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ジャンピングジョーカーフラッシュ

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 ここに今夜勢ぞろいしたヒーロー達の相手となる悪、つまり未来の脅威となる敵の存在が、強大になりつつある為に、声の主が運命の戦士達を早々に集め、ここ、筒井あやめの自宅マンションでの作戦会議を提案したのであった。
 筒井あやめは「グラスでもお皿でも何でも、冷蔵庫もトイレも自由に使って」と皆に申し、賀喜遥香と遠藤さくらの座っているソファに、そっと腰を下ろした。
 あやめは天井を見上げる。
「マスター……、この前の敵、べるふぇ~……なんとか、て人。強かったんですけど」
 声の主は、先ほどから指示を待て、と伝えたきりで、誰の声にもまだ返答しなかった。
 ビンはグラスを手に持ったまま、ガラス製テーブルを挟んであやめの前に立った。
「もしかして、ベルフェゴール、じゃないかな?」
 あやめは表情を反応させる。
「あ、それだ……」
 賀喜遥香は顔を険しくさせる。
「強かったよね、べるふぇなんたら……。あの、変な気分にさせる魔法、もうちょっとでヤバかった……」
 ビンは少しだけ思考してから、眼の前の三人に気持ち大きめの声で囁く。室内には誰かの携帯電話でBGMが流されていた。
「うん、ベルフェゴールは、七つの大罪(たいざい)、だね。さくちゃんや俺達の相手も、名前をアスモデウスと名乗ってた。アスモデウスも、ベルフェゴールも、七つの大罪と呼ばれる代表的な悪魔だ」
 賀喜遥香は、不安そうな表情で、ビンに問う。
「七つの大罪って……、名前が、んもう、ヤバくない? 大罪、て……」
 ビンは深刻な顔つきで説明を始める。ビンの隣に、掛橋沙耶香と金川紗耶が会話に耳を傾けながら近寄ってきていた。
「七つの大罪とは、キリスト教の西方教会、主にカトリック教会における用語で……。ラテン語や英語での意味は、『七つの死に至(いた)る罪』になるんだけど、罪その物というよりも、人間を罪に導く可能性があると見做(みな)されてきた、欲望や感情の事をさすもので、日本のカトリック教会では七つの罪源(ざいげん)と訳してる」
 掛橋沙耶香はビンの横顔を見上げて言う。
「悪の姿形は、その、未来の脅威となる何かが、人間の恐れを表したものだって、マスターが言ってました。欲望とか、感情が悪そのものだとしたら、七つの大罪の悪魔の姿になって現れたのにも納得がいきます……」
 金川紗耶は顔を険しくさせて、グラスを口元にくっつけながら囁く。
「七つの大罪って、何?」
 ビンは、答える。
「七つの大罪とはね……、キリスト教で、人を死に至らしめる七つの欲望の事をいう。傲慢(ごうまん)・貪欲(どんよく)・邪淫(じゃいん)・憤怒(ふんぬ)・貪食(どんしょく)・嫉妬(しっと)・怠惰(たいだ)……。キリスト教の聖典の中で七つの大罪について直接に言及されてはいないんだけど。八つの枢要罪(すうようざい)は厳しさの順序にすると、『暴食(ぼうしょく)』『色欲(しきよく)』『強欲(ごうよく)』『憂鬱(ゆううつ)』『憤怒(ふんぬ)』『虚飾(きょしょく)』『怠惰(たいだ)』『傲慢(ごうまん)』である。とされるけどね……、うん」
 ビンは聞き入っている美少女達を見回しながら、また詳しく説明を始める。角度の違う側のソファに、田村真佑と佐藤璃果が集まってきていた。
「ここで説明しておきたいのは、『七つの大罪』として始まる前の、四世紀エジプトの聖職者が定めた『八つの枢要罪(すうようざい)』においてなんだけど、『飽食(ほうしょく)』『色欲(しきよく)』『強欲(ごうよく)』『憂鬱(ゆううつ)』『憤怒(ふんぬ)』『怠惰(たいだ)』『虚飾(きょしょく)』『傲慢(ごうまん)』が、『厳しさの順序によると』という但(ただ)し書きの付いた順序とされてるけどね。でもね、六世紀後半にグレゴリウス1世が定めたものでは、順序が大幅に入れ替わってるんだ」
 ユウとナミヘイが遠藤さくらの隣の座席をかけて喧嘩を始めていた。
 ビンは気にせずに続ける。皆もさほど気にしていなかった。
「俗にいう『七つの大罪』の罪の重さはね、『傲慢(ごうまん)』、『嫉妬(しっと)』、『憤怒(ふんぬ)』、『怠惰(たいだ)』、『強欲(ごうよく)』、『飽食(ほうしょく)』、『色欲(しきよく)』の順序となってて、ダンテの神曲においても、これが煉獄(れんごく)の下層からの、罪が重い順番として書かれてる。
でも、不思議だね。『八つの枢要罪(すうようざい)』と『七つの大罪』とでは、順序が正反対といえるぐらいに大きく異なるのはなぜだろうか……。『厳しさの順序によると』とはね、とても稚拙(ちせつ)で曖昧(あいまい)な表現であり、厳しさが重い順なのか、軽い順なのか、判然としない……。
ここで、『八つの枢要罪(すうようざい)』の順序を逆転させれば『七つの大罪』の順序に近づくんだけど、それでも相違がある。
ここでの相違は、決定した者の環境や気質、モラルに左右されていると考えていいと思う。決定した者が、乗り越える事が困難だと捉えているものを、より重罪として、自分達の戒(いまし)めとしてるのかもしれない、という意図だね。
あるいは、環境面からなら……、食べ物が欠乏(けつぼう)している時代の『自分だけは飽食』といったかたちは、非常に重い罪となるのかもしれない。餓死者が出てる国家での、支配者の肥満などがそれにあたるだろうね。
それなら、個人レベルでは、現在社会で深刻な順に修正して考えてもいい事なのかもしれない。もちろん、あくまでも個人の見解で、という一種のディスカッション的な感覚でならね。七つの大罪の事は、理解できたかな?」
ソファの美少女達は、綺麗に整った顔で皆、きょとん――としている。ビンは咳払いをした。
「どうやら俺は説明が下手らしい。マスター、聞いてましたか? 俺の声が届くなら、今すぐ七つの大罪について説明を望みます。敵として、アスモデウスとベルフェゴールがその姿をして現れたからです」
 ビンはそう言うと、「俺にマスターの声は聞こえないので」と、キッチンの方へと去っていった。

――●▲■ふむ。なかなかいい説明だったね。いい線はいってたよ■▲●――

 あやめは斜め上を見上げる。
 賀喜遥香は天井に顔をしかめた。その場にいる皆も、離れた場所で雑談していた皆も、天井の方を見上げていた。
「マスター! どこ行ってたん? 七つの大罪って何よあれ……。ちょと強すぎとちゃう? これからあんなんが出てくるわけぇ?」

――●▲■今わかっている事は、すでに七つの大罪の中から、その姿を借りた悪が二体も出現したという事と、次の相手がまた七つの大罪かもしれない、という事だ。しかも、次の相手の中には、神話に登場する邪神も含まれそうなんだよ。困ったねえ■▲●――

「神話って……。邪神って、一応、神様なんですよねえ?」
 遠藤さくらは、その表情を驚かせながら天井に囁いた。
 林瑠奈と矢久保美緒が、ジュースの入ったグラスを手に、多角的に置いてある空いているソファに座った。

――●▲■神だ。けどね、君達を突き動かしている存在も、神や仏といった大いなるモノだ。負けるわけにはいかない■▲●――