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ポケットにしまう有限の涙と無限の栄光。

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「奈於ちゃんは面白いよ」黒見明香はにっこりと、そのまったりとした大きな眼を笑わせた。「不思議な言葉使うから、たま~に何言ってるのかわからないけど、頭はいいと思います」
「てへ」
「くろみんもか~なり個性的よ」田村真佑は顔を笑わせて言った。「奈於も個性的だけど、くろみんも、負けてない」
「わかるな」稲見瓶が言った。「かっきーとミュウちゃんが常識人に見えるね」
「あの、私は?」田村真佑は、己を驚いた顔で指差した。「常識人ですけど……」
「まゆたんざんは、確かに空気を読む才能も一流ですし、ひっくっ……、コントも一流ですね」駅前木葉は機嫌良さそうに言う。「コントなんかは、あれは空気を読める常識人じゃないと、何をどうしたら面白いのかがわかりませんからね…ひぇっく……、まともな事と、そうでない事とを判別できるからこそ、ひぃっく……面白い演技が可能なんですよ」
「ありがとうえっきー、ちょっと、酔っぱらってる? えっきー」
 田村真佑は心配そうに、駅前木葉の顔に手を差し伸べて、顔を覗き込む。駅前木葉はにっこりと微笑んで、無抵抗であった。
「ミュウちゃんは真面目だね。それも、絵に描いたような真面目な人だと思う」稲見瓶は皆の眼を順番に見つめていき、持論を語る。「これまでの俺が知り得るミュウちゃんの全ての情報を総合して、そう思う。誠実な人だ」
「ありがとうイナッチ」松尾美佑ははにかんだ。「なんか、照れるな……」
「かっきーは、乃木坂1、純粋な人だと思う」稲見瓶は更に持論を語る。「頑張り屋だしね。苦労に対抗しうる強い精神も持ち合わせてると感じられるし……、綺麗な子供のような心を持ってる人に見えてるよ、俺には、だけどね」
「さくちゃんさんと、どっちが純粋かしら?」駅前木葉はぼそっと呟いた。駅前木葉は非常に酔っぱらっている。
「ああ、そうか……。難しいね。いい勝負だ」稲見瓶は小さく微笑んだ。
「さくちゃんも純粋よ、きれ~な心持ってる」田村真佑は説得力のある強い表情で言った。
「えでも、かっきーもちょ~う純粋だと思う……」弓木奈於は表情を無くして囁いた。
「そんな純粋じゃないから」賀喜遥香は、どうしようもなく苦笑する。
「純粋、という事は、傷つきやすくもあるという事だ」稲見瓶は、澄ましてアイスコーヒーを一口飲んだ。「少なからず、かっきーの涙も、さくちゃんの涙も、見た事がある。それも、辛辣な誰もが泣いてしまうような事でじゃなく、番組上のコメントの事で、泣いていた。あれで泣くという事は、うまく楽しめている時以外は、普段かなり頑張っているという事だ」
 賀喜遥香は、稲見瓶を見つめて、小さく感心に似た納得をもらしていた。
「かっきーはね、性格は明るいんだよ」稲見瓶は言う。「さくちゃんは、どちらかというと、おっとりしている。純粋さの見え方が違うとしたら、その差かな。純粋なのは同じぐらい純粋だよきっと。同じぐらい、傷つきやすい、とも言い換えられるけどね」
「あの~」
「?」
 黙々と焼肉定食を味わっていた与田祐希が、そろっと声を上げた。
「ゆうきは、どうですかね? 純粋、ですかね?」
「野生だね」稲見瓶は答えた。
「野生か~」与田祐希は視線を外して呟いた。
「野生とはね、自然界で生きる生だ」
 稲見瓶は、与田祐希に頷いた。
「生きる為に必死になる事は、それは疑う余地もないほど真面目で、真剣で、美しい。野生とはね、かくもすこぶる、純粋だよ」

       8

 二千二十二年六月二十五日。本日アサヒビール・イベントに参加していた数名の乃木坂46のメンバーと、各々の仕事を完遂した乃木坂46のメンバーが、今宵の〈リリィ・アース〉に訪れていた。
 広大な面積を誇る地下二階のエントランスフロア、その東側のラウンジ、巨大なソファ・スペースに四角く囲われた通称〈いつもの場所〉にて、乃木坂46の一期生、齋藤飛鳥、二期生の山崎怜奈、三期生の伊藤理々杏、梅澤美波、中村麗乃、山下美月、与田祐希、吉田綾乃クリスティーの八名は晩酌をしていた。尚、十代の伊藤理々杏だけは、ジュースで乾杯している。
 乃木坂46ファン同盟のメンバーも数名、ここにいた。
 広大なフロアにはクーリオの『シー・ユー・ウェン・ユー・ゼアー』が流れていた。
「理々杏ちゃんポケカ集めてるんだ?」
 風秋夕は、会話を楽しんだ笑顔で伊藤理々杏を見つめた。
「うん。集めてる~」理々杏は笑った。
「ぽけかって何だ?」磯野波平は顔をしかめた。「ぽけか?」
「ポケモンカード」伊藤理々杏は答える。「デュエルする~カード? ていうのかな、なんて言えばいいんだろ。あ、カードゲームカードゲーム」
「ほ~ん」
「コレクション感覚でも集める楽しみがあるんだよ」風秋夕が言った。「カードコレクターもいるんだぜ。絵柄も光るカードもあって、コレクターにはたまらんジャンルだよ」
「そう! そ~うなの!」伊藤理久々杏は喜んだ。「しっかも、ポケモン、ていうね」
「乃木坂ってメンバー多いけどさぁ、色んな趣味があるのね。十人十色ってよくいうからなー」
 山崎怜奈は関心を示しながら囁いた。
「オリカとか買ったりするの?」
 風秋夕は熱い紅茶をすすった後で、伊藤理々杏に言った。
「うん、買う買う」
「おりか?」磯野波平は顔をしかめた。「オリジナルカー?」
「車なの?」
 山下美月は、磯野波平の発言に短く笑った。
「オリジナルカード」
 伊藤理々杏は、磯野波平を見つめて答えた。
「ようは、公式から販売されてるパックじゃ手に入らないようなカードが手に入るわけね」
 風秋夕が笑顔で言った。
「その言い方だと、公式のパックとやらを買うよりも、当たりを引くのに効率がいいと聞こえるけど」
 稲見瓶は無表情で淡々と言った。
「うーん……」伊藤理々杏は顔を険しくさせて唸った。
「メリットはあるよ。でも、もちろんデメリットもある」風秋夕が言う。「メリットは、当たり枠のカードが、購入価格に対して非常に高価な時がある」
「そう」伊藤理々杏は声で頷いた。
「デメリットは、還元率が悪くても、自己責任てとこと、実物カードの状態確認ができないこと。一人あたりに購入制限がある販売方法だと、実際に当たり枠が封入されてなくても証明ができない。などなど、ね」
「うん、そんな感じかな」
 伊藤理々杏は、稲見瓶を一瞥してから、ジュースを手に取った。
「つまり、オリパとは公式で販売されているパックとは異なり、実店舗や個人がオリジナルに作成したパックの事をさすと」稲見瓶が低い声で抑揚無く言った。
風秋夕が言う。「そう、オリパっていうのは、オリジナルパックの略で、要するにTCGのメーカーが公式に販売してるパックとは違い、ショップや個人がカードを集めてオリジナルのパックを販売するっていうものだ」
「そう。たまーに、買うよ」伊藤理々杏は言った。「引きは~…うんまあまあ、かな」
「ポケモンゴーなら知ってるけどね。ふふまだあるのかな、ポケモンゴーって」
 山下美月は微笑みながら言った。手を止めずに、美味しくディナーを食べている。