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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.III.R.E

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「そう言うことです。それでユーリさんは何故?」
「卒論のテーマに迷っている。図書館島に来れば、何か思い付くかと思ってな」
「……ここにある魔書をテーマにしてはいけませんよ?」
「まさか。そんなつもりはない。ただインスピレーションが欲しくてな」
「論文を書くのにインスピレーションが欲しいとは」
 エリーが困った笑顔を浮かべる。内心は苦心してるかもしれんが。
「貴方の書くものならと、私は心配していなかったのですが」
「仮にもカテゴリー5の魔法使いだぞ。こう言うものでもおざなりには出来んよ」
「その意識はあったのですね」
「意外か?」
「安心したのですよ。ユーリさん、何かとご自身の事はおざなりにしがちじゃないですか」
「そのツケが回ってきたとも言う」
 俺がそう言った瞬間、エリーが吹き出した。
「おい、笑うな」
「ごめんなさい、ユーリさんがそんなことを言うのも意外だったもので」
 ……そんなに意外かね?
「変わったのですね、ユーリさん。これもカレンさんの影響かしら?」
「……どうだろうな」
「少なくとも、風見鶏に来られる前の貴方なら、こんなに悩んでいなかったと思います」
「と言うと?」
 俺が問いかけると、エリーは遠い目をした。
 話が長くなるかもしれない。
 そう思った俺は、エリーの対面にある備え付けの椅子に腰かけた。



     ●     ●     ●



 まだ定住せずに世界の色々な場所を放浪していた頃。
 俺は当てもなく様々な場所を彷徨っていた。
 元居た従兄弟の家はとうの昔に離れており、音信不通になっている。
 そんな俺は、その日暮らしに近い生活を送っていた。
 何故なら自分の力に絶望したから。
 数十年前に極東の国のカイの魔法使いの元を訪れ、境界を超える魔法について教わった。それを基に自分で魔術理論を組み立て、何度も何度も境界を越えようとしたが扉を開くことが出来ず、それを諦めてしまったのだった。
 幸い、呪いに侵された体の不死の性質の副産物で、飲まず食わずでも死ぬことはなかった。ただ、三大欲求までは満たすことが出来ず、そういう意味では苦しい思いをしていたが。
 だから適当に日銭を稼いで、最小限の食べ物と寝床を確保する程度の生活をしていた。
 そんな頃だった。
「貴方には、生きる目的はありますか?」
 不意に話し掛けられた。
 俯いていた俺は、声のする方へ顔を上げた。
 そこに立っていたのは金髪の女性だった。
 周りを見ても他に人はいない。多分俺に話し掛けたのだろう。
「……どういう意味だ」
「貴方程の人が、このような生き方をしてるのが疑問になっただけです」
「俺の何を知っている」
「さあ、貴方の素性までは分かりません。ですが、大きな力をその身に宿しているのは分かります」
「あんたは魔法使いか?」
「ええ、そうです。貴方は違うのですか?」
「生憎と魔法は使えなくてね」
 嘘だ。
 大昔に魔術の理論を確立していて、魔法程の柔軟性はなくとも、それに近しいことは出来るようになっていた。
「魔力持ち、と言うことでしょうか」
「そうなのかもな」
「魔法使いとして正当な教育を受けようと思ったことは?」
「とうの昔に諦めたよ」
「あら、魔術師さんは諦めが悪いと聞いていましたが」
 今、なんて?
「……あら、勘違いでしたか?このロンドンには、禁忌を犯した魔法使いがいると聞いています。それも不死の呪いに掛かった者が。貴方の持つその力、それは禁忌によって齎されたものだと思ったのですが、違いましたか」
 これまで俺が自分から禁呪の事を話したことは一度もなかった。
 どうしてこの女性はそれを知っている?
「不思議そうな顔をしていますね。大方、『何故それを知っている?』と言いたげなご様子です」
 そう言った瞬間、女性は不敵に笑んだ。
「それを知りたいのなら、もう少し生活を改めてみては?」
 それだけ言い残し、女性は去っていった。
 ――知りたい。どうして彼女は俺の事を知っているのか。他に何を知っているのか。
 俺はそれを糧に立ち上がった。




 数年後。
 俺はロンドンのとある魔法使いの権力者の家に住み込みで、その家の跡取りに魔法を教える仕事をしていた。
 そんな折に王宮に呼び出しを食らった。
 大昔から何度か、当代のクイーンに会うために王宮に向かうことはあっても、こうして呼び出されることはなかったと思う。
 王宮に着くと、既に話が通っているのか、直ぐにクイーンに会わされた。
 そこは様々なマジックアイテムが並ぶ、不思議な空間だった。
「貴方がユーリ・スタヴフィードさんですか」
 まだ若いクイーンは俺の存在を認めると、笑顔で声を掛けてきた。
「貴女が今のクイーンですか」
「ええ、そうです。お久し振りですね」
「……会ったこと、ありましたか?」
「成る程、お忘れのようですね」
 クイーンは俺の傍まで来ると、俺の顔を覗き込むように、顔を寄せてきた。
 ……思い出した。
「あの時の、魔法使い……?」
「思い出していただけて何よりです」
「流石にあれがクイーンだなんて微塵も思いませんでしたよ」
 しかし、そうか。
 ちょっと分かった気がする。
「あんたがクイーンだから、俺の事を知ってたわけだ」
 クイーンは俺から離れ、クスリと笑った
「そういうわけでもありませんよ。あの時、貴方の事を知ったのは、私の思う人を探していたからに過ぎません」
「どういう意味だ?」
「元々魔法使いとしての大きな素質があり、加えて膨大な力と底知れぬ知識を持っている。これ程までに有用な人材はありません。しかもその力と知識は、禁呪を行使したことに由来している。そして魔法を使えなくなった今も、知識と経験から魔術を編み出し、体に秘めたる魔力を行使している」
 力は禁呪そのものによって齎され、知識は不死の呪いに侵された体を使って、膨大な時間を掛けて手に入れたものだ。
 彼女はどこまで知っていると言うのだ。
「クイーンはそんなことまで知っているのですね」
「クイーンだから知っているのではありません。必要だから調べ、探したのです」
 ……どうやって調べたのかは、聞かないことにしておこう。凄く嫌な予感がする。
「それで、そんなことまで調べた上で、俺に何の用ですか」
「そうでした、随分と本題からずれてしまいましたね」
 クイーンは一度咳払いをすると、俺に向き直り、用件を告げた。
「この魔法使いの社会を、裏から支える人材を探しています」
「魔法使いの存在そのものが裏のものだと言うのに、そのまた裏とはよく言う」
「確かに力を持たざる人々にとって魔法とは得体の知れないものかもしれません。それを忌み嫌うのも当然。ですがそれが理由で魔法使いが虐げられるのはあってはなりません」
「ごもっともで」
「だからこそ我々は立ち上がらねばなりません。その為の人材を集めた組織が必要だと考えたのです」
「その組織とやらを作る為に俺を呼び出したと言うのですか?」
「ええ。貴方はそれだけの人材ですから」
「お言葉ですが陛下、最初に会った時に仰った言葉を覚えていますか?」
「どの話のことですか?」
作品名:D.C.III.R.E 作家名:無未河 大智/TTjr