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ジャンピングジョーカーフラッシュ

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 遠藤さくらは、強くアスモデウスの方を睨んでいる。
ユウも、アスモデウスを睨みつけた。
「あいつが、ある能力を使えれば、理論上、可能なんだが……」
 血まみれのアスモデウスは、息絶えた巨大な図体の蜥蜴(とかげ)から降り立ち、鮮血を飛び散らせる清宮レイの胴体を両手で握り締めた。

『主(わし)を此処(ここ)まで貶(おとし)めた褒美(ほうび)をやろう……。粉微塵(こなみじん)に化すがいい……』

 赤く染まる空間が、弧状のドームを描くようにその空間を青く塗り替えていく……。
 それはアスモデウス自らも含め、その場にいる二人のヒーローと五人の召喚獣をも包み込んだ。
 ユウは〈空間転移〉でアスモデウスの手の中の清宮レイを、遠藤さくらの眼の前へと瞬間転送させた。
「しめた……。これは魔法障壁か、異次元の空間だな!」
 そう囁いたユウに、ビンは険しく言う。
「大技のフラグだ、衝撃を自分に当てないように、奴はこの空間から逃れるつもりだよ!」
「何かやるつもりでござるよ、みんなぁ!」
 アタルは後ろを振り返って、叫んだ。
 アスモデウスは呪文を唱え始めている。やがて呪文の詠唱(えいしょう)が完了され、アスモデウスの奇妙な笑みが、三面の顔で浮かべられた瞬間――、怒号のような怨霊の呻き声のような多大な数多の悲鳴が何処かから響き渡る……。
 アスモデウスは笑みを浮かべたまま、その場から、瞬間的に姿容を消してみせた。
 ユウは次の瞬間、青い空間から〈空間転移〉で味方全員を、青い空間の外である、通常の戦闘時の景色である赤い景色へと瞬間移動させた。
「さくちゃん、ちょこっと使うぜ、最後の力」
「はい!」
 ユウは片手をふわり、と短く動かして、何やら青い空間へと〈空間転移〉の能力を使った模様であった。
 青い空間からその閃光だけが真っ白に光を放ち襲いかかってきた――。それは音も無く、衝撃波も無いが、凄まじい爆発が青い空間で圧縮されて巻き起こっているのが誰にも理解出来た……。
「ん、眩しいっ……!」
 遠藤さくらは表情を険しくさせて片眼を瞑る……、清宮レイも、地に両腕をついて呼吸を整えながら、眩(まばゆ)い閃光の方を険しく見つめていた……。
「これは……」
 ビンが片膝を突いた状態で、ユウに顔を向けた。眩しい爆発の光に満ちた世界は、赤い色から、通常の平和なカラフルな世界の彩へと、姿を変えていった――。
「死んだのか、アスモうんこが……」
 ナミヘイが、アタルの膝の上で弱った表情のままで囁いた。
「死んだみたい、だね……。でも、どうして?」
 清宮レイは、不思議そうに、険しくユウを見つめた。
「何をしたの?」
「うん……。まず、アスモデウスが、魔術か何かの力で発生させた磁場(じば)、要するに異空間、みたいな、魔法障壁をつくり出したよね。青い空間をさ……」
 皆はほっと一息をつくように、著(いちじる)しく破損した一般道路の中心で、腰を下ろし、ユウの話に耳を傾ける。
「独立した超空間を、奴は創り出した。それはおそらく、アスモデウスの最後に放つ技の能力が、範囲が大きく、自分にとっても危険な物だったから、障壁を創ったんだと思う。その空間から俺達は〈空間転移〉で飛び出して、変わりに〈空間転移〉で、アスモデウスをあの中に戻したんだ……。それと同時に、ちょっとした量の、空気を、送り込んだんだ」
 皆は真剣に聞いている。ナミヘイだけが、すでに大きな鼾(いびき)をかいて眠り始めていた。
 ユウはナミヘイへの苦笑をしまって、説明を続ける。
「空間同士の互換(ごかん)の無い転移を行うと、重複した物質の原子が衝突して、更に中性子の分離が起こって………、つまり、膨大な熱が発生するんだ」
「黒く染まってるのは、黒煙が燃えてるから? あの、青い空間は……、まだ燃えてる状態なの?」
 清宮レイが、不思議そうにユウにきいた。
 ユウは微笑んで、頷(うなず)いた。
「燃え続けるだろうね……。瞬間的に発生した高エネルギーは、そうだな……、うん。まあ、球状の空間内の温度は、数万度。反応点の瞬間温度は、数億度……。この超超超高熱の前には、再生能力も、全くの無力だろうね」
 ビンは無表情で、肩を竦(すく)めた。遠藤さくらの肩から、笑顔で腕を退かしながら言う。
「原子爆弾の爆発の瞬間、落下中心地点付近では、約三千度から、四千度の高熱が発生する……。太陽の表面温度が約六千度、だから、つまり、鉄が溶ける温度が約、千五百度である事を考えると……、今ユウが起こしてみせた現象は、危険すぎるという事だ……」
「だから、言ったろ? とどめが、あるにはあるが、ただ簡単には使えない、てさ」
 ビンは無表情に戻って、また声に出しながら考え始める。
「原子爆弾の、爆発時に出来る火の玉の温度が、確か、中心部で、百万度を超えて、大きさは一秒間で、最大直径二百八十メートルにもなるから……、いや、うん。そうか……。あの元青かった球体状の空間の中は、おそらく、この世で最も危険な状態になってるね」
「さくちゃんのおかげ!」
「えっ!」
 ユウは満面の笑みで、遠藤さくらを抱きしめた……。

       7

 筒井あやめの自宅マンションに集まったのは、このマンションの家主でもあり【略奪者】の能力を使うアンノウン・アビリティ・クラス・ブックの筒井あやめ。【重力の支配者】と【超身体能力】を使うパワー&クエスト・グラビティの賀喜遥香。【召喚者】の能力を使うサモナーの遠藤さくら。遠藤さくらの召喚獣であり【空間転移】を使うイリュージョニストのユウ。同じく召喚獣であり【凍結する表情】を使うウィザードのビン。召喚獣であり、【剛力裸(ゴリラ)】の能力を使うパワーのナミヘイ。召喚獣であり【愛しき呼称】を使うウィザード・ダーリンのアタル。召喚獣であり【笑止】の能力を使うサイキックのコノハ。
 【超身体能力】と【叫び】の能力を操るパワー&シャーターの林瑠奈。【可愛いの支配者】の能力を操るクエスト・プリティの佐藤璃果。【薬剤師】の能力を操るパーメシストの矢久保美緒。【雷撃の支配者】の能力を操るクエスト・サンダーエンペラーの早川聖来。
 【黒の騎士】と【白の魔導士】の能力を司るトランスフォーマーの黒見明香。【言霊士】の能力を司るヒプノティストの弓木奈於。【予言者】の能力を司るプロペットの松尾美佑。【絵空事】の能力を司るパイプドリームの北川悠理。【鼓舞する者】の能力を司るチアガールの柴田柚菜。【夕焼け】の能力を司るパワー・サンセットの清宮レイ。
 そして、今宵から新しく仲間(パーティー)に参加した【暗記】の能力を行使する事が可能なクエスト・ブレイン・メモリゼイションの掛橋沙耶香。同じく今宵からの参加者【完全無敵】の能力を行使する事が可能なスターの田村真佑。同じく、今宵からの参加者【髪士】と【魅了】の能力を行使する事が可能なクエスト・ヘアー&エンチャンテッドの金川紗耶。
 合計16人と召喚獣5人が、筒井あやめの一人で暮らす自宅マンションに集結していた。