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ワクワクドキドキときどきプンプン 3日目

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 的確に相手を倒していく竹刀に躊躇はない。足手まといなんてとんでもなかった。この子は十分戦力になる。

 儚げできれいな女の子。だけど、強い。きっと、殴られ蹴られるままに泣くなんて、この子はしないと、信じられるほどに。

 むやみやたらとうれしい気持ちが湧いてくるのはなぜだろう。この子はきっと実弥に怯えることも、理不尽な暴力にも、負けやしない。そう信じられた。
「加勢はいらねぇなァッ?」
 自分に向かってくる敵のみぞおちにフックをたたき込み、振り返りざまに冨岡に言えば、横目で実弥を見た冨岡が小さくうなずいた。華奢な体躯がふわりと沈み、つぎの瞬間には飛び込むようにして敵の胴を打ち据えて、止まることなく手首を返し次の相手の腕をしたたかに打ち払う。無駄な動きは一切ない。一撃で決めるところは、実弥と同様だ。
 なんだかもう、笑いたくなってくる。ムズムズとする唇を抑えきれず、実弥はとうとう笑った。
「そっちは任せるぜェ!!」
「……了解した」
 初めて聞いた冨岡の声は、予想に反して女の子にしては低い。愛想なんてひとかけらもない、不愛想な声だ。けれども、冨岡らしいと思った。
 きっと冨岡は、甲高い声でキィキィとヒステリックにわめいたり、メソメソぶりっ子めいた泣き声なんてあげないに違いない。喋る言葉はきっといつでも落ち着いていて、低いけれどもやわらかく甘いのだろう。
 とてもきれいで、子供たちに心底慕われるほどやさしくて、とんでもなく強い女の子。こんな女は初めてだ。

 あぁ、この子なら。この子だったら、大丈夫だ。俺が好きになっても、きっと、大丈夫。

 だからもう、認めてしまえ。惚れたんだって。ライバルは多そうだが、それは重々承知の上だ。この子の周りにはやたらと顔の整った大男だの、いかにも男気溢れる獅子のような男だの、実弥の目にもイイ男なんだろうと認めるしかないやつらがそろっている。学校だって違うし、そうそう逢えない自分に勝ち目があるとは思えないけれども、それがどうした。困難だからこそ、燃えるってもんだろ。

 浮き立つ心のままに拳を振るう実弥の目には、長い髪を揺らして戦う華奢な、けれども勇ましい背中ばかりが焼きついて、ただもうワクワクとしていた。
 常になく浮かれていた。気がゆるんだとは言わない。けれども、すっかり忘れていたのだ。あまりにもうれしすぎて、忘れていた。
 この手の馬鹿は、どうしようもなく、馬鹿極まりないのだということを。