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――●▲■ベルフェゴールは女性に性的で不道徳な心を芽生えさせる力を持っている為、ゆえに、女性を信じていない。女性を信じられないベルフェゴールは、人間界を観察した結果、『幸福な結婚は存在しない』という結論を導いたそうだよ。属する生物は、不死鳥(フェニックス)、熊、牛、驢馬(ろば)だ■▲●――

「ああロバいた！」と賀喜遥香。」
「ロバいたなー！」と林瑠奈。
「いたね、ロバ……」とあやめ。
　清宮レイは今までベランダの窓越しに夜景を見て話を聞いていたが、空いているソファに腰を下ろし、天井を強く見つめる。
「アスモデ、なんとか……。強すぎましたよ。最後はユウ君の起こした核爆発(かくばくはつ)で倒せたけど……。あんなの、何体も出てきたら、私の能力じゃどうにもこうにも対処できない！」
　ソファの囲うスペースの近くにて立食していた夕が説明する。
「核融合(かくゆうごう)、というか、ようは核(かく)だよね。あれは俺がバスタードとかを呼んでたから、現象においての科学の重要性を強く信じてたから引き起こせたもので……。実は俺自身、あの現象については少し理論不足なんだ。でも、それで分かった事はある。イメージだ……。能力に応じて強くイメージされたものは、強い攻撃に変わる」

――●▲■いや見てたけど、理論的にも見事に核融合爆発を引き起こしてたよ■▲●――

　皆が夕を見る。
「ん？」
　ユウに声の主の声は届いていない。

――●▲■色欲、ラストと呼ばれる能力者が【アスモデウス】だ。ユダヤ教徒キリスト教に登場する悪魔の１人だよ。語源はゾロアスター教でね、それがギリシャ語やヘブライ語になって広まったんだ。激怒と情欲の魔人であった事から、『色欲』を司るとされてるよ。そして、悪魔になる以前は、智天使だったとされているよ。ほらね、このように、みんな悪魔になる前が存在するんだ。ヒーローはそんな悪の誘惑や誘発やそれらのきっかけなんかを、絶対に見逃してはいけない。世に悪を増やしてはいけないんだよ。それは排除するべき脅威だ！ 行け！ 悪の野望を打ち砕くんだ！ 僕の正義のヒーロー達！■▲●――

　　　　　　　８

――●▲■話に戻ろうね。アスモデウスの姿容(すがたかたち)は、牛・人間・羊の顔と、鵞鳥(がちょう)の脚、毒蛇の尻尾(しっぽ)を持ち、手には軍旗(ぐんき)と槍(やり)を持って地獄の蜥蜴(とかげ)に跨(またが)り、口から火を吐くというよ。魔導書『ゴエディア』には序列３２番の王と記されているね。尚(なお)、悪魔の９段階には諸説あるようだがね。出会ったときに非礼な態度を取らず、丁寧(ていねい)に対応すれば、天文学や幾何学(きかがく)などの知識を与えてくれるという一面もある。属した生物は、サキュバス、山羊(やぎ)、蠍(さそり)、兎(うさぎ)だ■▲●――

　遠藤さくらは華奢(きゃしゃ)に囁く。
「ほんと、怖かった………」
　清宮レイは天井を見上げる。
「敵にとどめを刺したユウ君の核爆発だって、敵が幽閉した異次元空間みたなのを造らなければ、私達まで爆発に巻き込まれちゃうから核は使えなかったんですよ？」
　ユウが補足する。
「放射能も出ちゃってるからね……。空間に閉じ込める障壁か何かがないと、全く使用できんのよ。ごめんね」
　田村真佑はふと天井を見上げて囁く。
「マスター……。えと、私と、掛橋さんと、金川さんが倒した相手には、七つの大罪はいなかったの？」
　金川紗耶と掛橋沙耶香が天井を見上げる……。

――●▲■君達が打ち滅ぼしたのは、ばい菌と、事故のきっかけとなる安易(あんい)と、山火事と特定の病だ。風邪(かぜ)、っていうのかな■▲●――

「山火事って、あのでっかい燃えてる奴だ……。ちょ～う、強かったよね？」
　田村真佑が二人に言った。
　金川紗耶は反応する。
「強かったよ～～、くじけそうになったもぉん……」
　掛橋沙耶香は薄い笑みを浮かべる。
「風邪もあれでしょ？ あれだよねえ？ あの、何百人にも分裂してく奴……。あ、あればい菌なのかなあ？ えでも手強かったよねえ？」
　田村真佑は顔を険しくさせる。
「あ～～強かった」
　金川紗耶も同じような顔で思い出す。
「てか、やっとだったよね？ 倒せたの……」
　三人を黙ったまま見つめていたあやめは、ふいに脳裏に走った声の主の話に意識を集中させる。

――●▲■次に紹介しておくのは、エンビィと呼ばれる能力者【レヴィアタン】だ。このレヴィアタンとは、旧約聖書に出てくる海の中の巨大な海獣の事だけどね、悪魔として見られる事もあるんだ。レヴィアタン、ではなく、リヴァイアサン、と呼ばれる事もしばしばだね。悪魔の９階級ではサタン、ベルゼブブに次ぐ３位とされ、嫉妬を司る悪魔とされているよ。主に悪魔と見なされるようになったのは、中世以降の事。悪魔祓(あくまばら)いが通用しない怪物とされ、ひとに憑りついた際には、追い払うのが非常に困難と言われている。特に女性に憑りつく傾向があるみたいだね。属する生物は、人魚(マーメイド)、蛇(へび)、犬、土竜(もぐら)だ。このレヴィアタンが最強の生物とされる説もしばしばある■▲●――

　あやめはジュースのおかわりを取りに、無言でソファを立ち上がり、冷蔵庫へと向かった。
「あ、冷蔵庫、勝手に開けてます……、どうも」
　冷蔵庫の前には、清宮レイがいた。彼女は飲み物を探していた。
　あやめはてきぱきと飲み物の在りかを教える。二人はグラスとジュースを手に持ち、キッチンのカウンター席に座った。
「あやめちゃんって、可愛いよね？」
「レイちゃん、痩せたぁ？」
「ふっ……。それほ～んとに言ってる？」
「え、ほんと～……。なんか、綺麗になったよ」
「じゃあ前はどうだったんだって話だけど。てかこの前会ったばっかじゃん」
「いや～、違う。運命だから、前世で会ってる、絶対」

――●▲■次は強欲、グリードと呼ばれる能力を持つ【マモン】だ。マモンは、元々は旧約聖書における富という意味や、アラビア文献において不正な財を表していう言葉だった。そこから神や悪魔と見做(みな)されるようになった為、『富』や『貪欲』の象徴とされるようになったのである。金銀財宝に対して非常に貪欲で、人間を誘惑して、自(みずか)らと同じ強欲にするというよ。人間の金銭欲を満たしてくれるけれど、その代償に命を奪うという。そもそも彼から受け取った金銀の類は、しばらくすると馬糞(ばふん)や灰に変わるので全く無意味だね。悪魔の９階級では最下位であり、あまり力は無いとされている。一方で『富』の象徴というだけあり、人間に地面から金銀を掘り出す事を教えたと言われているよ。属する生物は、ゴブリン、狐、針鼠(はりねずみ)、猫だ■▲●――

　弓木奈於は「失礼するっす」と冷凍庫を開いて、アイスクリームを取り出した。松尾美佑も冷凍庫を覗き込む……。
　アイスクリームを手に持った二人は、キッチンの流し台を背にするように立ったまま腰を預けて、アイスクリームを食べ始めた。
　弓木奈於は言う。