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ジャンピングジョーカーフラッシュ

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「んな事言ったって、勝てるかどうか、そんなんわからん勝負なんやろ? 今のところ、ギリセーフ、ちゅう勝ち方してるだけやぞ、うちら」
 林瑠奈はそう言って、ジュースを飲んだ。

――●▲■悪魔の誕生を話そう。七つの大罪とはね■▲●――

「あーシカトしたっこのアホマスターっ!」
「ほんとシカトだけはすんなっ‼」
 賀喜遥香と林瑠奈は騒ぎ始める。皆は声の主に耳を傾けていた。

――●▲■16世紀の版画家であるハンス・ブルクマイアーが、初めて大罪と悪魔の関係を表現したようだけど、中世では七つの大罪を、動物に例えて描く人も多くいたようだね■▲●――

「聞いてんのかこらあ! アホって言ったから怒ってんの? ねえ、ねえってばあ!」
「シカトだけはしたあかんっ‼」
 賀喜遥香と林瑠奈は叫んでいる。

――●▲■これから説明する七つの大罪の悪魔達は、身体に動物が刻印されているんだけどね、動物の刻印は、どうやらここから発想を得たと考えて良いかもね。まずは傲慢(ごうまん)・プライドと呼ばれる能力者【ルシファー】だ。ルシファーは元は大天使であり、全天使の長だったんだけどね、土塊から創られたアダムとイブに仕えよという神の命令に不満を感じ、反発したのがきっかけで、神と対立し、天界を追放され、神の敵対者となったとされている。
被造物の中で、最高の能力と地位と寵愛(ちょうあい)を神から受け取っていた為に、自分が神に成り代われると傲慢になり、神に反逆し、堕天したという説がよく言われている説だね。
ルシファーは、元々はラテン語の『明けの明星』という意味で、『光を齎(もたら)す者』という悪魔・堕天使の名前だ。また、魔王サタンと同一であるとされていて、サタンの堕落前の天使を指す呼称としても用いられてるよ。
ルシファーは天使の中で最も美しく、最高位の天使だったんだけど、創造主である神に対して反逆を起こしたらダメだよね。そうして堕天使になったんだから、愚かだ。けど、彼は今世紀でも美しく描かれる事がほとんどだ。悪魔にも魅力はある、とらわれてはいけないよ。属する生物は、グリフォン、百獣の王(ライオン)、孔雀(くじゃく)、蝙蝠(こうもり)だ■▲●――

 あやめは冷蔵庫から取ってきたカヌレをガラス製のテーブルに置き、リモコンでクーラーの風の設定を23度から21度にした。
 あやめは口に咥(くわ)えていたスプーンをカヌレの上に置いて、天井を見上げる。
「聞いた事ある……。え、そんなのと、私達やるんですか? ルシファーとか、…ラスボスじゃないのてか、ラスボスですら出てこないでしょ、普通………」
 矢久保美緒は怯えながら囁く。
「え、説明されてるって事は、そのルシファーって悪魔と、私らやるって事?」
 林瑠奈は、矢久保美緒の肩を抱く。
「落ち着いて美緒ちゃん……。だいじょぶ…、守るから……」
「えー絶対敵わないよだって最高の大天使だった人でしょう!!」
「美緒ちゃん、おちついて! 大丈夫だから!」
 騒ぎ始めた二人を傍観していた佐藤璃果は、ガラス製のテーブルに視線を落として、弱く囁く。
「邪神に、七つの大罪……。どうして、私達の夢はそんなに代償が重いの?」

――●▲■それは、君らの見た夢が偉大であったからだ。そして、夢を叶えるだけの潜在能力が、君達には存在するからだよ■▲●――

 佐藤璃果は淑(しと)やかに囁く。
「私、夢なんてまだ見てないよ」
 林瑠奈も、頷(うなず)いていた。
「私もだってマスター。美緒ちゃんは?」
「私も……、夢? てか……想像した事、ぐらいは、あるけど、そんな……」
 賀喜遥香は顔を怒らせて天井に言う。
「イラストレーターになるのがそんなに重大な罪なんかっ! 漫画アニメ描くのに、悪魔と一戦やんなきゃならないのが納得いかん、何やねん! 夢ってやつは!」
 あやめは囁く。
「災害は消す。殺意も何もかも、それが事件に発展する悪なら、排除する……。でも、だったら最初に言うべきじゃない? とてつもない相手と戦争するお仕事だって。能力は超重要だから慎重に選べって」
 その場にいた皆がその意見に賛成した。

――●▲■次の悪魔はね■▲●――

「なんっでシカトすんねん天然かお前はっ! アホぉ!」
「シッカトだけは、すんなってば!!」

――●▲■殺傷だけに長けた能力だけが集まってもダメなんだ。脅威となる大敵と一戦やるには、夢に溢れた、個性的な能力が必要になるんだよ。最後まで、僕を信じて。僕は君達を信じ、君達を選んだマスターだ。悪に負けるわけがないよ■▲●――

 あやめは言う。
「負けかけたよ。何度も……。べるふぇ、なんとかとやった時は、私は能力すら使えない状態の時があった……」
 矢久保美緒はあやめの顔を一瞥して言う。
「あ、私もだ……」
 林瑠奈も、悔しそうに囁く。
「うちの【叫び】も通じん相手やったな、そういえば………」

――●▲■だから集まった――。ここにいる君達は、選ばれし勇士達、夢を叶える為に悪を滅ぼしていくヒーローだ! その力を集結させて倒せないモノなんていやしないよ。たぶん。力を合わせて、己の能力を最大限に発揮するんだ!■▲●――

 賀喜遥香は天井を指差して叫ぶ。
「あ~今、たぶん、て言った~~っ‼」
 林瑠奈も天井に叫ぶ。
「たぶん、のとこだけ早口やったな~今~~っ‼」

――●▲■七つの大罪の説明からする? それとも、神話の邪神の説明からする? どちらも次の相手に確定する可能性が大いにある■▲●――

 賀喜遥香は溜息を漏らす。
「このアホ、ま~たシカトしたよ……」
「しばいたろか、んっとに……。シカトだっっけは、すんな!」
 林瑠奈は興奮気味に叫んだ。
 あやめはカヌレを口の中で溶かしながら、クーラーの室内温度設定を、21度から、22度にした。

――●▲■君達がすでに勝利している七つの大罪の恐れであり、七つの大罪の姿をした悪魔、スロースの能力を使う【ベルフェゴール】。彼は怠惰・好色を司る悪魔だ。ベルフェゴールという言葉は『人間(女性)嫌い』を示唆(しさ)する言葉としても使われているね。さて、このベルフェゴール、疫病(えきびょう)を齎(もたら)して2万4千もの人々の命を奪ったとする記述(きじゅつ)も残されてる。元々は古代神として崇められていたが、キリスト教を浸透させる時、1新教説を用いた事によって排除され、悪魔とされてしまった■▲●――

 あやめは天井に向けて言う。
「じゃあ、もう、元神様、倒してはいるんだ?」

――●▲■うん。中世ヨーロッパの伝説によれば、悪魔界において『幸福な結婚は存在するのか?』という議論が起こり、それを確かめる為にベルフェゴールが人間界へ降りる事になったらしい■▲●――

「幸福な結婚?」賀喜遥香は眉を顰める。
「真面目か!」林瑠奈は突っ込みを入れた。
「悪魔にも、結婚って概念が存在するんだ」佐藤璃果は呟いた。
 あやめはスプーンを口から出して、綺麗な真顔で天井に言う。
「なんか強かったよ、べる、なんとか……。悠理ちゃんのなんか拒否する能力なかったら全滅、て感じだった……」
 北川悠理は微笑む。
「私の能力は【絵空事】です。事象、現象を拒絶します」