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ジャンピングジョーカーフラッシュ

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更にね、バアル・ゼブルを信仰していたカナン地方では、蠅などの羽虫はカナン人の魂を運んでいると信じられていた。この為、蠅を信仰対象とする民族の神、という意味で、『蠅の王』と呼ばれた可能性もあるんだよね。
こうして作られたバアル・ゼブブという名前が、時代と共に変化していき、ベルゼブブという名前に変わり、キリスト教を代表する悪魔となったわけだけど……。
『マタイの福音書』では、悪魔祓(あくまばら)いをしたイエスが、ユダヤ教徒に『悪霊の頭(かしら)ベルゼブブの力を使った』と非難される場面がある。このようにベルゼブブは、聖書でも悪魔の首領と認められているんだけど、ベルゼブブが最高位の悪魔だと考える者が特に多かったのは、1世紀から3世紀頃と、15世紀から17世紀頃だね。
後者の時代は、悪魔と契約した魔女を裁判で明らかにする『魔女狩り』や、人間が悪魔に憑りつかれて奇行をする『悪魔憑き』が恐れられた時代でもあった。その為ヨーロッパでは、ベルゼブブに纏わる魔女や悪魔憑きの事件が多発していたんだ。
魔女を断罪した裁判の記録によれば、魔女は踊りながらベルゼブブの名前を唱え、イエスを否定する儀式を行ったとある。他にも、ベルゼブブ本人が魔女と乱交したなどの記録が無数に残されており、ベルゼブブは『魔女を支配する悪魔』とも呼ばれていたんだよ。
ベルゼブブが人間に憑りついた事例も多く、中には2千人の信徒が見守る前で、悪魔祓(あくまばら)い師がベルゼブブを祓(はら)った記録も残されている。所謂(いわゆる)『ランの奇跡』だね。ベルゼブブを祓った際に、ランという女性が宙に浮くという奇跡が起こったんだ。のちの『エクソシスト』といったオカルト映画なんかにも強く影響している史実だ。
このように、この時代のキリスト教徒にとってベルゼブブは、とても身近で、恐ろしい悪魔だったわけだね。これが偉大なる蠅の王にして、地獄の副王、ベルゼブブの実世での記録だ。ベルゼブブは多彩な数々の姿で記録には登場している。かのフランスの英雄、ジャンヌ・ダルクと共に戦い、のちに処刑される事となったジル・ド・レも、ベルゼブブが豹(ひょう)に化けるのを見たと証言している。有名な悪魔だけにね、沢山の逸話(いつわ)が残されてる。それが今の奴の力の根源だろう……。とにかく、できるだけねばって、全員が集結する事が勝利の条件になる。死ぬんじゃないよ、僕のヒーロー達……□△〇――

「ハァ、ハァ、髪の導きを!」
 金川紗耶は【髪士】の能力を発動して、硬質化された頭髪を無限に伸ばして岩石の転がる岩肌に髪のサーベルを突き刺した。
「貫(つらぬ)け髪の毛達っ! 髪様っ‼」
 金川紗耶は髪を自在に操る。ベルゼブブの座る台座に放り出されるように組まれた毛むくじゃらの脚の下――。その丁度(ちょうど)真下の岩肌から、何百万本という針のように鋭い髪のサーベルが飛び出してきた――。
 鮮血が飛び、ベルゼブブの片脚が吹き飛んだ。
「使いやすい機関銃よ出て来い!」
 弓木奈於はその手に出現した機関銃を構え、台座に座る羊の角(つの)を持つ雄牛(おうし)の顔をしたベルゼブブへと銃弾を乱射する。
 岩石がごろつく山頂にて台座についたベルゼブブの身体は、大きく黒い羽根を折り畳んでしまっており、鋭い爪の生えた脚には毛むくじゃらの黒い毛皮があり、それは胸の下まで肌を埋めるように生えている。両腕は台座の肘置きに両方あり、爪の長い人のような腕をしていた。
 金川紗耶は貫通した大地の地下を通して髪の毛を己の元へと引き戻した。
「脚、ぶっ飛んだやったあっ‼ 当たったよ! 当たった!」
「ううううう、当たらないっ!!」
 弓木奈於がぽいっと機関銃を捨てると、機関銃は空気に沈むようにして消えていった。
「美佑ちゃん!」
「はい! 神はサイコロを振らない!」
 松尾美佑は【予言者】の能力を発動して、十秒先の未来を予知する。
「大丈夫まだ何もしてこない!」
 黒見明香は漆黒の鎧を音立てながら、台座に座るベルゼブブへと突進していく。
「斬らせてもらいますっ!!」
黒見明香はベルゼブブの右腕の指先を切り落とした。弓木奈於の「黒見さん下がって下さい!」という弓木奈於の声に、そのまま黒見明香は後退する。
 弓木奈於は〈言霊〉の能力を行使する。
「軽いけど本物の威力のバズーカ砲っ出て来い!!」
 弓木奈於は右肩の上に出現したバズーカ砲を、狙いをつけて発射する。白い加速雲は一直線にベルゼブブへと向かい、激突して火薬が爆発した。
「当たった!」
 四人は、息を呑んで、台座に座ったままのベルゼブブを見つめる……。
 斬り飛ばされた片脚と、切れた右手の数本の指先と、抉(えぐ)れた鎖骨(さこつ)の剝き出しになった筋肉組織に、蠅(はえ)の群れが集(たか)って復元していく。
 金川紗耶は強く溜息をはく。
「はあ~、んもう! なんにも効かないじゃん何回攻撃してもっ!」
 弓木奈於は気を一新して、〈言霊〉の能力を行使する。
「私は空を自由に飛べる! うわっと……、おおう。とー!」
 空へと浮き上がった弓木奈於は、ベルゼブブの上空で〈言霊〉を行使する。
「出て来い! 段ボール箱いっぱいの手榴弾!!」
 構えた両手に出現した段ボール箱をひっくり返して、バラバラと空から大量の手榴弾をベルゼブブへと落とした。
 松尾美佑は遠目にそれを見守りながら叫ぶ。
「手榴弾って、カチャってなんかひっぱってから投げないと爆発しなくない!?」
 弓木奈於は上空で頭を抱える。
「あそっかーやっちまったー!!」
 弓木奈於は表情を強気なものへと変える。
「じゃあ!」
 弓木奈於は〈言霊〉の能力を行使する。
「ベルゼブブの近くにいくと、えと、自動的に大爆発する特大の時限爆弾!!」
 弓木奈於は、出現し、そのままベルゼブブの頭部へと向かって落ちていった大型の時限爆弾を見下ろして激しく叫ぶ――。
「大量の手榴弾ごと粉々になっちゃえーーっ!!」
 大型の時限爆弾は、不敵な笑みを浮かべるベルゼブブの脚元に散らかっている大量の手榴弾を巻き込んで大爆発を巻き起こした……。
 金川紗耶は激しい爆風を片腕で防ぎながら、ベルゼブブの存在していた方の煙幕を強烈に見つめる。
「これでも、生きてられたら………」
 弓木奈於は、三人の元へと着地し、松尾美佑を素早く一瞥して言う。
「美佑ちゃん未来予知……」
「おけ! 神はサイコロを振らない!」
 松尾美佑は【予言者】の能力で十秒先の未来を予知した。
「ダメっ! 効いてないっ!! 蠅が集まってきてまた復活しちゃう!!」
 黒見明香は煙幕の中のベルゼブブを睨みつけ、剣をかかげて走り始める。
「誰かがやらなきゃ……」
 弓木奈於は〈言霊〉の能力を行使する。
「黒見さんの剣は世界最強の切れ味!! 闇を斬り裂く聖なる剣っ!!」
 煙幕に飛び込んでいって斬りかかる黒見明香――。

『この刃物は少し邪魔だな』

 バキン――と、煙幕の中で音を立てて真っ二つに割れる剣……。黒見明香は悔しがりながら一時撤退する。