二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

天藍ノ都  ───天藍ノ金陵───

INDEX|7ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 

 更に靖王の表情が、険しくなる。

──オイッッッ !!!。──

「、、、好き、、ではなく、、。」

──、、景琰、、嘘、、、だろ、、
、、、私が、嫌いだったと、、?。
 、、、まぁ、、景琰に嫌な事も散々したが、、。
 それは景琰だからであって、、、。──

 考え込む靖王。
 心中、穏やかでは無い長蘇。

──、、、景琰、、そんなに考え込まれると、、
、、、、正直、落ち込むんだが、、。
 揺るぎない友情だと思っていたのに、、私の独り善がりだったのか。──
 

「、、、、好きとか、そういうのではなく、、。
 友は、好敵手でであり、師だとは言ったが、、。
 改めて好きかと言われると、、、。」

──、、、も、、もういいから、、景琰。
 、、、もう言わないで、、。──




「、、何だろう、、非常に大切な存在で、、側にいるだけで、力が湧くというか、、。
 友、と言いつつ、そんな言葉を超えている存在だった。

 、、、私の、背中を預けられる存在、、、、と、言うのが正しい、、かな、。」

──、、、、え?。──
 武人が、『戦場で背中を預ける』という意味は、信頼以上の情を指す。
 身も心も、全てをその者に委ねる、何があろうと信じ切る、そういった意味を持つ。


「、、ぁ、、、蘇先生は、、書生だったな、、。
 その、、、武人のそういう感じを、分かってもらえるだろうか、、。
 、、ぁぁ、、だが、、、、分かりにくいだろうか、、ワカリニクイヨナ。」

──景琰、、。
 お前、、離れてる間に、少し卑怯になったな。

 ここでそれを言われたら、、。──

 じわりと長蘇の胸が熱くなる。
 うっかり、涙腺が緩む。

「ぁ?、、、蘇先生?、、どうかしましたか?。
 変な話で、呆れましたか?、、、ハハ。
 、、、、、ぇッ。」
 靖王は、長蘇の眼が潤んでいるのを、見逃さなかった。

──不覚だ。景琰の話に泣くなんて、、。──
「、、、、失礼を、、その、、靖王殿下のお話に、感動してしまいまして、、、。
 私は武人ではないですが、、その、、、、ぁッ。」
 震える声を、平常に保とうとしたが、長蘇の瞳から、大粒の雫が零れた。
 長蘇は大急ぎで、袖で拭ったが、もう靖王には隠せない。

「、、。」
 長蘇はそれ以上、言葉が継げなかった。

 靖王は長蘇に分かってもらえたと、珍しく嬉しそうな表情になる。
「蘇先生に分かってもらえて嬉しい。」
 そう言った靖王の表情は、優しさに満ちている。靖王の深き傷が、束の間、痛みを忘れた。

「いつの日か、蘇先生に友を会わせたい。
 フフフ、、。」
「はい、靖王殿下のご友人に、お会いしたいです。」
「三人で、酒を酌み交わしながら、語り合いたいものだ。
 蘇先生に劣らず、友も博識だ。二人が、どのような論説をするのか、楽しみだ。」

 ふと、靖王が北の方角を仰ぎ、言った。
 目を細め、北に流れる、鳳凰の尾羽の様な白雲を見る。

 どこか懐かしむ様な、切なげな表情をする。
「、、、友は、今は私の知らぬ所に、、、。
 だが、必ず私の元へ、この金陵に戻るだろう。
 一番に私の元へ来る筈だ。
 そうしたら、蘇先生を呼ぶゆえ、三人で飲もう。」
 友への懐情は、やがて『必ず会う』という決意に変わり、靖王の言葉を力強くした。

「はい、是非に。」
 靖王のその気持ちを推し包む様に、長蘇もまた、柔らかに微笑んだ。

 靖王の眼は疑いもなく、林殊の無事を信じている。
 それが靖王の一番の切望なのだと、長蘇には痛い位に分かるのだ。
 長蘇にはそれが、何よりも嬉しい。
 嬉しい一方、林殊を待っている靖王に、自分の正体を明せぬ事を、心苦しく思った。

──景琰、、許せ、、。
 梁の衆民の為だ。
 何よりも、天下の太平の為。
 亡き祁王の為、赤焔軍の為。

 正体は明せぬが、私と共に戦う事は、きっと林殊との思い出にも負けぬ筈。

 共に戦おう、景琰。──

 靖王は、岩壁の先を、指差して言った。
「その岩の高い所に、勝者が立っていい事になっていた。
 そこからの眺めはまた別格だ。
 友は得意げにそこに立ち、都を眺めた。」

「はい?、あそこにですか?。
 何と、足場は何処に??。

 、、、ぁぁ、、失言を、、。
 靖王殿下もご友人も、お二人共に武人でしたね。
 武功をお待ちならば、そんな心配はありませんね。」


「そこに立ってみぬか?。」
 靖王はそう言って、悪戯っぽく笑ってみせた。
「ぇ?、、いやいやいや、、私にはとてもとても、、。
 そこに行き着く事も、出来ぬでしょう。」

 じっと長蘇を見つめ、目を離さない靖王。
「私が助けてやろう。
 腕に掴まれ、私が立たせてやる。」

「ぇ、、、殿下、、そのような、、恐れ多い。」

 靖王には、少し目論見がある様に見えたが、ここは聞くしかないと、長蘇は覚悟を決める。

──景琰は、私の何かを確かめたいのだ。──

 長蘇はおずおずと手を差し出し、靖王はその手を掴み、長蘇の体を支えて、岩の上へと移った。
 ほんの一人立てるほどの足場に長蘇を置き、靖王はゆっくりと離れていく。
「、、靖王殿下、、、この小さな足場に、今、私は一人で立っているのですか?。」
「そのままそのまま、、、何かあれば、ちゃんと助ける。
 それよりも蘇先生、金陵の方を見てみよ。」

「、、、、はい?。

 、、、、、、、ぁッ、、、、。」

 長蘇は、ここからの光景を、初めて見たもののように、するつもりだった。

 だが、目の前に広がるのは、少年の折、嘗て見た金陵がそのままに。



────────────

『あははは、、、。景琰、ここに登るのは、勝った方だけだからな!。』

『分かってるよ!!、小殊は強いよ!。
 私だって次はそこに立つ。見てろ、小殊も驚く作戦を立てて勝つからな。』

『あははは。』

────────────



 眩しく笑う少年林殊と、悔しがりながらも、やがて包むよう微笑みに変わる若き靖王。




──悔しがる景琰を尻目に、私はここに、、。──
 光景を見た途端に、長蘇は少年の日を思い出した。


「また違った眺めだろう?。」
 靖王が長蘇に話しかける。

 山の木々に邪魔をされずに、金陵の全貌が見える。
──そうだ、まるで鳥になった気分だったのだ。
 自由に金陵の空を翔ける、鷲のように、、、。──


 靖王への返答は無く、ただ金陵を見る長蘇。

 長蘇の横顔は、僅かに頬が見えるばかりで、どんな顔をしているのかは、靖王には分からなかった。



 靖王は何故か、長蘇と居ると、林殊を思い出してしまう。
 今、靖王の眼には、ここから金陵を得意げに眺める林殊が、鮮やかに蘇っていた。



 書生の長蘇なら、こんな景色は見たことがあるまいと思って、ここに立たせてみたのだが。
 暫し無言の長蘇の様子が、気にかかる。
━━言葉も出ぬほど、感動しているのか、それとも、怖がっているのか。━━

 その時、ふわりと優しい風が吹き、長蘇の衣に触れて、衣は風を孕ませて嫋(たお)やかに舞っている。長蘇の黒髪も、風と共に流れ。

━━本当に、優美な天仙が舞い降りた様な。━━