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ワクワクドキドキときどきプンプン 3日目

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 いろいろあったけど、カレー作りの予定に変更はなし。スーパーの入り口で待っていてくれた宇髄のツレだという人――なんとなくネズミっぽい顔した二人組だった――から、炭治郎と禰豆子の竹刀やみんなの花冠もわたしてもらえたし、喉元過ぎればなんとやら。あんな大騒動のあとだけれど、過ぎてしまえば笑って話せる思い出だ。
 鱗滝には車で待っていてもらって、みんなで買い出し。荷物持ちは宇髄と煉獄だ。買い物のお金も二人が泊めてもらったお礼に出すというので、ちょっぴり義勇は不満そうだった。
「義勇にはちゃんと夕飯が食べられるよう体力を回復するっていう、重大な使命があるだろ」
 錆兎に言われ、いかにもしぶしぶそうにうなずいた義勇は、残念だけれど鱗滝と一緒に車でお留守番だ。本音を言えば、炭治郎だって義勇と一緒にお買い物したかったけれど、しかたない。少しでも休んでもらいたいのは、炭治郎も同じなのだ。
「義勇さん、帰ったら一緒に人参の皮むきしてくださいね!」
 おねだりに義勇はちょっとうれしそうにうなずいてくれたから、炭治郎はホッとした。楽しい楽しいゴールデンウィーク。今日はお泊り最後の日だ。義勇だけしょんぼり過ごすなんてとんでもない。
 あんまり待たせないようにと気がはやるのは、炭治郎だけじゃなかったらしい。買い物はサクサク進む。
 乱闘ではあまり役に立てなかったとしょんぼりしていた禰豆子だけれど、スーパーでは大活躍だ。なにしろ禰豆子は、いつもお母さんや炭治郎のお手伝いをしているから、買い物だってちゃんとできる。
「あのね、人参は切った茎のとこが黒っぽくないやつがいいんだよ。玉ねぎは固くて、皮がちゃんと乾いてるやつがおいしいんだって」
「へぇ。禰豆子ちゃんよく知ってるね」
「禰豆子、これはどうだ? 黒ずんでないぞ!」
「んっと……黒くないけど茎が大きいから、違うのがいいよ。細いほうがおいしいんだよって、お母さんが言ってたもん」
「禰豆子すげぇな。派手に買い物上手じゃねぇか」
 真菰や煉獄たちに感心されて、禰豆子は照れくさそうだ。はにかみながらもテキパキと野菜を吟味している。炭治郎だって鼻が高い。だって自慢の妹だもの。
 サラダは疲れ果てている義勇にも食べやすいように、アボカドと半熟卵のサラダ。ソースに使うヨーグルトは、どうしても食が進まなかったときにはこれだけでも食べてもらうと、真菰が厳選しつつ多めにカゴに入れていた。
 今日のカレーは具沢山。疲労回復には豚肉がいいって煉獄のアドバイスを受けて、お肉は豚にした。予算の都合上、豚バラだけれども、そのぶん量はどっさりと。なにしろみんな育ち盛りだ。野菜は人参ジャガイモ玉ねぎといった定番のラインナップにくわえて、ブロッコリーやしめじ、パプリカも入れた豪華版にする。
 一所懸命錆兎と計算したから、お会計も予算内におさまって、イエーイ! とハイタッチ。荷物持ちの二人には先に車に戻ってもらって、夕飯の買い物とはべつに、炭治郎はひとつ買い物をした。錆兎と真菰も、禰豆子もそろって、ひとつずつ。

「お待たせしました! はいっ、義勇さん!」

 差し出したスポーツドリンクを見て、なんで? と言いたげに小首をかしげた義勇に炭治郎は、にっこり笑って言った。
「ずっと抱っこしてくれて、ありがとうございました!」
「……礼はいらない」
 錆兎と禰豆子が宇髄や煉獄にわたしたペットボトルは、お礼の言葉と笑顔で受け取ってもらえたのに。真菰からお迎えありがとうとペットボトルをわたされた鱗滝も、ニコニコと受け取ってくれたのに。炭治郎のペットボトルを、義勇は小さく首を振るばかりで、受け取ってくれなかった。
 しょんぼりと肩を落とした炭治郎の両耳に、錆兎と真菰が顔を寄せてくる。
「炭治郎、さっきの宇髄と同じこと言っとけ。これは俺のエゴですってな」
「心配してる俺のために飲んでくださいって言えば、義勇だって飲んでくれるよ」
 こそこそとした声は、けれども義勇にも聞こえてたんだろう。戸惑う匂いがふわりと鼻をかすめた。
「あの、義勇さん、コレ、お礼だけどそれだけじゃなくって……疲れさせちゃってごめんなさいとか、きっと喉乾いてるだろうから心配だったりとか、えっと、ほかにもいろいろいっぱいあって……だから」
 もじもじと言って、炭治郎はきゅっと唇をかんでうつむいた。
 ずっと抱っこしたまま走ってくれたお礼はもちろんしたい。でも、それだけじゃない。スポーツドリンクを買うとき、炭治郎は義勇の心配もしてたけど、それだけじゃなかった。初めて義勇のためにする買い物にちょっとウキウキとして、義勇さん喜んでくれるかなってドキドキもしてたのだ。
 たぶん錆兎の言ってることは正しいんだろう。エゴっていうのはよくわからないけど、義勇にしてあげたいことは、義勇のためだけじゃなくて、炭治郎がしたいから。
 うん。と、うなずいて、炭治郎は思い切って顔をあげた。
「義勇さんが大好きだから、義勇さんにあげたくて買いました! 飲んでください!」
 グイッと差し出したペットボトルをまじまじと見つめ、そして義勇は、小さく笑った。
「……ありがとう」
「っ、はいっ!!」
 受け取ってもらえたのがうれしくて、みんなも笑ってくれているのがうれしくて。なにより、義勇のやさしい笑顔に、ふわふわと風船みたいに足元が浮いちゃいそうになる。
 ふわふわとしたうれしさは車に乗り込んでもずっとつづいていて、だから炭治郎は気がつかなかった。
 わいわいと騒がしい帰り道、煉獄だけはじっと黙ってなにか考え込んでいたことに。


 道場に通う生徒が大勢いたころに使っていたという、おっきな鍋いっぱいに作ったカレーは、ちょっと水気が多くてシャバシャバしてたけど、とってもおいしかった。炭治郎の家のカレーはいつも甘口だけれど、今日は宇髄たちもいるから、初めて中辛にチャレンジだ。大丈夫かなって心配したけど、禰豆子もちゃんと食べられて一安心。錆兎や真菰も気に入ったみたいで、おかわりしてた。鱗滝もよくできてるって褒めてくれたし、大満足の出来栄えだと思う。
 みんなで手分けして作ったカレーとサラダは、今日も炭治郎は義勇と半分こだ。アーンして食べさせあっていたら、今日もなぜだか錆兎と宇髄がなんとも言えない顔をしていた。
 カレーを作っているあいだに煉獄が湧かしてくれたお風呂に入ったら、今日は早めにおやすみなさい。お風呂の組み合わせは、今夜は煉獄は禰豆子と。宇髄は真菰と。そして、義勇とは、炭治郎と錆兎が一緒に入った。
 昼間の不安が嘘みたいに、賑やかだけれど穏やかな時間が過ぎていく。義勇以外はみんな笑っていた。もちろん義勇だって無表情なだけで、楽しい匂いがほんのりとしていたから、義勇もすっかり煉獄たちのことが好きになったんだろう。不死川からしたのとは違う、大好きな友達から香るのと同じ好きの匂い。だから炭治郎は、とてもうれしくなった。義勇が煉獄や宇髄と仲良くなるのは、不思議とヤキモチが出てこない。ただただよかったなぁ、うれしいなぁと思うばかりだ。

 ちょっと雲行きが怪しくなったのは、さぁ寝ようと道場に敷きつめられた布団に入ろうとしたそのとき。突然、煉獄が義勇の前に進み出た。