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セブンスドラゴン2020 episode GAD2

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『今の最前線ではドラゴンとの戦闘が行われている。自衛隊では勝ち目のない相手よ、いくら援軍を送ったところで死体が増えるだけ。この事はあなた自身がよく分かっているはず』
 リンは、まるで心が読まれている感じがしていた。
 既に死傷者は、今出ている自衛隊の半数以上に迫っている。相手がドラゴンである以上、これ以上隊員を送っても犬死にさせるも同然であった。
『今行くべきなのは十三班、あなたたちでしかドラゴンは倒せない。堂島リン、あなたたち自衛隊には待機を言い渡します』
 ナツメの通信は切られた。
 リンは、悔しさのあまりに震えていた。
「リンさん……」
 シュウは、いたたまれない気持ちになっていた。
「堂島、悔やまれるのは分かるが、ナツメの言う通りだ。仲間の救援には俺たちが行く。ここは生駒と一緒に退路の確保をしていてくれ」
 トウジは言うと、シュウとリアンを連れて先へ進んでいった。
ーー長官、私はどうすれば宜しいのでしょうーー
 悔しさで震えながら、リンは殉職した上官に心の中で訊ねるのだった。
    ※※※
 自衛隊に後方支援を頼み、シュウたちは逆さまの都庁を進んだ。
 救援要請のあった十二階までやってくると、そこは目を覆いたくなる風景が広がっていた。
「くっ、間に合わなかったか……!」
 トウジは歯噛みした。
 トウジらの来た場所は、自衛隊の死体の転がる死屍累々の地獄絵図が広がっていた。
 ドラゴンに食われたか、自衛隊の死体の山は欠損しているものがほとんどで、内臓が露出しているものもあった。
「ひい!」
 あまりの惨状に、思わず頭を抱えてしまうシュウ。
『……ガレ……!』
 頭を抱えた為、籠手が耳元に近づき通信らしきものが聞き取れた。
「待って、何か聞こえる……」
 シュウは、籠手が偶然に傍受した通信に耳を向けた。
『が、ガトウさん。オレは、もう、無理で……す』
『ナガレ! 諦めンじゃねェ! 気を確かに持て!』
 この先の屋上にて、帝竜と戦うガトウ隊の言葉だった。戦況は芳しくないのが明らかだった。
「これは、ガトウの声か?」
 トウジの籠手もガトウの通信を傍受し、ノイズまみれのガトウの声がかろうじて聞き取れた。
「早くいかなきゃ、ガトウさんまずいんじゃない!?」
 リアンも通信を傍受した。
『こ、の、ド……ゴ、野、郎! ナ……レの仇は……!』
 通信は途絶え始めた。ガトウの言葉も途切れてきたが、状況がどのようになっているか、三人は分かった。
「作戦変更、ガトウ隊への救援に向かう!」
 トウジは言った。シュウとリアンの二人も異議なく頷いた。
「そうと決まったら急ぎましょう。ガトウさんを助けなきゃ!」
 シュウは、先陣を切って駆け出した。
ーー戦いの時は来た……ーー
 不意に、シュウの脳裏にどこからともなく声がした。
「なに……?」
 先陣を切って走り出したというのに、シュウは急に足を止めたため、二人も止まってしまった。
「どうした四季?」
「なんか声がしたような気がするんだけど……」
「俺は何も言ってないぞ」
「わたしも言ってないよ」
 空耳か幻聴か、どちらかは分かりかねるが、シュウには確かに聞こえた。
ーー迷ってる場合じゃないわね。ガトウさんたちを助けなきゃーー
「ごめんね、二人とも、変なこと言っちゃって。急ぎましょう!」
 三人は再び駆け出すのだった。
    ※※※
 シュウたちが駆けつけた場所は屋上であった。
 逆さまの空には日蝕が煌々と照っていた。
 フロワロが咲き乱れ、その中心に片腕を失い更に体中が傷だらけの帝竜がいた。
「ガトウさん!」
「なっ!? おめェらどうして来た!?」
 ガトウもすっかり傷だらけとなり、これ以上の戦いは不可能だと思われた。
 ガトウの傍らに、口から血を出した状態のナガレが倒れていた。
「流! 流ー!」
 トウジが呼びかけるものの、ナガレは既に息絶えていた。
「よくも流を、絶対に許さんぞウォークライ!」
 トウジは怒りに燃えた。
 帝竜ウォークライは、ガトウとナガレ、自衛隊の攻撃によって傷だらけであり、後ひと押しというところまで弱っていた。
「チャンスだよ。ここまで弱った状態なら、わたしたちの力でも倒せるよ!」
 リアンはナイフを抜いた。
「ガトウさん、後は私たちが戦います。ガトウさんはナガレさんの遺体を守っていてください!」
 シュウもガトウの前に立ち、刀を抜いた。
「止せ、シュウ! ナガレの仇はオレが取る!」
「そんな体じゃもう戦えませんよ。もう誰も死なせない。信じてください、私たちの力を!」
 行くよ、っとシュウが告げると、トウジとリアンはシュウに続いた。
 シュウらと帝竜ウォークライの激戦の火蓋が、切って落とされんとしていた。
 真っ先に仕掛けたのはスピードのあるリアンであった。
「そこっ!」
 リアンはナイフを振るった。急所を狙った一撃は、例え相手がドラゴンであっても有効打であった。
「マナパワーを弾丸に変換、くらえマナバレット!」
 次に仕掛けたのはトウジである。
 帝竜ウォークライは、炎に抵抗力を持っている事を知っていたトウジは、純粋な魔力を弾丸に変えて撃ち出した。
 魔力の弾丸はウォークライをふらつかせた。
「はああああ!」
 気合いを込めて、シュウが三手目を仕掛ける。
「ぶった斬ったる!」
 シュウがやったのは、ジャンプからの袈裟斬りである。
 一月前に戦った時には装甲が固かったウォークライであるが、ガトウらとの戦いですっかりぼろぼろになっており、シュウの一撃は大打撃を与えるものになっていた。
 いける。三人はそう思った。このまま押せば確実に倒せると実感していた。しかし、実際はそう簡単ではなかった。
 ウォークライはやられるばかりではなく、反撃に転じる。
 ウォークライは逆さまの空を仰ぎ、咆哮を上げた。
 それはただの咆哮ではなかった。
「ぐっ、なんだ、これは……!?」
「体が、痺れて……!」
 ウォークライの咆哮は、電流を放つ効果があり、まともに聞くと麻痺する効力があった。
「リアン、トウジ君、大丈夫!?」
 シュウだけは麻痺を逃れていた。
「四季は無事、か。よかった、俺の、ホルスターに、パラエルが入って、いる。取り、出して打ってくれ……!」
 シュウは、言われるままに、トウジの制服のホルスターから注射器を取り出した。
「これって注射器じゃない。こんなの使えないわ」
 医者でも看護師でもないシュウは、彼らのように確実に注射を打つことなどできるはずがないと思った。
「どこでも、構わない、打ってくれ」
 シュウは、まだ躊躇っていた。しかし、ウォークライがまだ生きてる以上、迷ってる場合ではなかった。
「……分かったわ、注射を打つわ。痛かったらごめんね!」
 シュウは、トウジの腕を取り、袖を捲って肘の関節に注射を打った。
「うう……!」
 トウジから小さな呻き声がした。
「ご、ごめんね! 痛かったよね!?」
「……構わん、体中が痺れていたからな。多少の痛みなどどうと言う事はない」
 トウジは、すんなりと体を起こした。
「本宮にも打ってやらんとな」
 トウジは、パラエルの入った注射器をリアンの腕に打った。
「いた……くない……?」