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ポケットにしまう有限の涙と無限の栄光。

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「小生はその日、一日仕事を休むでござる」姫野あたるはにこりと笑った。「オフなれば、れなちは早くからここに来ているかもしれぬでござる。小生は、少しでも長く、乃木坂の思い出溢れるれなちと過ごしたい」
「お前はいいよなー、スケジュール調節できて」風秋夕は溜息をみせた。「俺らは、早くて六時半、てとこか」
「が妥当だね」稲見瓶は答えた。
「あたいも、休むわ」宮間兎亜はハスキーな声でそう言い、半眼で笑った。「一日ぐらい休んでれなちと過ごしたって、バチあたらないでしょ」
「そうやっていっつも作戦立ててるんだ?」新内眞衣は物珍しそうに言った。「勝手に集まってるってわけでもないんだねー」
「まいちゅんも来れたら来てよ」風秋夕は新内眞衣を見つめる。「絢音ちゃんとか未央奈ちゃんとか、きいちゃんとかも誘ってさ」
「二期生で集まれって事ぉ?」新内眞衣は驚いたように言う。「…ぁあ~、難しいな~それはぁ~。みんな予定もバラバラだし。第一、知らないし、スケジュール」
「まいちゅんはどうなの?」風秋夕は言う。「スケジュール」
「あ~、ちょっとまだ、わっかんない、かな~……」新内眞衣は表情を少しだけ険しくして、小首を傾げた。
「ちょっとやめてよ二人とも! やめなさい!」秋元真夏は、己の前に腕を出してもみ合っている磯野波平と天野川雅樂に憤怒している。「ちょ、…邪魔だし!」
「やめろーこの野郎ー!」和田まあやは面白がって叫んだ。「どっちが強いんだー? 決着付けるんか、おい! 聞いてんのかこの野郎ー!」
「ねえほんとにー、こーぼーすーからー!」樋口日奈はテーブル上のグラスを気にしている。秋元真夏の助けには応じていない。「やーめーなーさぁい!」
「アホ野川ぁ! てーめえはあとから来たばっかじゃねえか! 先輩にゆずるのがあったり前だろうがよ!」磯野波平は天野川雅樂の胸倉を掴んで怒号を上げる。「痛てて、あてめっ、爪たてただろ今ぁっ!」
「こんの馬鹿力っ、てぇめえの嫁なんぞ外の世界にいっくらでもいんだろうが! 誰が真夏さん渡すかこの奇跡の馬鹿たれっ!」
「危ない危ないっ、あほら、もう注文届くから、ねえ! ねえってば!」秋元真夏は二人を見上げて声を荒げる。「ねえねえ、みんなのお嫁さんなのっ、勝っても負けても一人のものにはならないんだってば!」
「おお波平っ、負けるかー負けるのかー? 新入りに負けちゃうのかー?」和田まあやは二人を見上げて楽しんでいる。「おー天野川選手っ、ちょっと押されていますっ! このまま敗退でしょうか!」
「やめなよ~雅樂さんも磯野さんも~、馬鹿がバレちゃうよう? ……。ねえひなちまちゃーん」来栖栗鼠は樋口日奈を見る。樋口日奈は来栖栗鼠に振り向いた。「磯野さんて、いっつもこうなの~?」
「えー、うん」樋口日奈は苦笑して、頷いた。「いっつも、暴れてる」
「ひなちまちゃん、写真集、超~綺麗だったね~」来栖栗鼠は屈託なく微笑む。「僕ひなちまの裸、初めて見たからドキッとしちゃったよ~」
「裸になってないなってない」樋口日奈は苦笑する。
「おらえり締めだこのまま息絶えろっ馬鹿野川~!」
「ぐ、ぐうぐっ……」
「があっはっは俺様のもんだあ~まなったーん結婚を前提に結婚してくれ!」
「さっきっからギャーギャー、幼児か貴様ら!」風秋夕はソファから立ち上がる。「作戦に参加しろろくでなし共ぉ!」
「あ、来たよ、ご飯。ねえほら、来たよ波平君!」秋元真夏は叫ぶ。「てか何で私の前でケンカするの危ないから~っ!」
「お腹空いたー」新内眞衣は届いたフードを座視で見つめて呟いた。
「波平メシの時間だ馬鹿野郎ー!」和田まあやは笑っている。
「これじゃラーメンのスープがこぼれちゃうでしょ~!」樋口日奈は争う二人に手を伸ばす。「こーら!」
「やめんか馬鹿者ぉ!」風秋夕は激怒する。
「と~りあえず、落ち着くまでご飯はテーブルまで運べないね~」来栖栗鼠は溜息を浮かべた。
「馬鹿か貴様ら! まなったんは俺のでしょうがこの馬鹿者共ぉ!」風秋夕は本気で叫ぶ。
「おいおい……」樋口日奈は呆れて呟く。
「やれやれ」稲見瓶はそう囁き、頬杖をついた。

       3

 二千二十二年六月十七日、夕方PM五時過ぎ。乃木坂46二期生の山崎怜奈は所要をこなす為に〈リリィ・アース〉へと立ち寄ったのであった。
 〈リリィ・アース〉の地下二階のエントランス・フロア、その東側のラウンジで山崎怜奈を待ち構えていたのは、乃木坂46一期生の秋元真夏と、乃木坂46ファン同盟の姫野あたると、宮間兎亜であった。
「あら、真夏さん」
 山崎怜奈は、上品に口元を手で押さえて少しだけ驚いた顔をした。
「れなち殿~、ようやく会えたでござるよ~!」
 姫野あたるはソファから立ち上がって、山崎怜奈をソファ・スペースへと誘う。
「夕方だったわね」宮間兎亜は言う。「仕事に出てても、間に合ったわこりゃ」
「皆さん、早いですねぇ、今日はまた」山崎怜奈はバッグをソファに預けて、己も着席した。「何の集い? ですか、これは?」
「私は次の仕事までの休憩時間、ご飯食べに来たの」秋元真夏は天使のようににやけて言った。「こっちの二人は待ってたみたいよ、崎さんの事。なんかオフって知ってたみたい」
「夕君にしか話してないのにな~」山崎怜奈は苦笑した。「あーお腹空いた。みんな何食べたんですか?」
「私うな丼」秋元真夏はにっこりと微笑んだ。「ここのだったら、何でも挑戦しやすいよね。美味しいから」
「タダでござるしな!」姫野あたるはにやける。「小生はお寿司、頂いたでござる」
「あたいはラーメン」宮間兎亜は半眼でにやけ、言葉を付け足す。「あ、とんこつね。背油たっぷりの」
「あーじゃあ、また季節野菜のからあげにしよう」山崎怜奈はにっこりと笑み、宙を見上げた。「イーサン、います?」イーサンが応答する。「ああ、じゃあ。注文です。季節野菜のからあげライスとセットで、お願いしまーす。あ、あとコーヒーブラックで」
 畏まりました――と厳粛な老人の声がその場だけに響いた。
「昔は、れなちは水オンリーでござったのにな、大人になったのでござろうか」姫野あたるは哀愁ある表情で微笑んだ。
「挑戦してきたからね」山崎怜奈は微笑んだ。
「まなったん殿が、この前集まった時に、れなちの卒業は全く分からなかったと驚いていたでござる」
「そうなんですか?」山崎怜奈は秋元真夏を見る。
「えいや、そうじゃなくてね」秋元真夏は大袈裟に笑みを浮かべると、次の瞬間に唾を呑み込んで、落ち着いて話そうとする。「近々日にちありますか? て言ってくれて、崎さんが。それでご飯する日が叶ったって感じだったんだけど」
「うむ」
「ふんふん」
「そそ」
「私もやっぱりキャプテンなんで、グループをバーって見てるとこの子が卒業近いのかな? とか、そういうのはさすがにわかったりするから」
「その前にも何個か食事行きましょっていう約束はあったんですよね」山崎怜奈が言った。