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未来卵

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「うんこは‼‼ ……なんか混乱してきたわ」
「女子の前で何だね君達は!! うんこだの屁ぇこいただのっ! やめたまえみっともない‼‼」
 風秋夕は溜息を吐く。
「はぁ~屁ぇこいたなぁあんただけどな……」
 磯野波平は大きな声で言う。
「そんな事より! もっと仲良しな話しようぜぇ、もっと素敵なよ~。な? なあなあ、俺が最初に女子にもらったプレゼント、なんだかわかるか、みんな?」
 にっこにこと微笑む磯野波平に、風秋夕は「けっ」と吐き捨てた。
「なあ、お前こん中で1番付き合いなげえだろ、おい夕」
「知るか」
「ふん、当ててみ。おい嫌そうな顔をするんじゃあないんだよ人の思い出をっ‼‼ いいから当ててみろ‼‼ この世から俺以外のイケメン消えろよっ‼‼」
「後半、心の声がもれてたよ」
 稲見瓶は無表情で言った。
 磯野波平は、強引な笑顔で和田まあやと齋藤飛鳥に言う。
「ん? 何だと思うよ? ま~やは? んん? ほら飛鳥っちゃんはぁ? 答えてみ」
 和田まあやは答える。
「え、この流れだと、犬? とか?」
「死刑!」
 磯野波平は、和田まあやに尻を向けて、強引に上半身を和田まあやに向けながら縮こまりながら両脇をしめて、拳銃のように模写した右手と左手で、和田まあやを指差しながら座視で言った。
 またソファに腰を落とし、何事も無かったかのように、齋藤飛鳥に言う。
「ほい、飛鳥っちゃん」
 齋藤飛鳥は、口の先を尖らしてから、左の口角を引き上げて、無表情のしかめっつらで囁く。
「ハンカチ、とか? 知らないわかりません」
「おしい!!」
 磯野波平は前かがみになり、はしゃぎながら山下美月に言う。
「みーたん、ほい答えてみ?」
「みーたん………」
 山下美月は絶句する。
 いや、風秋夕も絶句していた。
「ほいみ~たんだよ、み~たんの番だよう、答えてみ。ハンカチ、おしいっからよ!」
 山下美月は横目で首を傾げてから、仕方なく適当に答える。
「バス、タオル、とか?」
「死刑!」
 磯野波平は、山下美月に尻を向けたつもりであるが、実際には「死ぬでござる!」と唸る姫野あたるの顔に尻を押しつけながら、上半身を無理やり山下美月の方へと向け、両脇をしめて、拳銃を模した右手の指先と左手の指先で、山下美月を座視で指差していた。
 また、何事も無かったかのようにソファに腰を下ろし、磯野波平は稲見瓶に微笑む。
「イナッチ」
「その死刑、というギャグをやめろ。不愉快だ」
「へっ、愛想の無い奴。ほい夕君、ちみの番だよ」
「サソリ」
「あ?」
 磯野波平は瞬間的に真顔に戻った。
「サソリ? サソリ…って、ん~でサソリなんか貰わなきゃいけねんだこのキラキラ王国の王子様野郎っ‼‼ 馬鹿にしてんのかてめえっ!!」
「馬鹿にしかしとらん」
 先ほど、空気洗浄事件の際に、顔を洗って眠気を取ってくると、席を空けた与田祐希が東側のラウンジへと戻ってくる姿があった。
 姫野あたると磯野波平、稲見瓶は、咄嗟にそちらの方向を半分立ち上がった姿勢で見つめていた。
「危険を察知したミーアキャットの群れかお前ら……」
 風秋夕はそう呟(つぶや)いてから、己も「おかえりなさい」と与田祐希の方を振り返ってから、短く驚愕(きょうがく)して悲鳴を上げた。
 与田祐希は「あっはは、驚いたと?」と笑いながら、その顔を指差した。彼女はおたふくの顔面パックをつけていた。
 与田祐希が元の席に着席すると、新しい話題に花が咲いた。
「マジで食べようとして買ったささみが、ペット用のささみだったの? マジで!」
 風秋夕は、笑いながら頷いた和田まあやに大笑いを向ける。
「そのささみを食べたの?」
 和田まあやは大笑いしながら顔の前で忙しく手を横に振り、否定する。
「食うわけないじゃん、っは、イナッチっ、ヤバっ、おもしろっ、…はっは、それ、だってマジで、真面目に聞いてるんでしょう?」
 磯野波平は吐いて捨てるように言う。
「こいつから真面目取っちまったら、なぁ~んにも残りゃしねえ」
 稲見瓶は薄く笑みを浮かべて、磯野波平を一瞥した。
「言うね。鼻が伸びるよ」
「がはは、あ?」
 稲見瓶は和田まあやと齋藤飛鳥を交互に見つめるようにして、会話を続ける。
「だけどまあやちゃんは本当にやんちゃな子猫だ。ペット用と人間用のささみを間違えるなんて、まるで猫まっしぐらだからね」
「なんで鼻が伸びんだよ」
「いやイナッチ」
 風秋夕は笑みを浮かべて稲見瓶を一瞥する。
「やめろよその比喩、やんちゃな子猫って、大阪にあった伝説のラブホの名前だぞ」
「だから何で鼻が伸びんだよ、っつの、ああ? おい……」
 稲見瓶は少しだけ驚いて、納得する。
「そうなんだ? 大阪の……。それは知らなかった。失礼」
「おい鼻が伸びるって何がだっつうのおい、鼻が」
「うるさいなあんたさっきっからぁ……」
 齋藤飛鳥は実に嫌そうな顔で磯野波平に言った。
「だ、な~んで鼻が伸びなきゃなんねんだよ? 何言ってんのお前、お前だよ無表情……」
 稲見瓶は、無表情で、磯野波平を見つめる。
「いや、ピノキオだけど」
「あ?」
「おとぎ話の。ほら、ディズニーの……」
 稲見瓶は言った。
 磯野波平は大きく鼻から息を吹き出し、座視で答える。
「ピノキオぐらい知っとるわ。だからん~で、鼻が伸びるんだ、つうんだよ」
 稲見瓶は、少しだけ驚き気味に答える。
「いや、だから、ピノキオだよ。嘘をつくと、鼻が伸びる……」
「誰が?」
 風秋夕は嫌そうに驚愕する。
「あんた全っ然知らないじゃん!! 言ってる事全く違うじゃんお前!! ピノキオ、知らないのかお前ぇ!!」
 磯野波平は、姫野あたるを見る。
「いやお前だよお前っ!! あんただってば筋肉質のバケモンみたいなあんただよっ‼‼」
 和田まあやは大笑いする。齋藤飛鳥は眼を呆気(あっけ)とさせて磯野波平を見つめている。
 山下美月は口元を手で隠して笑っていた。与田祐希は今にも眠りに落ちそうに、うつらうつらとしている。
 そして四期生達の話題は、結婚するならどんなタイプ、付き合うならどんなタイプ、という猛烈に熱いガールズトークへと突入していくのだった。

       11

「赤~かいぃんういぃ~~マ~フリィヤア~お、今時売ってないんういぃ~~、マーリナしゃん愛するノリダァ~はぁ、強~いショッカーあ、ぶっとば~すぞぉ~う!! レッツ、ゴウ、ギィヨョ~~ン‼‼」
 地下六階の〈大浴場〉で、風呂場専用チェイスに腰掛けながら、大きな声で歌を歌いながらご機嫌な様子で身体を洗う磯野波平に、風秋夕は実に嫌そうな顔を浮かべた。
「仮面ノリダーって………。それ俺はわかるからな、聴いてられるけどな、二十歳越えた普通の奴が、ショッカー倒す歌はあんま歌わないぜ? 普通はな、まあ普通はさ、うん……」
「誰が正義の味方だっつうの!」
「言ってねえよ魔法の耳かっ‼?」
 湯船に浸かりながら、稲見瓶は遠くの湯船の風秋夕に囁く。
「怖~いショッカー、じゃなかったっけ? 強~い、だったっけ?」
「本当にどっちでもいいよ」
 風秋夕は湯船で顔を洗いながら笑った。
作品名:未来卵 作家名:タンポポ