D.C.III.R.E
「この<径>もダメだったか」
これで幾つの<径>を回っただろう。目的の奴に会える手掛かりは一つもなかった。これは何か縁を操作されているのか、はたまた運が悪いのか。
短く溜息を吐き、近くの桜の木に体を預ける。
都合、ミズの国の方が居心地がいいからここにいるけど、目的の奴を探すにはサクラの国を探さないといけない。
そんなわけで、先程までサクラの国にいたのだった。
「……ま、居ないものは仕方ないわね」
焦っても仕方ない。この径に居ないのが分かっただけ、収穫としよう。
大昔、解決の為の手段を得たにも関わらずに色んな<径>を回っていた時よりは幾分かマシだ。
というかなんでまたこの姿?あの馬鹿、何してくれてるわけ?もうそんな歳じゃないし。
あいつらに会う時もかなり困惑したのに、またこの姿で出会うことになったらどうしてくれるのよ。
もう一度短く溜息。
「あの馬鹿、今度会った時はただじゃおかない」
とにかく今は目的の奴を探すことを優先しよう。
そいつが見つかってから凡人と一緒にあの馬鹿をとっちめたら良い。なんなら可子も誘おうかしら?
……そんなことよりあいつらが成長の方が大事だ。
あたしはそう思い、扉を開いた。
作品名:D.C.III.R.E 作家名:無未河 大智/TTjr