最終兵器静雄
彼の自我が日に日に損なわれていくのは感じていた。
「俺、成長してるんだ」
彼の言葉通り、感情をなくすのと同時に、彼の兵器としての性能はどんどん上がっていった。
彼の中の人間である部分を少しでも守りたくて、必死だった。
「街を一つ消しちまった・・・」
誰のものとは分からない返り血を浴びた彼の姿。
ワイシャツの背中は生えた翼によって破られ、髪からは染み付いた硝煙の匂いがする。
がたがたと震える、機械に蝕まれた身体。
「力を制御できなかった・・・っ」
今はもう人間のそれへと戻っている両手を見つめ、彼が絶望に頬を濡らす。
「まだ、避難してない奴が、子供が、まだいたのに・・・っ」
ぐしゃぐしゃの泣き顔。
次から次へと溢れる涙を拭って、俺は彼の身体を抱きしめた。
「逃げよう」
軍の衛星が常に彼の位置を追っている。
逃げられる筈は無いと知っていた、それでも。
作品名:最終兵器静雄 作家名:蒼氷(そうひ)@ついった