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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.III.R.E

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「デートは行けないけど、ユーリさんの部屋に行ったら入れてくれるし、構ってもらえる。ただユーリさんも卒業がかかってるわけだから、私から遠慮してる」
「良い嫁かよ」
 唐突に何を言うか。
「エミリア。早いよ、まだ」
「じゃあ結婚する気なの?」
 チェルシーは返事に困ること聞かないで……。
「……そりゃ、そうなると嬉しいよ」
「でもさ、ユーリさんは今年卒業なんだよね?」
「え、うん」
「てことはさ、卒業したらもう会えなくなっちゃうよね」
 エミリアの言うことはもっともだ。私達は今年予科を卒業したら本科に進学するけど、ユーリさん達本科二年の人達は就職するにしても、進学するにしても普段からは会えなくなるということだ。
「……考えてなかった」
 嘘だ。考えたくなかっただけだ。分かってたよ、ユーリさんとあんまり会えなくなるなんて。
「まあ、悪いようにはならないと思うけどねぇ」
「え?」
 突然エミリアが変なことを言う。
「どういう意味さ」
「だってユーリさんは、女王様のお抱えの魔法使いみたいなものでしょ?で、女王様は意外と近くにいると」
 当然だ。だってこの国の女王様はこの学園の学園長なんだから。
 ……あっ。
「私なら、そんな頼りにしてる魔法使いさんを易々と手放したくないと思うけどなぁ」
 なるほど、その発想はなかった。
「確かに!ユーリさんはカテゴリー5の魔法使いさんだもんね~」
 チェルシーに思ってたこと全部言われてしまった。
 でも……うん。そう考えると、ユーリさんがそう遠くに行かない気がしてくる。
「ま、保証は出来ないけどね」
 こう言ってぶん投げてくるところはエミリアらしい。
 ただ正直気は楽になった気がする。
 でもユーリさんは、身の振りをどうするかまだ決めてないって前に言っていた。だからまた今度、ユーリさんがどう決めたか聞いてみよう。
「で、話変えるけどさ~」
 何やら今度はチェルシーが神妙な面持ちで話を振ってきた。
「今度の生徒会選挙、予科一年の子の最後の選任と一緒に新生徒会長を私達の中から決めるわけじゃん?どうなるかな~?」
 ……そう言えば、そんなこともあった。
 ということは、リッカさん達本科一年の人達の引退も迫っているということになる。引退というか、実権が私達新本科一年に移って本科二年の人達がそのバックアップをしてくれる、みたいな感じだけど。今年度のユーリさんがそうしてくれていたみたいに。
 ……いや、殆どいなかったなあの人。
「そっか。今度は私達の番か」
「そうだね。私達がどうしたいかも、ちゃんと考えないとね」
 本科二年の人達の卒業も、私達の進学も、意外と近くに来てる。
 ユーリさんの事だけじゃなくて、私自身の事もしっかり考えないとな……。
「で、ユーリさんとはどうなのよ?」
「……さっきので終わってなかったの?」
「終わったわけないじゃん!だってカレンの悩みを聞いただけだよ~?」
 不覚。まさか、あれで許してもらえなかったとは。
 この後生徒会室に着くまで、私はチェルシーとエミリアに根掘り葉掘り聞かれるのだった。
 まさかユーリさんが半年近く風見鶏を離れていたことが、こんなところで響いてくるなんて思いもしなかった。



     ◆     ◆     ◆



 俺が生徒会室に着いた時、カレンはげっそりしていた。
 一体あの後何があったんだ……?後で愚痴でも聞いてやろう。
 おっと、目的はそっちじゃない。
「エリー……いや学園長、ちょっといいか?」
「ええ、いいですよ」
 俺はエリーに声を掛ける。
「女王に伝えていただきたい。暫く、勅命のミッションを俺に出さないで、代わりにリッカに回していただきたいと」
「リッカさんは宜しいのですか?」
 エリーは、この場にいるリッカに話を振った。
「ええ。昨日ユーリ本人から打診があったわ。私としては暫く大変になるけど、ユーリの経歴にこれ以上傷がつくのは可哀そうだしと思って、引き受けたわ」
 一言多い。事実だけに言い返せないが。
「分かりました。では、そのように手配しましょう」
「ありがとう」
「ところでユーリさん」
「なんだ」
「ここにいる方々は、皆さん私の正体を知っているのに、どうして回りくどい言い方をしたのでしょう?」
 いや、実際そうなのだが。
 ウィザリカへの対応として公式新聞部なる組織を発足した時に、ここにいる生徒会役員全員にエリーは自身の正体を明かしていた。
 けど。
「流石に俺はまだ風見鶏の一生徒でしかないからな。直談判をせずに学園長というワンクッションを挟んだ体にしておきたかった」
「なるほど」
 理解してもらえたかは定かではないが、まあ良し。
「と言うわけだ、すまんがリッカ、よろしく頼む」
「ええ」
 これでなんとか、時間は確保できたな。
「それで、あの件は考えていただけましたか?」
 束の間を挟み、続け様にエリーが聞いてきた。
「ああ、宮廷魔術師の件ね」
「宮廷魔術師?」
 今度はカレンが聞いてきた。
「ああ。エリーから宮廷魔術師として自分の元で働いてくれないかと打診されてたんだよ」
「なるほど……」
 なんだ、このカレンのほっとしたような雰囲気は?
 それとチェルシーとエミリアのニヤニヤとした顔はなんだ?
「って、カレンに説明してなかったの?」
「……そう言えば、してなかった気がする」
「ええ、聞いてませんでした」
 打って変わってカレンの少し不機嫌そうな声が聞こえる。
 やってしまった。
「なんでよ?」
 ……仕方ない、話すか。
「情けない話だが、不安だったんだよ。ここまでのらりくらりと生きてきて、肝心な時に色々決めきれないことが。だからちゃんと決めてから話そうと思っていた」
「それでユーリさん、決めたんですか?」
 俺は首を横に振った。
「正直、まだ決めかねている。俺のやるべきことも、やりたいことも含めて」
「そうですか。まあ、ユーリさんが優柔不断なのは今に始まったことじゃないですし、いいです。その代わり、約束してください」
「何をだ?」
「ちゃんと決めたら、私に最初に報告すること。それと困ったら私にも話すこと。解決できなくても、愚痴くらい聞いてあげますよ」
 この時ほど、俺は俺のことを情けないと思ったことはない。
 200歳以上も年下の少女に、こんなことを諭されるなんて。この娘には、一生敵わないのだろうな……。
「元会長は、カレンの尻に敷かれそうだな」
「ええ、なんかそんな未来が見えます」
 ずっと傍観していた巴と清隆に言われてしまい、俺は頭を抱えてしまった。
 いや、俺もちょっと思ったけど。
「でも、カレンちゃんはしっかりユーリさんの事見てるんだなって、ほっとしたよ」
「ちょっとシャルルさん!恥ずかしいからやめてくださいよ!」
 今度はシャルルがカレンを赤面させていた。
 付き合っているのを隠していないとはいえ、ここぞとばかりに茶化してくるのはやめて欲しい。
「はいはい。かったるい問答も終わったことだし、そろそろ仕事に戻るわよ。ほら、ユーリは自分のことしてきなさいよ」
「……分かってるよ。それじゃ、カレン。また後で」
「はい!」
「カレンちゃん、一応異性の部屋に行くのはご法度なんだからね?」
作品名:D.C.III.R.E 作家名:無未河 大智/TTjr