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僕はきっと、この日を忘れない。

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 もう一度、航空写真を撮った。筒井あやめは先程の会場の光景が、東京のイルミネーションの何倍も綺麗だったと感動を語った。
 田村真佑は初めての日産が、雨なんだ、んん。と思っていたが、晴れてくれて良かったと、これから私は1500くらいの力で頑張ると語った。
 賀喜遥香は語り出すと同時に、泣き出した。楽しいなと思って……。なんて人生だと思ってと。憧れてた先輩と踊れたのも嬉しかったし、夢が覚めてしまうと怖いと涙ながらに語ってくれた。夢じゃないよ、と優しく微笑むメンバー。
 梅澤美波は最後に、これからもよろしくお願いしますとまとめた。
 VTRが流れる。2013年に初めて開催されたバースデイライブ。それは今年で十回目を迎えた。十年間で手にした経験、受け継がれていく、言葉や想い。それは彼女達の汗と涙、それは彼女達の成長の証。これからも、歩み続けていく。

「これさ、ナレーションが山ちゃんなんだよな。凄くね? ジム・キャリーやる人だぜ?」風秋夕は嬉しそうに言った。
「うん、山寺さんだよね。気付いてたよ。凄いね」稲見瓶は深呼吸した。「まさか、トークでかっきーが泣くとは思わなかった。つられたよ」
「つられたって、どっちに?」磯野波平は稲見瓶にきく。「可愛い方にか? 泣く方にか?」
「泣く方」稲見瓶は答えた。
「ナレーションさんも、今回が一番感動するかもですわね」御輿咲希は駅前木葉と宮間兎亜に言った。
「そうですね、泣かずにはいられませんでした。実に感動する表現が多いわ……」駅前木葉は答えた。
「飛鳥ちゃんが髪の毛ふわふわしてんの、今日! ねえ気づいた?」宮間兎亜は眼玉を見開いて二人に言う。「髪の毛、ふわっふわなのよ!」
「あー、こういう泣けるライブってのも、最高だなあ?」天野川雅樂は上機嫌で来栖栗鼠に言った。
「ほんとにねー!」来栖栗鼠はにっこりと微笑む。「あとねー、グループトークで与田ちゃんがすんごいしゃべってくれてるんだよー! ライブ観てくれてるみたい!」
「蒼空殿、乃木坂のライブで感動した者は、もう皆仲間でござる。心を開いて下され」姫野あたるは比鐘蒼空に微笑んだ。「入り口に、小生なら入りやすかろう」
「ありがとう、ございます……。よろ、しくです……」比鐘蒼空はぺこり、とお辞儀をした。

 オーケストラが壮大な演奏を奏で始める……。紫のライティングがDNAを思わせる螺旋を描いている。
 大きな拍手が沸き起こり、次の瞬間、オーケストラの『夜明けまで強がらなくていい』が遠藤さくらのセンターで歌われる。神聖なる迫力のステージとなった。
 山下美月のセンターで『僕は僕を好きになる』が始まった。オーケストラをバックにこれを歌い踊る乃木坂46は、とても強く、大きく、愛しかった。このセンターに立った山下美月は、恐ろしいほどに美しかった。
 齋藤飛鳥のセンターの『シング・アウト』が始まった。会場中がクラップする。そんな中の齋藤飛鳥のソロダンスは最上級の賛美に相応しいだろう。儚く、尊くあり、迸(ほとばし)る美しさを鏤(ちりば)めていた。
 立ち上がる花火の火柱。
 バースデイライブ、皆さん楽しめていただけたでしょうか――。最高の一日を、皆さんありがとうございました。
 深々と頭を下げる乃木坂46――。感謝し、感謝され、愛し、愛され。
 そんな最高のステージであった。

「誰がこんなライブを想像できた? やべ、興奮が終わらねえ!」風秋夕はその興奮を笑みに宿した。
「凄い、というよりも、ヤバい、の方が確かに似合うライブだね」稲見瓶は磯野波平をちらりと一瞥した。「彼女達だけじゃなく、こっちもしっかりと感動を貰ってるね」
「うおーー感動すんじゃねえかよぉー!」磯野波平は大声で泣いた。「涙で水分全部出ちゃうでしょうが~!」
「決して楽な道のりではなかったでござる。棘(いばら)の道のりでござったはず、それを、よくぞここまで……、よくぞ、ここまで……」姫野あたるは感涙していた。
「何か、決してショーだけではない……、人生の大事な時間を垣間見ている気がします。彼女達を、誇りに思います……」駅前木葉は、そう呟いた後で、己の頬を伝った涙の存在に気付いた。
「生意気言うと、これ以上のライブはない、だね~!」来栖栗鼠は満面の笑みで言った。
「さすがだぜ……。感動したよ……」天野川雅樂はそっと囁いた。
「飛鳥ちゃんって、あんなに素敵なの? そ~うなの、素敵なの!」宮間兎亜はにんまりと笑ってハスキーな声ではしゃいでいた。
「こぉんな、サプライズも待っていたなんて……、驚天動地の沙汰ですわね。いいえ、それ以上だわ……」御輿咲希は涙をぬぐいながら言った。
「おいらは、もっと誠実に、前向きに生きなきゃいけないな……」比鐘蒼空は呟いた。

 クラップは鳴り止まない。
 紫一色の空間。
 膨張を続ける宇宙空間のように、乃木坂46はオーディエンス一人一人の想いを吸収し、今も拡張し進化を続けている。
 クラップ、クラップ、クラップ。
 会場は知っているのだ。
 一度幕を下ろしたそのステージが、
 また、再開される事を――。

 眩しい光と共に、『日産~、拳を上げろ~!』という勢いが懐かしい生駒里奈の煽り声と共に、『会いたかったかもしれない』が開始される。
 乃木坂46は会場中を走る。トロッコも会場を回る。空気砲も発射される。

「生駒ちゃんだよっおい、生駒ちゃーーんっ!」風秋夕は大はしゃぎで叫んだ。
「生駒ちゃんの声したな、て生駒ちゃんじゃーーん!」磯野波平は驚愕する。
「ああ、本当に凄い!」稲見瓶は叫んだ。
「最後まで最高のステージでござるぅ、うううぅ~!」姫野あたるは泣き出した。
「ここで会いたかったかもしれないがかかるのか」天野川雅樂は興奮の渦の中、感心していた。
「ほら雅樂さん、ペンライト振ってぇ!」来栖栗鼠は大喜びである。
「乃木坂のライブって、ライブって……――」御輿咲希は静かに泣き崩れる。
「あっはー、こりゃ夢か!」宮間兎亜はペンライトを盛大に振りながら笑った。
「忘れません、この日を」その眼に涙を浮かべて、駅前木葉は小さく呟いた。
「………」比鐘蒼空は大感動の中、精一杯でペンライトを振った。

 『ハウス』が歌われる。メンバーの中には、伊藤万理華の姿もあった。生駒里奈が会場を煽り、オーディエンスの合いの手が巨大に木霊する。
 キャプテンの秋元真夏のMCが、『遠い』という生駒里奈と『長い』という伊藤万理華に話しかける。湧きに沸いたオーディエンスの歓声の中、生駒里奈はライブを振り返り『コロナ禍だが、沸いてしまった歓声は秘密にしよう』と、笑顔で語ってくれた。
 伊藤万理華はこれからも乃木坂も乃木坂を卒業していく人も、これからを生きていく私達の応援もよろしくお願いしますと語ってくれた。
 こうやって卒業生と乃木坂46が集まれる機会にも、勇気をもらえると、キャプテンの秋元真夏は笑顔で語ってくれた。
 最後の曲、『乃木坂の詩』が始まる――。
 感動のフィナーレだった。後ろを向くな、正面を見ろ。皆さん、十一年目も、よろしくお願いします――。
 自分を信じて、前へ進むんだ。
 名もなき若者よ、夢ならここにある。
 乃木坂の詩。
 僕らの詩。