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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.III.R.E

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「さて、今度は清隆の番だ」
「はい」
 ユーリさんが俺に問う。
「俺は幾つに見える?」
 聞いてきたのは、リッカさんと同じようなことだった。
 ……というか、こんなこと聞く時点で確定だ。
「ユーリさんもリッカさんと同じように長く生きてるとして……」
 ダメだ、推定できそうな情報が少ない。
「……あっ」
 あるじゃないか、推定できそうな情報が。
「ユーリさんも同じように学園長と対等に話されていますね。それにウィザリカの一件の時、杉並と葵ちゃんを、女王権限と言って呼び出していました」
「よく聞いていたな」
「たまたま聞こえただけです。と言うことは、それだけ要人に近い存在と言えます。それにリッカさんと対等に話してることもあって、それなりのお歳だと思います」
「で、答えは?」
 悩ましいところだ。けど。
「多分、200歳くらい。これはユーリさんが魔術の理論をお一人で完成させてる事も含めた考えです」
「お前も惜しいところを行くな。正解にはあと30年ほど追加しておいてくれ」
 てことは、230年は生きてると言うことか。
 リッカさんもそうだけど、かなりの年数を生きてることになる。
「さて、改めて聞いておこうかしら。貴方達の恋人は、それぞれ途方もない時間を生きている」
「そうだな。理由は違えど、俺達は人からは逸脱した時間の中を生きてきている。それに対して思うところはあるか?」
「私は気にしませんよ。それこそ、ユーリさんはパパ達ともそれなりの関係と聞いてますけど、そんなのどうでもいいことです。大事なのは、今ここにいるユーリさんですから」
「俺も同じです。今ここにいるリッカさんに惚れてるんですから、関係ないです」
 俺達2人揃って即答していた。
「どうやら俺は二人を見くびっていたらしい」
「あら、私はそうでもないわよ。清隆はこう言ってくれると思ってたわ」
「俺が臆病なだけか」
「そうだよ。そんなの当たり前じゃん」
「ありがとうな、カレン」
 ユーリさんは咳払いをして、面持ちを正した。
「さて、俺とリッカの関係だが、ざっと100年程前まで遡ることになる」
「それを話すためには、カレンにはもう一人話さないと行けない人がいるわね」
「はい?」
 ああ、そうか。
 確か初めてユーリさんに会った日も、そんな話をしてた気がする。
 やっぱりユーリさんも知っているのか。
「私には幼馴染みがいたの。名前はジル。ジル・ハサウェイと言ったわ」
 少し前に俺も聞いたばかりの名前。
「居た、と言うことは今は?」
「ええ。もう故人よ」
 リッカさんが少し震えている。やっぱりまだ辛いのか。
 いや、そう簡単に割り切れないか。
 これはこの体勢で良かったかもしれない。
 俺はそっとリッカさんを抱く力を強めた。
「昔、まだ私が見た目と同じくらいの歳だった頃、私とジルは旅をしていた。そんな頃にユーリと会ったのよ」
「あれはまだ、俺がこの国の片田舎に住んでた頃だったな」
「ええ。私達は突然の大雨に降られて、ユーリの住んでいた家に駆け込んだの」



     ●     ●     ●



「……どうしようか、リッカ」
「雨、止むまで時間掛かりそうね」
 旅の途中。
 私とジルは通りすがりの場所にあった民家の近くで雨宿りをしていた。
 何しろ突然の雨で、服はびしょ濡れ。季節は秋手前頃で、まだ寒くはないけど、身動きは取れそうになかった。
「こんなところで何をしている」
 そんな時に声をかけてきたのがユーリだった。
「見ての通りです。雨宿りをしてます」
「ちょっとジル!」
「そいつは災難だったな。俺の家で良ければ、休んでいくといい」
「……貴方を信じろと?」
「同じ魔法使いとして、放って置けないだけだ。嫌なら構わん」
 魔法使い。
 その言葉が私の興味を引いた。
「リッカ、どうする」
「雨宿りさせてくれるって言うなら、させてもらいましょ」
 私達はその男の誘いに乗った。
「それじゃ、どうぞ」
 男は私達が雨宿りしていた、すぐ近くの民家の扉を開けて誘った。
「ここだったんですね」
「そうじゃなかったら声を掛けない」
「ごもっともで」
 私達はその扉を潜って中に入った。
「リビングは突き当たりだ。少し待っていろ」
 待っていると、男はタオルと紅茶を持って来た。
「ほら、これ使え」
「ありがとう」
 私達はそのタオルで体を拭いた。
 幸い少し濡れた程度で済んでいた。
「これもどうぞ。冷えた体には丁度良かろう」
 体を拭き終わり、彼から紅茶を受け取った。ダージリンらしい香りがした。
「ダージリン、お好きなんですか?」
「よく分かるな。ま、昔からな」
「へぇ」
 なんとなく外を見る。まだ雨は続いている。
「そういえば名乗ってなかったな。ユーリ・スタヴフィードだ。よろしく」
「ジル・ハサウェイです」
「リッカ・グリーンウッドです」
「ジルちゃんにリッカちゃんね」
 さも当たり前なように馴れ馴れしく呼ぶユーリは、同じく紅茶を飲んでいる。
「で、どうしてこんな辺境の田舎まで来た?」
「私達は旅をしているんです。それで偶々立ち寄ったんです」
「ほう」
「それで、貴方はどうしてこんなところに住んでいるの?」
「研究だ。魔法使いだからな」
「どんな研究をしているんですか?」
 少し考える素振り。
 なんだろう。
「まあ、同業者には教えてもいいか。俺はとある事情で魔法が使えなくてな」
「魔法使いなのに?」
「ああ。それでも体には大量の魔力を蓄えている。だからそれを使って魔法を行使するための研究をしている。俺はそれを魔術と呼んでいる」
「なかなかマッドな研究ね」
「魔法使いの研究なんて、大体そんなもんだ」
 なるほど。
 それならこんな辺境の田舎に住んでるのは納得だ。
「もう一つ聞いてもいいかしら」
「どうぞ」
「どうして私達が魔法使いだって分かったの?どうして助けてくれたの?」
「一つと言ったのに、二つも聞くとは欲張りな奴め」
「本当だよ」
「良いじゃないのよ。ジルも気になるでしょ?」
「まぁ、気にならないと言えば嘘になるけど」
「別にいいけど」
 ユーリは紅茶を口に含み、一息ついて答えた。
「俺くらいの魔法使いになれば、周囲のマナの流動と、個人の魔力くらい簡単に量れる。それからお前達が魔法使いだと判断した」
「なるほど」
「で、助けた理由はシンプルだ。昔から魔女狩りにあってきた同胞を何人も見ているから」
 なんでもない風にユーリは話すけど、目の奥は何か熱いものを隠しているように見えた。
「魔女狩り、ですか」
「やっぱりあったのね、そう言うの」
「ああ」
 そう言ってユーリは遠くを見るような目をした。
 多分、喪った同胞とやらを想っているのだろう。
「さて、しんみりした話は終わりだ。そろそろ雨も止む。お前達は旅を続けるといい」
 窓を見ると、ユーリの言う通り雨は弱くなっていた。
「そうね、そろそろお暇させてもらうわ」
「ありがとうございます、ユーリさん」
「気にするな。久々に同胞に会えて楽しかったよ」
 私達は雨が止んだのを確認して、ユーリの家を後にした。



     ●     ●     ●



「あの時助けてくれたのが最初だったわね」
作品名:D.C.III.R.E 作家名:無未河 大智/TTjr