錆兎と真菰の言葉に、禰豆子は炭治郎と顔を見合わせた。炭治郎の頬はちょっぴり赤い。少し恥ずかしそうで、でも目はキラキラとうれしげに輝いている。それがとてもうれしくて、禰豆子の胸は幸せではち切れそうだった。
「うん! ありがとう真菰ちゃん、お兄ちゃんと一緒にがんばる!」

 明日からお兄ちゃんと禰豆子も、真菰ちゃんたちやぎゆさんの弟と妹!

 とってもワクワクして、なんだかドキドキする。新しいことはいつもワクワクドキドキだ。
 きっと残りのお休みも、ずっとこんなふうにワクワクドキドキするんだろう。
 それがとっても楽しみな禰豆子だった。