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ジャンピングジョーカーフラッシュ

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「え? もう、終わるの?」

――●▲■次が君達の最後の夢の為の任務になる。重大な任務だよ。しかし、それなんだけどね……。邪神や大悪魔といった大いなる災いを倒したばかりでなんなんだけども、次の悪は、この日本で相手にするならば、これまでの悪よりも更に驚異的な敵になりそうなんだ。というか、もう戦う事が確定している■▲●――

「何でそうやっていっつも勝手に進めちゃうの~」
 あやめはベッドにごろんと転がって、しゅ、しゅ、と脚で天井を蹴った。
「てかみんなは承知してんの? てかさくちゃん元気にしてんの? みんな次もちゃんと戦うっていってるの?」

――●▲■次の相手なんだけどね■▲●――

 あやめは驚いた顔で、ベッドに横たわったまま天井を見つめる。
「うっわマジだ……、マっジでシカトするわこの人……」

――●▲■八岐大蛇(やまたのおろち)……。聞いた事はあるだろう? 日本神話の八本の首を持つ蟒蛇(うわばみ)。いや八本の首を持った大蛇(だいじゃ)かな。とにかく、とんでもない化け物だ。あやめ君の仲間達は全員、やる気で漲(みなぎ)ってるよ。とくにさくら君。彼女は強い精神力と信念で、次の戦いに臨(のぞ)むつもりだ■▲●――

 あやめは「ふう~ん」と口先を尖(とが)らせて、窓の方を見つめた。

――●▲■出雲(いずも)の国に現れた異形の怪物、それが八岐大蛇(やまたのおろち)だ――。身体には苔(こけ)や桧(ひのき)、杉(すぎ)が生えていて、八つの渓(たに)と、八つの丘に跨(またが)るほど巨体であるというよ。しかし弱点は古い文献にしっかりと記されている。
八塩折之酒(やしおりのさけ)。八つの門を造り、それぞれに棚(たな)を置き、棚には酒を満たした棚樽(たなだる)を置く。凄まじい地響きを立てて、八岐大蛇が這(は)いずる。八つの酒を見つけると、それぞれの首が八つの門に入り、八塩折之酒(やしおりのさけ)を呑み始める。しばらくして、強い酒に酔い潰れた八岐大蛇は、その場に突っ伏して寝てしまった。
八岐大蛇の尾を切り裂いた時、剣に何かが当たり切っ先が欠けてしまった。そのまま八岐大蛇の尾を切り裂くと、中からは三種の神器の一つ、『草薙剣(くさなぎのつるぎ)』が出てきた。須佐之男命(スサノオノミコト)は、八百万(やおよろず)の神の最高神であり、姉でもある天照大神(アマテラスオオミカミ)に草薙剣を献上した、という伝説だね■▲●――

 あやめはクッションを宙に投げてはキャッチしてを繰り返しながら言う。
「お酒で弱らすのね~ふ~ん……。弓木奈於ちゃんの言霊で、その、なんたら~っていうお酒を出してもらってえ、剣で切るなら黒見ちゃんがいるか。あ、剣折れてたな……、あでも復活できるんだっけか?」

――●▲■古事記にはそう書いてある。古事記は日本最古の書物だからね、簡単に言えば日本の1番最初の方の出来事だ。須佐之男命(スサノオノミコト)がいった弓矢が八岐大蛇を射抜いたという伝承もあるけど■▲●――

 あやめはばふ、とクッションを胸で受け止めて、ベッドに横になったまま天井を見つめながら呟(つぶや)く。
「弓矢? 弓矢の使い手なんていなかったよね~……。てか、その大和(やまと)の音痴(おんち)とかいう怪物の情報、みんなに言わなくていいの?」

――●▲■情報は全員に解禁中だ。僕は同時に千人とまでなら多様な会話が可能なんだよ。知らなかった? 今もあやめ君の仲間達と八岐大蛇の事で話し合っている。で大和(やまと)の音痴(おんち)って誰?■▲●――

「わかった! だ~っからシカトするんだたまにぃ! 千人と話してるから。会話落っことすんだ、たま~に……」

――●▲■君達にしか倒せないだろうね……。僕のヒーローリストでも、君達は秀逸な存在だ。――伝承に伝わる神や妖(あやかし)、異形の怪物なんかはね、実はその正体は様々で、人々が恐れた疫病(えきびょう)や自然災害、あるいは、中央の権力に対抗する各地の勢力が、怪物の姿で記録に描かれたりと、本当に様々なんだ。
中央の権力に対抗する勢力が怪物として描かれる場合、その多くが、かつて実際に起きた史実がベースになってる。当時の時代背景や風土なんかは、歴史的な化け物の謎を紐解(ひもと)く鍵(かぎ)になるんだよ。
実はね、八岐大蛇(やまたのおろち)においても、三つの仮説(かせつ)がある――。その一つは、八岐大蛇は実は元々は水神(すいじん)であり、信仰(しんこう)の衰退(すいたい)によって怪物になっていったという説。
農民だったかつての日本人は、田畑を潤(うるお)し収穫を左右する水は生活において最も重要なモノの一つだった。水源や井戸、川には神が住むと考えられていて、水神の象徴として、蛇(へび)や竜を信仰していたという。
でも、そうした動物信仰は時代の変化と共に廃(すた)れていき、神の象徴としての印象の薄れた蛇なんかが、怪物に例えられるようになったという説がある■▲●――

 あやめはぷい、と、窓の外に広がる夜のイルミネーションの世界を見つめる……。

――●▲■八岐大蛇(やまたのおろち)の正体、その二つ目の仮説は、八岐大蛇が洪水(こうずい)の化身だという説だ。八岐大蛇の伝説が残るその地域には斐伊川(ひいかわ)という川が流れてて、そこは甚大(じんだい)な洪水災害多発地域だった事が1866年の約245年間に62回の洪水が発生したと記録されているらしい。
古事記の時代に起きた洪水の記述(きじゅつ)は殆(ほとん)ど記されていないらしいんだけど、何度も発生する水害を、当時の人々が抗(あらが)う事の出来ない怪物の仕業(しわざ)だと思っても、なんら可笑しい事は無いだろうね。
また、古事記によると、八岐大蛇(やまたのおろち)は、身体に苔(こけ)や桧(ひのき)、杉(すぎ)が生え、八つの渓(たに)と八つの丘に跨(またが)る巨体とされてる。これを、山々を身体とした出雲の自然そのものを八岐大蛇の姿であると考えたとする。すると、八岐大蛇の悪行とは、即(すなわ)ち自然災害であり――。そして物語の中心の斐伊川(ひいかわ)で――。洪水や氾濫(はんらん)を起こす怪物を退治する須佐之男命(スサノオノミコト)という男は、この川の治水(ちすい)に尽力した部族、人物なのではないかという説が挙がった――。
ただし、斐伊川の大規模な治水が行われたのは、古事記が記された奈良時代の遥か先の、江戸時代になってからだ。八岐大蛇の悪行、つまり、斐伊川の洪水を須佐之男命なる人物、部族がおさめたとするには、少し時代に開きがあるとも言われている■▲●――

 あやめはイルミネーションの輝く夜景に見入っている……。
夏も、もうじき終わる――。この世界での、18歳の生活ともバイバイか……。
そういえば、お母さんに会いたいな……。

――●▲■そこでへっぽこ太郎はバミューダ島を目指す事を決心したんだよ、あやめ君わかった?■▲●――

 あやめは窓の向こうの夜景を見つめたままで、声だけで頷(うなず)く……。
「うん」

――●▲■あ。やっぱし……。聞いてねえ。いやあやめ君、大事な話なんだよ。最後のミッションじゃないか、正義の味方っぽく悪の調査データを勉強しようよ■▲●――