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天藍ノ都  ───天藍ノ金陵───

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 あの時は、馬車の中から見ただけで、、、。
 馬上からの眺めは、一際ですね。」

 靖王が馬を降り、長蘇も降ろしてもらった。

 見回せば、長蘇には懐かしき景色が。

──良く景琰とは、ここに来た。
 そして、私達は、あの岩に登って、、、、。──

 岩を見上げた長蘇に、靖王が話しかけた。
「蘇先生、もっと良い場所がある。」
「もっと良い場所ですか?。」
 靖王の誘いに、微笑んで答える長蘇。

「手を。」
 靖王の求めに応じて、長蘇は手を差し出した。
「ぁぁッ、、。」
 靖王は、差し出した手を、無言で握ると同時に、長蘇の体も支え、軽功を使って、飛んだ。

 靖王は、長蘇が見上げていた岩に向かって、飛んだのだ。
 忽ち、岩壁に張り出した部分に降りた。


「おお!、何と!、金陵が一望に!!。」
 長蘇が嬉しそうに声を上げた。
 靖王には、その長蘇の声が、何となく、わざとらしいというか、胡散臭く思えた。

 馬の乗り方もさることながら、馬車の中から、長蘇を引き上げた時の、身の軽さ。
 そして、靖王の軽功の動きに、長蘇は戸惑う事無く、身を任せた。

━━武功の無い者が、いきなり軽功を持つ者と、一緒に飛べるだろうか。
 梅長蘇は、私に身を委ねたのだ。
 と言うよりも、自ら協力して、私が楽に軽功を使えるようにしていたような、、、。
 お陰で、私には大した負担もなく、飛んで逃げられた。
 病弱な書生が出来る事では無い。━━

 靖王は、そんな事を馬に乗りながら考えていたので、岩まで飛んで、驚く長蘇の様は、わざとらしいというか、白々しく思えたのだ。

━━梅長蘇は只者では無い、、。
 、、、気を引き締めねば。━━
 靖王の警戒心が強まった。


 長蘇自身、極力、 わざとらしくならぬ様に、色々考えての行動だったが。
──少し、大袈裟だったか。
 景琰が警戒している。
 元々、梅長蘇は、武功など無いのだ。
 どう言えば、景琰は納得するものか。
『梅長蘇は武功が無い』
『梅長蘇は虚弱体質』
『梅長蘇は、、、』

   、、、、何か言わないと、、。──

「ここは、靖王殿下の秘密の場所ですか?。」
「まぁ、、そんな所だ。」
「これ程、見晴らしが良いとは。」
「子供の頃、友とここに来て、金陵を眺めては、防衛と攻撃に別れて、想像しながら金陵戦をしていたのだ。
 碁を打つのとはまた違うが、金陵を一望に眺めながらの盤上の攻防だ。」
「面白そうですね。殿下のご友人ですか。」
 勿論長蘇は、友人が誰の事かはよく分かっている。
「あぁ、中々、良い作戦を立てる者だった。
 機知に富み、思いもかけぬ作戦を立てた。」
「なんと、そんな人物が殿下の側に。
 ですが、殿下の采配には及びますまい。」
「あははは、、まぁ、、どうだろうか。
 友は苦しくなると、許嫁の雲南王府の霓凰を引っ張り出した。不利な状況から、無理やり勝った事もあったな。ふふふ、、。
 友ばかりが一人勝ちして、あんまりだから、そういえば、『霓凰禁止』にした事もあった。
 あははは、、、。」

──うっ、、。
 景琰め、そんな事、よく覚えてるな。──

「まぁ、勝ちは勝ちでしょう。
 戦とは、そもそもそんなものですし。
 靖王殿下は、そんな手は使わなかったので?。」

「うむ、、、そう言えば。
 初めてこんな遊びを思いついた時、私は、作戦の中で、景禹兄上を引っ張り出そうとしたのだが。」

「祁王殿下ですか。」
──そうだそうだ、景琰だって、援軍を使った時が何度もあったぞ。
 、、、、まぁ、私よりは遥かに少なかったが。──

「友とは、色んな事態を想定して、互いに作戦を立てていたのだ。
 確か、あの時は、私が梁の軍で、友が反乱軍。
 城内は反乱軍が既に掌握していて、皇族はそれぞれの屋敷で拘束されていた。」

「なんと、、靖王殿下、相当に分が悪いではないですか。
 皇族を人質にされては、手が出せません。」
「だろう?。蘇先生もそう思うだろう?。
 友は酷い設定ばかり、私に押し付けるのだ。
 あの時は、景禹兄上と連絡を取り、城内と城外から反乱軍を押さえ込み、沈静化させるつもりだった。」
「『つもりだった』?、とは、上手くいかなかったのですね。」
「そうだ。私の動きを見通していたかの様に、真っ先に景禹兄上と禁軍の将は、地下の牢に監禁されて、私との連絡を絶たれた。
 そればかりか、友は、囚われた景禹兄上を陛下との交渉の仲介人にしてしまって、まんまと成功させたのだ。
 時系列を作って、互いに紙に書出し、見せ合って勝負をしたのだが、わずかに一日半程の時系列で決まった。
 、、、、動きが早すぎる、、。
 、、当然、私の負けだった。」
「なんと、、驚きです、、、。
 靖王殿下は、一方的に負かせた友を、恨んでおいでで?。」
「いや、ただ呆気にとられた。
 少し卑怯なんじゃないかと、段々と思えてきて、、、あの時は、面白くは無かったが。
 、、、だがやはり、、、反乱軍といえど、成功させる為には、緻密に計画を練る訳で。
 行き当たりばったりの反乱なぞ、鎮圧出来て当たり前。実際は、こういう事変が、起きぬのが第一だが。遊びとなると、まるで面白みが無いのだ。
 極限の中で、どれだけ見極めて動けるかで、結果が決まると。
 彼は幼い頃から、軍営に出入りし、地方のそういった事案も聞き知っていた。
 戦に出たことが無くとも、対処の方法も、想定外の事柄も、熟知していたのだ。
 彼が特殊で、私の様に知らぬ方が普通だろう。」

「そうでしたか。
 逆の立場ならば、ご友人はどうされたと?。」
「うむ、それも聞いた。
 あいつときたら、囚われた陛下と男子の皇族に毒を飲ませて殺すと、、。死んでしまえば人質としては役に立たなくなる。
 まぁ、毒といっても、仮死状態にする薬だが。
 途方もない事を言ってのけた。」

「そんな奇抜な事をするご友人ならば、靖王殿下は、ご友人には、中々勝てなかったのでは。」
「まぁ、、そうだな。
 勝てなかった。
 友は物事の根本を、よく知っていたのだ。
 だが、私は友から学んだのだ。

 友は囲碁は得意では無く、私の方が強かった。
 この遊びは、碁盤での勝負と似ているが、まるで違う。
 民衆の暮らしや、物事の考え方は、都の王族や貴族とはまるで違うと、彼に教えられた。
 それが後々、私の辺境での任務に、相当役立った。
 幾度もこの光景を見て、仮想敵を相手に戦い、殆ど、私の負けだったが、それ以上に得るものが多く、時折の卑怯な手段も、悔しいとは思わなかった。
 友は、好敵手であり、私の師でもあった。
 、、、年は二つ、下だった。生意気で、自分が認めた人物でなければ、目上を目上とも思わず、立てようともしない。
 友は、大人に苦言も呈され、叱られもし、罰も受けた。、、、酷い目にも遭ったが、そこは曲げなかったな。ふふふ。」
 くすりと笑う靖王に、長蘇は一言、聞いてみたくなる。
「靖王殿下は、ご友人の事が、お好きだったのですね。」

「、、、。」
 きょとんと、長蘇を見る靖王。

──ぇ?、、、
 お前、そこは考えないで即答してくれないと。──

「、、、好き、だと?。」