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ジャンピングジョーカーフラッシュ

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 何処(どこ)からともなく集(たか)った蠅(はえ)の集団がベルゼブブと台座を形成しながら囁く……。

『神託中(しんたくちゅう)は俺も動けない。だが――、お前等も動けぬ事には等しい。親しく言葉を交わそうじゃないか……』

 賀喜遥香は怒って叫ぶ。
「おんまえっ、今の技の名前『悪魔のささやき』やったやないかぁっ! 誰が悪魔と言葉交わして契約するかアホっ‼」

『神託(しんたく)、とは即(すなわ)ち、神の御言葉(みことば)であり、恐れ多くも、俺でさえ神の陰(かげ)に存在する概念(がいねん)の一つに過ぎぬ。その神の御言葉の力を借り、今、お前等の身動きを止めてみせている。これは神託であり、奇跡の力だ。契約ではない――』

「それが悪魔のささやきとちゃうんかい!」
 早川聖来はベルゼブブに背中を向けたままで叫んだ。
「うまい事言ってはい、けいやく! みたいなんとちゃうんか‼ 悪魔ぁ‼」

 雄牛(おうし)の頭と羊の角(つの)を持つ黒き毛皮の悪魔の姿が、悪魔王の台座に座る堂々とした態度で復活した。

『お前等、悪を滅ぼす夢の戦士達の契約者は神や仏だ。この神託は、邪悪から一時的に神の力により、悪を滅ぼす夢の戦士達を守っている事にも成る……。紛れもなく、神の力だよ』

 賀喜遥香は苛(いら)つく。
「お前も動けないんじゃ、っんも、何がしたいねん!」
 弓木奈於は言う。
「そうだそうだー! 何が目的だー! ベルゼブブブブ~っ!」
 早川聖来は呟く。
「はあ、後見えへんの怖い………。解いてえ‼」

『現時点でのお前等の力では、俺を滅ぼす事はおろか、俺の配下の悪魔でさえ滅ぼせぬだろう。だから、待つと云っている。お前らの本当に力を発揮できるその瞬間を……。それまで、語ろうじゃないか、英雄(ヒーロー)達よ――」

 十七分後――。

 林瑠奈は顔を歪めて、奇妙な周囲の様子を観察する。
「ん…と……。どういう状況ですか、今?」
 佐藤璃果も周辺の様子と、ヒーロー達、悪魔の、それぞれをじっくりと鋭い眼つきで観察している。
「何、これ……」
 矢久保美緒は遠方に悍(おぞ)ましいベルゼブブの姿を発見して、何もなき空間に平手打ちしたが、何度試してみても、手には平手打ちの感触が伝わらなかった。
「えっ、えっ、能力が使えないんですけどっ‼ どゆ事これえ!!」
 北川悠理は、遠目にベルゼブブを目視で確認し、身体中に精神力の力を漲(みなぎ)らせる。
「六メートル…、七メートル……、ぐらいだね、意外と小さいんだ……。たぶん、六メートル六十六センチだ………」
 駆けつけた林瑠奈達、四人のヒーローは、その方向へと急ぎ脚で近づいた。金川紗耶達三人のヒーロー達がいるその場に足を踏み入れた、その途端――。林瑠奈達四人のヒーローも身動きが取れなくなった。
 林瑠奈はうろたえる。
「えっ! 何で動かないのっ、悪魔の罠っ? 何で教えてくれないのみんな!」
 田村真佑はベルゼブブの方を見つめた形ののままで、林瑠奈に答える。
「この神託の秘密において、何もしゃべれなくなるみたい……。言おうとしたら、口さえ動かなかった……」
 林瑠奈は激しく表情を歪める。
「しんたくぅ!?」
 田村真佑は、林瑠奈と佐藤璃果と矢久保美緒と北川悠理にも、神聖なる思いの力でベルゼブブに攻撃を加えないと、何も効果が無いという戦果(せんか)を伝えた。
 更なる時が経過する――。
 賀喜遥香はふてくされた顔で、ベルゼブブに答える。
「なんでお前に私のタイプ教えなあかんねん!!」

『理想とは、己(おの)が心火(しんか)が求む己(おのれ)と同じ色をした魂(たましい)の証……。笑えるじゃないか、俺は例え塵(ちり)にでも理想を聴きたいんだよ。同じ色をした魂を求め彷徨(さまよ)う奠(さだめ)も、稚拙(ちせつ)で愚(おろ)かだ。愚か成る事こそ真理なのだから――』

「知るかアホっ……」
 賀喜遥香はしらけづらで言葉を吐いて捨てた。
 ベルゼブブの近場で身動きを封じられている賀喜遥香と早川聖来に集中的に悪魔から言葉が交わされていた。

『聴きたい事は在るか――。知りたい事は在るか――』

「無い、言うてんねんっ‼」
 賀喜遥香は叫んだ。
 悪魔に背後を向けている早川聖来は、ふとその口を開いた。
「神様は、いるの? 神様って何? 神様って誰の事? ゼウス? イエス? お釈迦様(しゃかさま)?」
「せーらきくなぁこんな奴にぃぃ!!」
 賀喜遥香は叫んだ。

『神とは――。この惑星の史上において存在する、多くの姿と容(かたち)を持つ全能なる者――。信託(しんたく)と寵愛(ちょうあい)と罰(ばつ)を齎(もたら)す者の事……――。そして、神のみが持つ御力(みちから)こそ、罪を許す事――。奪い、また与える者の事――』

「愛されへんと、そうなるってわけやんな?」
 早川聖来は背後のベルゼブブへと不敵な笑みを浮かべて吐き捨てた。
 賀喜遥香も、気分すっきりと、笑みを浮かべる。
「神様っちゅうんは、みんなの心ん中におるもんや。天の神様いうてなあ、天国、天界から見てんねん! お前の死にざまをなあ‼‼」

『愚(おろ)か――』

「なんやと愚か言うたかこんの牛こうっ‼‼」
 早川聖来は眼を瞑(つぶ)る。
「眠っとこ………」

 更に十七分後――。

 清宮レイは前方の異様な背景を数秒間見つめてから、背後の筒井あやめと掛橋沙耶香に伝える。
「たぶん魔法で捕えられてる……。遠隔攻撃、やってみて」
「おっけー。……いでよ!」
 瞬間的な光が、筒井あやめの長い髪の毛をふわりと持ち上げた次の瞬間、あやめの開いた左手の上に〈紫色の背表紙をした本〉が出現した。
 あやめの心で思うままに、バララララ――と、白い頁(ぺーじ)が高速で捲(めく)られていく。
「光の炎(ルークス・フロガ)っっ‼‼」
「光の炎(ルークス・フロガ)っ!!」
 掛橋沙耶香も【暗記】の能力であやめの技能を完全コピーした――。遠方にて、悪魔王の台座に畏怖堂々(いふどうどう)と腰かけているベルゼブブの巨躯(きょく)の眼の前に、小さな光が僅(わず)かに二つ発生し――。それはみるみるうちに巨大な白き聖なる炎の大爆発となって広がっていった――。
 白い閃光(せんこう)に、眼を隠すように、体勢を低くして、賀喜遥香は腕で顔を防御した――。
 光の中で賀喜遥香と早川聖来は叫ぶ――。
「動けるっ‼」
「なんの光ぃっ‼」
 ベルゼブブの左方の肩と左方の腕が爆発的に発生した聖なる白き閃光によって吹き飛んだ――。ベルゼブブには何が起きたのかがわからない。
 閃光(せんこう)が止まぬ中、賀喜遥香と早川聖来は体勢を整え直すように、皆のいる後方へと脚を急がせた。
 佐藤璃果は大きく鋭い眼つきで、後方からこちらへと跳び移ってくる筒井あやめと清宮レイと掛橋沙耶香の姿を発見した。
「みんなっ、ほとんど揃ったよっ、後はさくちゃんだけっ!!」
 賀喜遥香は、閃光の治まってきたベルゼブブの方向を睨みつけながら言う。
「さくちゃんはまだ来れない………。間に合ったとしても、たぶんこの戦いには参加できない……。さくちゃんは、召喚した五人と一緒に、一人だけでヨグソトースと決着をつけてる……」
「ええっ‼」