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君に叱られた

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 ポテトチップスは不思議そうに『なんだお前?』と言っているので、ソフトクリームに確認を求めようとすると、ソフトクリームもショートケーキも、ポテトチップスに深く頭を下げて跪(ひざまず)いていた。
「占うのか?」
 ポテトチップスがソフトクリームに真顔で言った。
 遥香は表情を驚愕(きょうがく)させ、すぐに『そういえばそうだったわ!』とサリの肩に触って吹っ飛んだ。
「あのうぅ…、まずは、あの二人の事を占ってあげて頂けないでしょうか?」
「寝てるからやだよ」
「そこをなんとか…」
「やだよ、起きてる人だけだよ」
 遥香とサリは高い天井を見上げていた。
「遥香ちゃん……、だい、じょうぶ?」
「賀、喜さん…こそ、…ごめ…、忘れ…てたの……」
「サリって呼ばなきゃダメだよ……。掟(おきて)だもん」
 サリは、顔を痛がらせたままで呟いた。
「ねえ、だいじょぶだった?」
「…ええ、生きてる。い、痛ったいもん……」
 遥香は転んだ瞬間から驚いた顔のままである。彼女は運動神経が非常に鈍い為、受け身を取れずに何度も後頭部を床にバウンドさせていた。眼玉が飛び出しそうになっている。
「ねえ……、背中から落ちるの、やめた方がいいよ…、痛たた…」
「そうね……、でもわざとじゃないの……」
 その後、二人が立ち上がった後に受け取った日に一度の貴重な占い結果は、『イチゴは冷やして練乳をかけると美味しいだろう』という物であった。
「イチゴって、帰る方法と関係ないじゃないのよ!」
「あー…でも、確かに冷やしてから、練乳かけて食べると美味しいよね?」
「イチゴには練乳ね。確かに。確かにじゃないわよあんた! なんで平気なの! 今日はもう占ってもらえないのよ?」
「練乳かけて、イチゴ食べたいなぁー……。あちゃんと冷やしてからね? 占い師さんに言われたし」
「もういいわ。この占い師は偉い人設定だったけど、どうやら占いに期待するのはバカみたいね」
「イチゴに練乳かけて、食べようね? 帰れたらさ……、あちゃんと冷やして!」
「はいはい。帰れたらね」
「約束ぅ~!あはは」

       15

 フトルの家に集まったメガキンと村瀬の二人は、すぐに思いも寄らぬ提案をフトルに話した。
「デブいな~…、なんっでわっかんね~んだよ~」
 村瀬はつり眼でフトルを睨み、その勢いでフトルの腹を叩いた。
「脳みそ、脂肪で埋まってんじゃねえのぉ?」
「だって…、学校はもうやってないょ」
 フトルはポテトチップスへの手を止めていた。
「行ったってしょうがないよ、部活だってないのに」
「部長を呼べば部活になるじゃないか」
 メガキンがわざとらしくメガネを上げて言う。
「部長は絶対に来るよ。夏を海に行って終わらせるような人じゃないからね」
「部長が来たってしょうがないじゃんか」
 フトルはメガキンの顔をまじまじと見た。
「夏の部活はもうなくなったんだよ? 部長が来たってただの遊びじゃん……。それなら、ゲーセン行こうよ……」
「だからゲーセン行くんだってば」
 村瀬が呆れて言った。そのままポテトチップスを掴む。
 フトルはタオルで汗を拭いながら、訝(いぶか)しげな顔で、口の中のポテトチップスをバリボリと噛んでいた。
 セミの鳴き声が開け放たれた窓の外から聞こえている。何処かでは工事の音も再開されていた。
「学校に行くって言ってなかった?」
 フトルは困った顔で言った。
「学校のゲーセンだよ」
 村瀬は立ち上がって、窓の方へと移動した。つり眼が笑っている。
「部長は受験生。あともう半年で学校からいなくなっちゃうんだから、最後の校則違反もしたいだろ?」
「したいわけ…、そんなのしたいわけないじゃん……」
「いやしますよ」
 メガキンも立ち上がって、窓の方に移動する。村瀬と並んで、メガキンはゆっくりと怪しく笑った。
「僕にとっては人生最大の冒険だけどね……。んふ、部長と過ごす最後の夏を棒に振るぐらいなら、はっ、はっ、はっ、……。ナイアガラの滝から落っこちて溺れた方がマシ。jはっ、はっ、はっ」
「ちょっとカッコイイじゃんか」
村瀬はにやけた。
「あそう?」
 メガキンは嬉しそうに耳の下を掻いた。
「本音だから、じゃあ僕の精神がジョニー・デップだったってわけだね」
「ジョニー・デップなんて一っ言も言ってねえぜ?」
 村瀬は窓の外に顔を向けながら笑った。
「セントバーナードぐらいのカッコ良さだよ、せいぜいさ」
「うん、よくわかんないけど、その人でもいいよ」
「犬だってバカ」
「ちょっとちょっと、二人とも、えぇ?」
フトルは眉間をしかめた。
「何言ってるの?」
 窓際の二人が、床に座るフトルを同時に振り返る。
「学校がゲーセェン?」
 フトルは食べる手をやめて、更に不可解といった顔をした。
「学校がゲーセンで校則違反ってさあ………。意味は分かるけど…。それ、どういう事?」
「退学にはなんねえだろ、って意味だよ」
 窓に腰掛けた村瀬が、いつもの口調でフトルに言う。
「悪くて停学、うまくいけば何もなし。楽しいだけ」
「これから学校行ってさ、異世界やろうよ。あ……フトル?」
 メガキンは不思議そうにフトルを見つめている。フトルは不機嫌そうにメガキンと村瀬のコップをおぼんの上に片付けていた。そのままドアの前に移動し、フトルはぼうっと自分を見つめたままの二人を振り返った。
「言い方がわかりずらいよ…。もう、何やってんだよ、早く窓閉めろ」
 フトルの顔は、怒りながら、笑っていた。
「早く学校行くよ」
「おっしゃ行くかあっ!」
 村瀬は窓から飛び降りて、焦るようにスキニージーンズのポケットから携帯電話を取り出した。
「部長びびるだろ~な~、きっきっき!」
「じゃあ部長の携帯に電話しま~す」
 メガキンは村瀬より先に、携帯電話を耳にはりつけた。
 村瀬は驚いた顔をする。
「あれ、メガキン持ってたの?」
「…ん、ああ、時間あったから、さっき契約してきた。委任状ですよ、こつは」
 メガキンは横眼で村瀬を素早く一瞥する。
「サリに電話して。あと、繋がったら……あもしもし? 部長? あのちょっと待って下さい?」
 メガキンは受話器を押さえて村瀬を見る。
「サリに賀喜さんにも連絡取ってもらって。できるだけ仲間全員で停学の方が思い出になるから……。あ、もしもし?」
「停学なんかやだよバカ」
 そう呟いた後、村瀬は繋がった携帯電話に素早く両方の眉毛を持ち上げた。
「もしもしぃ、サリさんのクラブメートの村瀬と申します。あどうもぉ」
 ドアが強烈に開いた。
「歩きながら電話してっ! 俺もう早く異世界やるんだからぁっ!」

 ~サリの国~

 賀喜遥香(かきはるか)の中身【精神や魂といえるもの】は、汐崎佐里(しおざきさり)である。賀喜遥香の中身は、汐崎佐里であった。――現在この二人は、科学部の部長が制作したゲーム世界、つまりは科学部の秘密の仲間達一人一人の理想からつくり出したゲームの異世界に、突如としてワープしてしまい、このゲームを楽しむ為に科学部の秘密の仲間達で取り決めた硬い掟(おきて)によって、半ば強制的にこの異世界では互いの身体を交換させられているのであった。
作品名:君に叱られた 作家名:タンポポ