願うことはひとつ
できるだけ長い時間そばにいたくて、縋るように問いかける。
「しないよ。もう寝る」
そうですか、とツナは俯いた。するとぽんぽん、と今度は頭を撫でられる。
「一緒に寝る?」
「いいんですか…?」
「いいよ。もちろん、寝るだけだけどね」
もともと居候を始めたばかりの頃ツナは、雲雀のダブルベッドの三分の一を貸してもらっていた。けれども毎夜、下手な誘惑ばかりしていたら、寝室を別にされてしまって。
久しぶりに雲雀と一緒に寝られることが思った以上にうれしかった。また追い出されないようにするため、ツナは雲雀から距離をとってベッドに潜り込んだ。
「もう少しこっちに来れば?」
「え、や、でも……」
「一人で寝るの怖いんだろ?雷」
引き寄せられる。おそるおそる雲雀に体を寄せても、気分を損ねる気配はなかった。それだけでなく、まるで抱き枕のように抱き込まれる。
うれしい。胸が高鳴った。
「ねぇ、君はどうして僕を選んだの?」
しばらくの沈黙の後、髪を優しく梳きながら、雲雀はツナに問いかけた。
前にも聞かれたことだったから、ツナは同じように返した。
「ヒバリさんが助けてくれたからです」
一人で路頭に迷っていたとき、不良に絡まれたところを助けてくれたのは雲雀だった。雲雀にとってツナを助ける気は毛頭なかったらしいが、それでもツナにとってはうれしかった。この人なら、自分を受け入れてくれるかもしれない。そう思ったのが最初。
一緒に暮らして、雲雀の優しさに触れて、どんどん、惹かれた。
今となってはもう、雲雀以外の人のことなど考えられない。
「……あの時君を助けたのが、僕じゃなかったら?」
切なげな声はツナには届かなかった。
まどろむ意識の中。雲雀のぬくもりだけが確かに感じられる。
今までで一番あたたかい眠りだった。