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ジャンピングジョーカーフラッシュ

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 賀喜遥香はそう叫びながら、次の瞬間、斥力(せきりょく)を発生させて宙高くに浮かび上がり、ビルの高さにまで到達すると、三本の頭を残した八岐大蛇へと右手を伸ばして、大きく指先まで手を開いた――。
「あんた、もう動けへんでぇ………」
 超超引力を八岐大蛇の真下に発生させ、超超重力場を創り出したまま、賀喜遥香は空中にて引力を発生し続ける。
 遠藤さくらは柴田柚菜と矢久保美緒と林瑠奈と佐藤璃果を、金川紗耶の髪の鉄壁が守る会社ビルの地上一階の駐車場まで〈空間転移〉で運び、己は、黒見明香の透明な愛馬、赤兎馬(せきとば)が景色を歪めながら走っていった方向へと瞬間移動した。

――●▲■今はもう動ける者が殆(ほとん)どいない、明香君の一撃で八岐大蛇を切り殺すのが良策だ! さくら君、明香君には今、戦う剣が無い! おお、ほほ、もうそこか■▲●――

 遠藤さくらは最強の剣をイメージしながら、縦に1メートルほど生じた空間の歪みに、片腕を突っ込んで、剣を握った。
「いいのありましたか!」
 黒見明香は赤兎馬(せきとば)に乗り込んだ――。
「はい! なんかありました!」
 遠藤さくらは空間の歪みから片腕を引っこ抜く……。
「その剣……、凄い力を感じる……」
 黒見明香は、赤兎馬(せきとば)の上でその異形の剣を遠藤さくらから受け取る。

――●▲■それは俱利伽羅剣(くりからけん)だね。大日如来(だいにちにょらい)の化身、不動明王(ふどうみょうおう)が右手に持つ降魔(ごうま)の剣、その名も俱利伽羅剣(くりからけん)――。その名の由来(ゆらい)は、不動明王の化身とされる竜王俱利伽羅が、燃え盛る炎となって剣に巻きついている事が由来になっている■▲●――

 燃える降魔の剣を天高くかかげながら、黒見明香は赤兎馬(せきとば)の腹を蹴る――。
「はいよう!」
 獰猛(どうもう)な雄叫(おたけ)びを上げながら、赤兎馬は強力な重力場で動けなくなっている八岐大蛇の巨大な胴体へと向かう――。
「微塵斬(みじんぎ)りっっ‼‼」
 振り下ろした炎の一閃(いっせん)は、竜王俱利伽羅の三毒を打ち破る光を放った……。欲のままに、求める〈とん〉。怒りのままに、忌(い)み嫌う〈じん〉。無知のままに、歪み惑(まど)う〈ち〉。この三毒を打ち破りながら、俱利伽羅剣はその姿を消していった――。
 八岐大蛇の胴体が血の海と成り切り離された……――しかし、腸(はらわた)から這(は)い出た数多の蛇がその巨躯(きょく)を嚙(か)みあい重なる事で繋ぎとめている――。
 何匹(なんびき)かの蟒蛇(うわばみ)が、腸(はらわた)から這(は)い出てきてヒーロー達の方へと物凄い速さで移動していく。
 遠藤さくらは【笑止】の能力を発動して、大地で行動不能の仲間達に一定時間ダメージ無効の魔法をかけた。
 賀喜遥香は苦しそうに、空中に浮遊したまま、伸ばした右腕を左腕で支える……。
「なんちゅう………。死にぞこないの力とちゃう、早く仕留(しと)めんと、もう……」
 周囲のビルで最も高い鋭角なビルの頂上で、早川聖来は大きく息を切らしながら、その指先を、八岐大蛇へと向ける……。
「ハァ、化けもん……ハァ、これが最後のカミナリ……」
 早川聖来の全身にバリ、バリリと――、静電気が迸(ほとばし)る……。
「高周波高電圧共振地獄(テスラコイル)――っっ‼‼」
 最高(さいたか)いビルの頂上から、早川聖来の右手の指先から放たれた真横に迸(ほとばし)る落雷(らくらい)は、超高周波・超高圧の青い電撃の塊(かたまり)であった――。
 高電圧に感電しながら、残された三本の首の蛇が唱える……。

『蛇蛇(アングイス・セルペンス)――』

 地上のヒーロー達に襲いかかる蟒蛇共(うわばみども)が急激に活発化し、その毒牙を剥く――。

『蟒蛇(ピュトン)――』

 数多の蟒蛇が巨大化して、ヒーロー達に襲いかかっている。金川紗耶は無限に伸縮する頭髪を自在に操り、仲間を守るように地上一階の駐車場に蔓延(はびこ)る蟒蛇共(うわばみども)を串刺(くしざ)しにしていく……。
 乗り移ったビルの頂上で、筒井あやめは、開かれた〈紫色の背表紙をした本〉の白い頁(ぺーじ)に刻まれた文字を意志の力で解き放っていく――。
「ハァ、聖域(イエロ)っっハァ‼ 超爆発(エクスプロシオン)っっ‼‼ 灰爆発(キニス・フラルゴ)っっ‼‼」
 聖域(せいいき)で近づけない蟒蛇共(うわばみども)は、その聖域を食い千切りながら聖域に侵入していく。
 巻き起こった超大爆発は、蟒蛇共を粉々に吹き飛ばしながら燃える巨大な火柱となった。
 粉雪のように、淑(しと)やかに降(ふ)り注(そそ)ぐ灰(はい)が、触(ふ)れたものに激しい大爆発を起こしていく……。
遠藤さくらは縦に1メートルほどに生じた空間の歪みから、突っ込んだ腕を引っこ抜いた――。そのまま〈空間転移〉で、黒見明香の赤兎馬(せきとば)の後ろ席へと瞬間移動で跨(またが)った。
「えっ……さくちゃん?? これは……」
「私の力も、そろそろ限界みたいです、これが最後の武器の召喚(しょうかん)になります…ハァ」

――●▲■それは、三国志の英雄(えいゆう)、関羽(かんう)が愛用した刀、青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)!! 長い柄(え)の先に、湾曲した大きな刃が取り付けられたその形状は間違いない。刃に青龍の装飾(そうしょく)が施(ほどこ)されているモノを青龍偃月刀といい、それは関羽を象徴する武器でもある。ちなみに、明香君の愛馬であるその赤兎馬(せきとば)も、実は関羽の愛馬が実体で、その透明で巨大な馬の実際の魂の根源が、関羽の乗っていた赤兎馬だ■▲●――

 黒見明香は横を向いて微笑む――。左手で押さえている横っ腹からは、割れた鎧の隙間(すきま)から衣服に血が滲(にじ)んできていた。
「さくちゃん、ありがとう……。私も、この青龍偃月刀と愛馬、赤兎馬で…、蛇に最後の攻撃、してくるね……」
「ハァ…お願い、します……、ハァ。私も、最後の攻撃してきますねハァ……じゃあ、必ずまた後でっ――」
 赤兎馬(せきとば)から、遠藤さくらの姿が消える――。

『大洪水(イヌンダーティオー)――』

 八岐大蛇の巨躯(きょく)が微々(びび)と蠢(うごめ)く処からすぐ間近なコンクリートの地盤を崩壊させながら、巨大な水柱が幾つも立ち昇り、巨大な川が氾濫(はんらん)したかのような大洪水(だいこうずい)が街中を呑み込もうとする――。
 黒見明香は青龍偃月刀で、一直線に空気をも真っ二つに切り裂く――。
「黒騎士黒見明香ここに在りぃ! っ燦華丘(さんかく)‼‼」
 八岐大蛇の残り三つのうち一本の蛇の頭が、飛ぶ斬撃で吹き飛んだ――。
 八岐大蛇の引き起こした水災害の中心に聳(そび)え立つビルの屋上のヘリポートで、遠藤さくらは柵(さく)に上り立ち、真下を見下ろして、意識を集中させ、唱(とな)える――。
「世界を凍結させる別れ(じゃあね。)っっ‼‼」
 バシバシバシン――と、地響きを立てながら、大洪水は忽(たちま)ち嘘のように凍結した――。
 遠藤さくらは微笑みを浮かべ、ビルの屋上から、倒れ込むように、気を失って身を投げ出した……。