二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ワクワクドキドキときどきプンプン 3日目

INDEX|2ページ/44ページ|

次のページ前のページ
 

 そうしてへとへとになるまで稽古して、ようやく午前の稽古が終了したときには、炭治郎も昨日の禰豆子のようにぐったりと疲れ果てていた。昨日はまだ正式に弟子になったわけじゃなかったから、義勇さんもちょっとやさしく教えてくれてたんだなぁと、しみじみと思ってしまうくらいには、疲れた。
 禰豆子はといえば、言うまでもない。でも、禰豆子も一度だって弱音を吐かなかったので、炭治郎としては誇らしかったりもする。剣道が嫌になっちゃうかもと、ぐったりしている禰豆子を見てちょっぴり不安になったけれど、禰豆子は禰豆子で、真菰たちと剣道をやるのだという決意は揺るがないようだ。
 まだまだ甘えん坊だと思っていたのに、禰豆子もお姉ちゃんになってきたんだなぁと、炭治郎は昨日のスーパー銭湯での禰豆子を思い出す。
 きっともう禰豆子は一人でもいろんなことができるんだろう。まだまだ自分がついていてやらなくちゃ駄目だと思い込んでいた自分を、炭治郎は少し恥じた。禰豆子はどう思っていたのかなと、申し訳なさにちょっぴり焦ったりもする。

 ああ、宇髄さんが言っていた義勇さんが焦ってるっていうのは、もしかしたらこういうことなのかな。炭治郎は、今日もカメラで稽古の様子を撮っていた宇髄をうかがい見た。

 小さくて自分が守ってやらなくちゃいけないと思っていた禰豆子が、一人で義勇の介抱をしたり、炭治郎でさえ音を上げそうになる稽古に、よろよろしつつもついていったり。そんな様子は、「大丈夫、お兄ちゃんは一緒にいなくてもいいよ」と言われているような気がして。なんだか少し寂しいし、なんだかとっても焦ってしまう。

 まだまだ甘やかして面倒をみてやりたいと思うのに、禰豆子はどんどん小さな子供のままじゃなくなってしまうんだ。

 そんな不安や焦りを、もしかしたら義勇も抱えているのかもしれない。もしかしたら、宇髄はそれを感じ取ったのかもしれない。
 錆兎や真菰でさえ気づかなかったというのに。

 そういえば、あのときなんで宇髄さんから悲しいような怒ってるような、むずかしい匂いがしたのかな。

 言葉にするなら自嘲という名の宇髄の感情は、炭治郎にはまだむずしくてよくわからない。もしかしたら後悔と言い換えてもいいだろうけれど、まだ小学二年生の炭治郎には、宇髄にはなにか悲しいことがあったんだなとしかわからなかった。
 いろいろとむずかしいなと思いながら、そろそろ昼飯にしようという鱗滝の言葉にみんなで母屋に向かったのは、昨日と同じ。
 疲れ果てている炭治郎と禰豆子に、義勇や錆兎たちが心配そうにしていたけれど、午後からのお出かけを中止するなんて選択肢は、炭治郎たちにもなかった。
「俺らなら大丈夫! だから遊びに行こうよ」
 そう言って笑ってみせたのは、出かけるのを楽しみにしているみんなに水を差すのが、申し訳なかったからだけじゃない。なによりも、炭治郎が義勇と一緒に遊びに行きたいのだ。
 もちろん、家でDVDを見て過ごすのも楽しそうだとは思う。義勇と一緒にいられるなら、それだけで炭治郎はきっと楽しめる。
 それでも、できることなら一緒にお出かけしたい。だってせっかくのお休みなんだもの。
 ゆっくりのんびり過ごすのは、これからまだまだできるだろう。けれど、宇髄や煉獄もそろって一緒に遊べる休日なんて、きっとそうそうない。義勇と一緒ならなんだってうれしいし、二人きりなら舞い上がってしまいそうなくらい幸せな炭治郎だけど、宇髄や煉獄と一緒にいる義勇は、ちょっと雰囲気が違うのだ。どうせならそんな義勇も堪能したいと思ってしまう。
 お兄ちゃんでヒーローな顔でも、甘やかされる弟弟子の顔でもなく、同級生の友達といる男の子の顔をする義勇。それは宇髄や煉獄がいなければ見られない。
 義勇の無表情は変わらないけれど、それでも煉獄や宇髄には、とまどいながらも年相応な顔を覗かせる。そんな義勇にも炭治郎はドキドキしてしまうし、できることならもっと見たい。
 もしかしたら鱗滝も同じように感じているのかもしれない。義勇が宇髄たちと過ごすよう、さり気なくうながしている気がする。なんとなくだけれど、煉獄たちを頼りにしている気配がした。
 頼られる煉獄たちがちょっぴり羨ましくて、それ以上にうれしい。きっとそれは、義勇が以前の義勇に戻るためには必要なことだと、鱗滝が判断したんだろうから。
 炭治郎は以前の義勇を知らないけれど、義勇の心が迷子にならずに済むのなら、炭治郎だって強くそれを願ってる。
 だから。

「俺は昼から撮影の手伝いで出かけっから、おまえと冨岡でチビッ子どもの面倒みてやれよ」

 昼ご飯を食べながら宇髄が言ったその言葉に、炭治郎は思わず宇髄を見てしまったし、錆兎と真菰の目がきらりと光ったのは当然だろう。
 宇髄は煉獄にだけ言ったつもりだろうけど、そんな面白そうな一言を聞きのがせるわけがない。そもそも、今日の午後はどこに遊びに行こうかと話していた真っ最中だ。そんななかで聞こえた宇髄の言葉は、お腹を空かせた犬の前に差し出された、骨付き肉に等しい。
「撮影って?」
 すぐに食いついた真菰に、宇髄がしまったという顔をしたのに気づかなかったのを、煉獄は気づかなかったらしい。
「宇髄の知り合いが映画を自主制作しているそうだ。俺たちが公園に行ったのも、その映画のロケハンでな! 宇髄は美術スタッフをまかされているらしいぞ!」
 なんて、悪気なく言ってしまったものだから、茶の間はすぐに大騒ぎになった。
「映画って禰豆子も観られる? 一緒に行っていい?」
「どうやって撮るんですか? どこで撮るんですか? 見てみたいなぁ!」
「宇髄さんが持ってるカメラで撮るの? 宇髄さんカメラマンなの? 楽しそうだねぇ」
「天元なら地味な裏方じゃないんじゃないか? もしかして出演するのか? 天元の大根っぷりをみんなで冷やかしに行くか!」

「あーもーっ!! 派手にうるっせぇ!! 一斉にしゃべんじゃねぇよ、チビッ子ども! 絶対に駄目だからな!!」

 叫んだところで時すでに遅し。宇髄は散々ごねたけれど、煉獄も興味津々に子供たちの味方をしてくれたし、義勇まで無表情のまま少しそわそわして見えたので。あれよという間に、ゴールデンウィーク三日目の午後の計画は、宇髄が参加している映画撮影の見学と決まった。

 かくして、冒頭の台詞となったわけだけれども。
 初めて尽くしのゴールデンウィーク。映画撮影の見学だなんて、予想もしていなかったサプライズ。
 今日もやっぱりワクワクドキドキが止まらない日になりそうだ。