二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ジャンピングジョーカーフラッシュ

INDEX|11ページ/38ページ|

次のページ前のページ
 

「林~……。うん、わかった」
 ベルフェゴールはアスファルトに寝そべったままで、片手で面倒くさそうに、獰猛(どうもう)な熊と、血走った眼玉の驢馬(ろば)と、鋭利な角を持つ闘牛を召喚している。そのどれもが巨大な身体をしていた。
 着地の衝撃を味方につけ、共に全体重と勢いをのせた賀喜遥香の渾身の一撃を、熊は脳天に直撃させて、蹲(うずくま)るようにして、地面に下半身を埋め込んだ――。
「黒にお染まりなさい……」
 次の瞬間、黒見明香の身体を光状(こうじょう)の布が身を隠すように巻きつき、瞬間的に剝がれると、黒見明香は漆黒の光沢をつくる鎧を着込んだ、長剣を持った騎士の姿に変身していた。黒見明香の【黒の騎士】の能力・発動である。
 筒井あやめはその光景を見つめながら、出発前に声の主が言っていた事を頭の中で思い出していた……。

――〇△□この任務では、六人の仲間と現場で落ち合ってもらう。六人のヒーロー達は強さこそ君らと同等といえるけどね、君達よりも経験豊富なヒーローだ。次の悪を打ち倒すのには必要な集合だといえる。挨拶とかは、戦闘終了後にしてね□△〇――

「死の回転する牙(デス・ロール)!」
 筒井あやめの発声と共に〈紫色をした背表紙の本〉の開かれた頁(ぺーじ)が発光していた。
 黒のタキシード姿のベルフェゴールの首元から、ブシュと、血飛沫(ちしぶき)が短く吹き出した。
 弓木奈於は【言霊士】の能力を発動させて〈言霊〉を使う。
「つかちゃんと立って壁まで吹き飛べっ‼」
 ベルフェゴールは、エレベーターの設置された壁面まで不思議な力で吹き飛ばされた。
 弓木奈於は〈言霊〉を続ける。
「国民的スーパースターアイドルのミステリアスなエースの圧(あつ)っ‼」
 ベルフェゴールはボゴォン――と破片をまき散らしながら壁面に蹲(うずくま)った。
「国民的アイドルのエースが放つ神秘的な圧っ‼ 圧っ‼ 圧っ‼」
 ドゴン、ドゴォン、ドッゴォン――。ベルフェゴールは思わず苦しそうに吐血した。
 筒井あやめは冷静に状況を見極めている。
 近くに跳び移ってきた弓木奈於が筒井あやめを横目にきく。
「あのすいません、なんか現実になったら効き目ありそうな攻撃の日本語ありませんか!」
 筒井あやめは瞬時に、そして適当に答える。
「巨人の脚(あし)で踏みつけるとか?」
「ちなみに普通の脚のサイズって何センチですかね!」
 弓木奈於は早口できいた。
「123センチ? 私は123センチだけど」
 筒井あやめは、ベルフェゴールの動きを把握しながらぼうっとした表情で答えた。
「123センチですか! 大きいんですね脚! じゃそれでいきます」
 弓木奈於は【言霊士】の能力で〈言霊〉を使う。
「123センチの脚で踏まれろ!」
 ベルフェゴールはドシン――と、突如として頭上に出現した巨人とまではいかないが、されど大きくはある脚の裏に踏みつけられた。
 筒井あやめははっとなって囁く。
「あ、23センチだ」
「ええっ、もう使っちゃいました! てか、いいのか、別に!」
 暗雲から激しい稲光が響いている。早川聖来は振り上げた右腕の伸ばした人差し指を、天空を指すようにかかげ、すでに発動中である【電撃の支配者】の能力で叫ぶ。
「雷母・落雷砲(ディアンム・カドル)っ‼」
 ベルフェゴールの脳天に雷(いかずち)が落雷した――。ベルフェゴールは感電の痛みに絶句する……。
 走り寄っていた黒見明香が長剣で、ベルフェゴールの胸板をズバンと切り裂いた。血飛沫(ちしぶき)が飛び散る……。
 松尾美佑は【予言者】の能力を発動させる。――『神はサイコロを振らない』――と囁いた後……、松尾美佑の脳裏には、走馬灯のように十秒先までの未来が見えた。
「大変! みんなこの悪魔、私達の心を支配して変な事させるつもりだ! しかも私達その技にかかっちゃうよ! どうしようっ!」
 ベルフェゴールはアスファルトの破片を蹴り飛ばしながら、忙しそうに地に寝そべると、その頑固老人のようなしおれた眼を赤く光らせた――。
「なん、なんか、変な気持ちになって、きた……くそう‼」
 ベルフェゴールに近づいてきていた弓木奈於と黒見明香を始めとして、皆がベルフェゴールの術中にはまったと思われた、その時――。
 北川悠理は【絵空事】の能力を発動させる。
「私達が変な気持ちになって変な行為をさせられるなんて、そんなの嘘!」
 パシン――と、皆に正気が戻る……。しかしベルフェゴールの頑固老人のようなその眼光は、色欲の赤い光を更に強く増してみせた――。
 皆から、悶(もだ)え耐える声がこぼれ始める……。
「絶対嘘!」
 北川悠理の叫びの後、パシン――と、ベルフェゴールの起こす事象は掻き消された。
 安心の声が洩れる中、ベルフェゴールは更にその色欲の赤き眼光を強く発光させた……。
「認めない!」
 パシン――。と、破裂音のような現象が走った後で、北川悠理の【絵空事】の能力で、更に更に強くベルフェゴールの起こした事象が否定され、それまでの事象が無かった事のように解消された。
 ベルフェゴールは低い声を高らかに笑い響かせながら、出現させた便器の上に座り、頬杖(ほおづえ)をつきながら、更に強大な色欲を司る赤き眼光を眩しく発光させる――。
 皆がその場にへたり込む中……、北川悠理はその美しい顔に似合わぬ鬼のような表情を浮かべ、【絵空事】の能力を最大出力にまで上げて叫ぶ――。
「私達は、拒絶するっ‼‼」
 バシン――。と、衝撃波が走った――。気がつくと、ベルフェゴールの赤い眼が、青白い通常の恨めしそうな容(かたち)をした眼に戻っていた……。
 皆が立ち上がろうとする中、北川悠理は強く微笑む。
「私の否定した事象、拒絶した現象は、ほぼ完全に無かった事になる……」
 柴田柚菜は両手を空へと広げ、そして、ゆっくりと両手を胸の前で組んだ……。顔を俯(うつむ)けた後、無色透明な微笑みを浮かべて、その身体を白く発光させる――。彼女の【鼓舞する者】の能力・発動である。
「インスパイア!」
 仲間全員の立つ頭上の上空からだけ、天からの祝福のような、それはそれは美しい小さな範囲の日差しが差し込んだ――。柴田柚菜も含め、仲間全員の全能力向上効果・発動である。
 佐藤璃果は【可愛いの支配者】の能力を発動させる。佐藤璃果の身体が光り始めた。
「ベルフェゴールに負けるようなヒーロー達なんて、嫌い!」
 仲間全員の身体に光が付与され、何処からか不思議な力が漲(みなぎ)ってくる。

――●▲■驢馬(ろば)と牛とベルフェゴールに総攻撃だ! みんな、早々にこの現場を終わらせて、さくら君とレイ君の担当している現場へと急いで向かってくれたまえ!■▲●――

 賀喜遥香は大きく叫び上げる。
「みんなちょっと私のところに集まって! こいつらいっぺんに引き寄せるから!」
 全員が賀喜遥香の指示の元、敵との間合いを量りながら、全速力で賀喜遥香のそばまで移動した。
 興奮状態の闘牛は、コンクリートの破片を鋭く図太い角で突き上げている。錯乱状態の驢馬(ろば)は、泡を吹きながら走り回っていた。