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願うことはひとつ

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たまたま助ける形になっただけなのに、ふやけた笑顔でそう言って。いつまでも変わらず自分を慕うツナに、雲雀の方が根負けすることになって今に至っていた。
慕われるのは、悪い心地はしなかった。
「ヒバリさんヒバリさん、これどうですか?こういう服好きですか?」
自分の好きなものを、と言ったのに、ツナはしきりに自分の好みを聞いてくる。
似合うよと言えばツナはうれしそうに笑った。
その笑顔も、好奇心いっぱいに店内を見回るその姿も、なんら人間と変わるところはなかった。


「ありがとうございますヒバリさん」
選ぶのにはだいぶ時間がかかってしまった。
買ってもらった服を大事そうにツナは抱え、雲雀にぺこりと頭を下げる。
「うん。用事も済んだし、帰ろうか」
「はーい」
(ヒバリさんに買ってもらっちゃった)
歩きながら、なんだかうれしくなって、服の入った袋を両手で持って翳した。日の光を受けてそれはよりいっそう高価なものに見える。
そんなことをしていたから、ツナは前から来る人に全く注意を払えないでいた。
「わっ」
ぶつかって、よろめくだけですみそうになかったのは、きっと相手の体格がツナと比べ物にならないくらい良いものだったから。その上柄の悪そうな男は、ツナに注意を払う様子もなく、これみよがしに肩をぶつけ、そのまま過ぎ去っていった。
「……っ」
平衡感覚を失って視界が一転しそうになる。それにも関わらずツナは受身をとることを忘れた。服だけは落とすまいと反射的に両腕で抱え、そちらにばかり意識をやってしまった。ひやり、と背中に寒いものが走る。
(転ぶっ……)
「大丈夫?」
予期していた衝撃はこなかった。とすっと雲雀の腕に柔らかく支えられて、ツナはぱちぱちと瞬く。
「あ、大丈夫です。ごめんなさい。ありがとうございます」
「ちゃんと前見て歩けって、いつも言ってるよね」
「ごめんなさい……」
前を見ないでふらふらして、転ぶのは日常茶飯事。
雲雀に言い返す余地もなく、ツナはしゅんとして謝った。
雲雀はふぅとため息をつく。全くしょうがない子だね、と呆れたように言って、ツナの手をとった。
きゅ、と繋いで、「行こう」、そう言って足を進める雲雀に引っ張られる。
「ヒバリさんヒバリさん。手、繋いでもいいんですか?」
先ほどあっさりと拒否されたのを思い出して、ツナは問い返した。
「……別に良いよ。繋いでいないと君、転ぶし」
ツナはしっかり繋がれた互いの手を見る。
それから周囲に目を移した。なるほど確かに、自分たちが手を繋ぐのは、世間一般と違うのだろう。周りからは奇異の目で見られている。
「ありがとうございます」
なんだかうれしくなって、ツナはきゅっと強く握り返した。

母親の時とは、違う心地だった。

作品名:願うことはひとつ 作家名:七瀬ひな