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ジャンピングジョーカーフラッシュ

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 ユウは引いた表情を浮かべてから、優しく苦笑した。
 ビンが冷静に言う。
「俺達の世界で流行ってるアイドルの名前だよ」
「そ。俺達、好きなんだ」
 ユウはにっこりと微笑んだ。ビンは無表情で言う。
「ニャルラトホテプが相手だと言われたの? だとすると、かなり厄介だよ……。ニャルラトホテプは完全に小説で生み出された空想の産物なんだけどね、過去には、科学者として核開発に携わったという説もある……。例えばそれは、たぶん、核開発に携わった人の誰かが、自分をニャルラトホテプと同一視してるのか、己の能力をニャルラトホテプの化身と見てるのか、または、クトゥルフ神話の愛読者で、ニャルラトホテプを信仰してる可能性がある。核開発という高技術に携わるほどの頭脳の持ち主が崇拝者だとすると、ニャルラトホテプの能力も非常に高いと位置づけするしかない」
 筒井あやめと清宮レイ、そして弓木奈於と松尾美佑が、先ほどまで居たキッチンから、リビングにまで戻り、ソファ近くの絨毯(じゅうたん)の上に座った。
 ビンは厳しい顔つきでメガネをぐい、と上げてから言う。
「クトゥルフ神話の作中では、逆に、人類史の神話は太古からのクトゥルフ神話の派生であるという事になってる。とにかく、侮れない事は確かだよ。マスター、聞こえますか? 詳しい説明があるなら、どうぞ進めて下さい」

――●▲■ビン君、了解した。うん。ニャルラトホテプは、千の顔、千の容(かたち)を持っていると言われ、一定の姿は無いが、本来の姿は肉塊のような頭部を持ち、再現なく伸縮する触手に鉤爪(かぎづめ)、といった容姿をしているらしい。基本的に、本質的には人間の及ばない超常的存在の為、ニャルラトホテプの意図や、目的を把握(はあく)する事は不可能に近いらしい。ちなみに、人間っぽい姿をしたニャルラトホテプは人間の力によって殺す事が出来るらしい。そしてね、死ぬその際に、真の自分の姿を、自分を殺した相手に見せてから死んでいくらしいよ■▲●――

 筒井あやめは、ニャルラトホテプを想像しようとしたが、思いとどまった。弱点は何だろう、と考え始める……。

――●▲■続いてクトゥルフ神話の『外なる神』の一柱である【ヨグ・ソトース】だ。ヨグ・ソトースは、過去、現在、未来、といった時間軸(じかんじく)はもちろんの事、次元すら超越してしまうほどの全能の邪神だね。そんな為か、多くの登場人物がヨグ・ソトースとの接触を図(はか)るんだけど、悉(ことごと)く失敗に終わってる。また、自身を崇拝する者には異次元を旅する能力を与えたり、他の次元を覗き見する能力を授けたという説がある。次元の裂け目に存在しているヨグ・ソトースは、決まった姿を持たない。まあ、神話の神や悪魔、それに怪物や幻獣の典型だね。まあ、ヨグ・ソトースにもその姿による一説があってね、虹色に輝く球体の集合体だと言われていて、その大きさは100メートルから1キロにまでなるそうだよ■▲●――

 賀喜遥香は顔をしかめる。
「なるそうだよ、て………」
 筒井あやめは、上品に頬を手で触る。
「1キロって……、でかくない?」

――●▲■ちなみに、ヨグ・ソトースに触れると、肉体が腐食してぼろぼろになるみたいだよ■▲●――

「みたいだよ、て………」
 賀喜遥香は呆れて天井を一瞥した。
 筒井あやめは、もう片方の手でも、頬に触る。
「お肌に悪すぎない? その相手……。正直嫌なんですけど……」
 遠藤さくらは、自分を見つめる五人の召喚獣達に、一度だけ強く頷(うなず)く。
 佐藤璃果は呟く。
「絶対勝ってやる……、負けるもんか………」
 林瑠奈は小指で耳をほじりながら、無表情を浮かべた。
「勝つか負けるか、生きるか死ぬか、なわけか………。うちも、簡単に夢叶うとは思ってへんよ。命懸けるだけの夢見てほしいわな、今後の自分に」
筒井あやめは、緊迫した表情で、今日何個目かわからないカヌレを口に咥(くわ)えた。隣に座る、清宮レイと強く手を繋ぎ合いながら。

       9

 それは、皮膚の色も眼の色も異なる数多の国々の人間の顔であり、子供であり、大人であり、老人であった――。一定の顔を持たぬその邪悪なる神は、千の顔、千の容(かたち)に変化し続けながら、筒井あやめたちに、再現なく伸縮する蛇の胴体のような触手で襲いかかってくる。
 筒井あやめは「いでよ」と唱える……。次の瞬間、開かれた左手の上に〈紫色の背表紙をした本〉が出現した。

――〇△□あやめ君、レイ君、沙耶香君の三人は、邪神ニャルラトホテプの担当だ。破壊的な思想を持つ強大な相手になる。覚悟を決めて戦闘にあたって欲しい。もしも敵に勝利できて、力がまだ持つようならば、すぐに他の現場へ向かったヒーロー達のカバーに向かってくれ。ニャルラトホテプは別名滅ぼす者とも呼ばれる。それはこの世界で常にヒーロー達の夢を奪い去っていったからだ。容赦はいらない、とどめをさせ戦士達!□△〇――

 溶けるように固まるようにその容を変形していくニャルラトホテプを強く睨みつけながら、あやめは邪神の次なる攻撃に身構える。
 清宮レイは呟く――。
「笑顔の太陽が落ちる時、そこにお前は立っていられない!」
 清宮レイのパワー系最高位【夕焼け】の能力が発動する――。
「おりゃああああああ!!」
 発光する身体を全速力で走らせて、清宮レイは振り上げた右の拳を、超超加速させてニャルラトホテプへと何度も叩きつけていく。
 掛橋沙耶香はニャルラトホテプを睨みつけながら、囁く……。
「笑顔の太陽が落ちる時……、そこにお前は、立っていられない!」
 掛橋沙耶香の【暗記】の能力が発動して、清宮レイの【夕焼け】を一定時間、完全にコピーした状態になる。
「うわああああああーーっ!!」
 掛橋沙耶香は全速力で走り、加速中に高く跳び上がって、やがて万有引力によって落下する力を応用して右脚のかかとをニャルラトホテプの変形し続ける脳天に叩き込んだ――。

「私は汝(なんじ)を知っている。理解している。さあ、真理(しんり)を与えよう――」

 あやめは叫ぶ――。
「耳を貸さないで二人ともっ、ニャルホテは人の心を惑(まど)わすからっ!」

――〇△□幾人ものヒーローがニャルラトホテプの洗脳術に思想をひっくり返されたか……。こちらも定かではない情報なんだけど、とにかくニャルラトホテプの呼び込みや誘惑に満ち満ちた理解の言葉なんかには惑わされちゃいけないよ。ニャルラトホテプは君達を滅ぼす事こそ真理だと信じる悪そのものなのだから□△〇――

「この世の真理を悟った後で、尚も私に否と言えるのならば、汝は私の理解者に等しい。さあ、この世の真実を教えよう――」

 筒井あやめは叫ぶ。
「どれもこの世の真実だ馬鹿っ、嘘もほんともどうせ一度はそこに確かに存在した真実でしょうがっ! じゃあ何が真実で何が嘘なのっ!」
「あやめちゃん取り合っちゃダメぇ!」
「無視してっ!」
 清宮レイと掛橋沙耶香の咄嗟の呼び声に、筒井あやめははっとなった――。たった今自分は、己の首を両手で絞めかけていた……。
「だああああああーーっ!! ハァ、…ハァ!!」