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ジャンピングジョーカーフラッシュ

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「ねえわかんないの? さくちゃんの能力……。私ん時みたいに教えてくんないの?」
「教えて下さい!」
 遠藤さくらは、みたらし団子を急いで飲み込んで、上方の空間を見つめる。
 賀喜遥香は、チュッパチャップスを口に咥(くわ)えて、遠藤さくらを一瞥(いちべつ)してから、二人と同じく上方を見上げる。

――●▲■教えるよ■▲●――

「教えんのかい!」
 賀喜遥香は笑顔で突っ込んだ……。筒井あやめも遠藤さくらも、ほっとした顔つきになっていた。
「だったらはよ言わんかいこのボケマスタ~!」

――●▲■聞かれなかったし。まあ、いい。さくら君の能力は、実は僕らマスターに近い能力だと判明してるよ。所謂(いわゆる)、召喚能力(しょうかんのうりょく)だね■▲●――

「召喚、能力……」
 遠藤さくらは、唾(つば)を呑み込んで言う。
「ど、どんな能力ですか!」
「何を召喚するん?」
「しょうかんってなんですか?」
 賀喜遥香と筒井あやめが、不思議そうに質問した。

――●▲■悪を打ち砕く、強きしもべをこの世界に、戦闘中に召喚するんだよ。つまり、何処かの異世界から、引っ張って連れてくる能力だね。服従(ふくじゅう)させる魅力と、召喚したしもべの強さや繋がりを信じる力が必要になる■▲●――

「うっわ、めんど……」
「そういうの召喚っていうんだ、へ~~」
 賀喜遥香は顔をしかめて、筒あやめはつるんとした表情で、囁いていた。
 遠藤さくらは、口を強く結んで、思考してみる。そして、思い浮かんだ強者を召喚しようと試(こころ)みる。
「ぴ、ピカチュウ……、出て来い!」
「そんでしかもピカチュウかぁい!」
「あ、ピカチュウ見たいかも……」
 遠藤さくらは両腕を伸ばして、両の手の平をかっぴらいて、その空間に強くピカチュウという生物を思う……。
 しかし、沈黙が流れた時間、ピカチュウという生物は出現しなかった。
「あのう………」
 遠藤さくらは呟きながら、上方の宙を見上げた。筒井あやめと賀喜遥香の二人もつられて上方の宙を自然と見上げていた。

――●▲■出ないねえ。さくら君、君は今呼び込んだモノの存在や、その強さや、自分との繋がりを、信じているかい?■▲●――

 賀喜遥香は逆の頬にチュッパチャップスを転がしながら、素っ気なく遠藤さくらの横顔を見つめた。
 筒井あやめは、真剣な顔で遠藤さくらを見つめながら、焼き芋アイスを食べる……。
 遠藤さくらは、困ったような、失望したかのような表情で、ゆっくりと上方の空間から視線を下げていた。
「存在? 繋がり、って言われても………。家族とか、召喚しちゃいそうです、そんな事言われたら……」
「ふん。家族に戦えってか?」
 賀喜遥香は鼻を鳴らして笑った。
「さくちゃんを信じてくれる人とかは?」
 筒井あやめは、とりあえず提案のつもりで言ってみた。
「未来のさくちゃんと繋がりがあるぅ~……、番犬? とか?」
「番犬?」
 遠藤さくらは、ふと天井近くの空間を見上げる。
「存在しないモノは、召喚できませんか?」
 賀喜遥香はぐるりと逆の頬へとチュッパチャップスを移動させて、黙ったままで、遠藤さくらから、斜め上の空間へと視線を移動させた。

――●▲■基本、何でも召喚できると思うよ。君の事をこよなく愛する野獣とか、そういうのを想像してみたらどう?■▲●――

「間違えても、王子様なんか想像せんといてや、頼むでさくちゃん」
「あ、火炎放射器とか召喚して、焼く、ていうのは、どうですかね?」
「さくちゃんと繋がりのある火炎放射器って、何よ?」
「あそうか~~……。繋がりね……」
「それこそ、さくちゃんのしもべやろ? 強い何かがええやんな? 何やろ、歴史上の、英雄とか?」
 遠藤さくらは、眼を閉じる……。深呼吸をして、高ぶる気持ちを落ち着けた後は、己との信頼ある繋がりを強く連想し、その姿を夢中で想像した……。

――●▲■召喚のきっかけとなる発声だ、さくら君■▲●――

「そゆんは、はよ言えや~、ボケマスターやなぁ~」
 遠藤さくらは、唾を呑み込んで、眼を瞑ったままで、囁く。
「おいで……」
 次の瞬間――。ガラス製のセブンイレブンの壁面を、外から眩しいフラッシュが襲ったのだった……。
 筒井あやめと賀喜遥香は、眼を真ん丸にして、身体を乗り出して外の景色を確認する。
 遠藤さくらは、眼を開けた。
「………。また、ダメ、かぁ……」
 賀喜遥香は出入り口の方向に意識を向けて、眼を見開いて言葉を探す。
「いや……、なんか、店内に入って来よったで……」
「え?」
 筒井あやめは衝動的にそちら側を振り返った。
 遠藤さくらも、そちら側へと、ゆっくりと驚いた顔を向ける……。

――●▲■召喚、大成功おめでとう。これを戦闘時にやるんだ、さくら君■▲●――

 三人が狐(きつね)につままれたような顔で見つめるその先には、セブンイレブンの店内を、三人の座る突き当りの通路まで歩いてくる、五人の人間の若者の姿があった。
 三人が呆気(あっけ)にとられる中、五人の先頭にいる男が、三人に笑みをみせた。
「さくちゃん……、呼んでくれてありがとう。かっきー、あやめん。ユウです、よろしく。俺達は現世での記憶を持ちながら、特殊な能力をさくちゃんから分け与えられて、こっちの世界に召喚されたらしい。それが、走馬灯(そうまとう)みたいに理解出来てるんだ。驚いてるよね?」
 遠藤さくらは眼を見開いたままで、まだ声が出せなかった。
 賀喜遥香は、驚いた顔のままで、ユウと名乗った長身の男に言う。
「なんで、うちらの名前とか知ってるん? あんた、誰?」
 ユウと名乗った男は、微笑む。
「俺達は、つまり、さくちゃんを守る兵隊です。この世界でのさくちゃんを守る為に召喚された、さくちゃんの下僕(げぼく)だよ」
「あんなあ、俺はしもべ、つうかな、婚約者、みたいな感じで覚えていいぜ?」
 ユウの後ろにいた、ユウと同じくらいの背丈の男が顔をしかめながら言った。
 続いて、ユウのすぐ後ろに立っている男が自己紹介をする。
「ビンです。初めまして。ここでは、ビンと呼んでくれればいい」
「ここでは?」
 賀喜遥香がすぐに表情を険しくさせてビンに言った。
「失礼。失言だった……。この召喚に関する説明書があるとしたらね、読もうとすれば山ほど時間がかかる。それを一瞬で、さっきユウから説明があったように、走馬灯のように記憶に焼き付けられたのは、どうやら俺達の方だけみたいなんだ。だから、ここでは召喚獣として扱ってくれて大丈夫です。ヒーローの契約期間は短い、だから、この召喚についての説明書は不要だね」
「あんなあ、俺はナミヘイ、っつうんだ。さくちゃん、がっつり守ってやるぜ、もう安心いらねえ」
「心配いらねえ、でござろう? 安心いらねえだと心細いでござるよ、さくちゃん殿は」
 ナミヘイの横に並び立った、少しだけナミヘイ達よりも背の低い男が言う。
「小生は、アタルでござる。さくちゃん殿の召喚獣でござるよ! どんな敵だろうと、さくちゃん殿の敵なら容赦(ようしゃ)は無用でござる!」
 今度は最後尾に立っている唯一の女が、自己紹介を始めた。身長は遠藤さくら達と同じようなものである。