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恐竜の歩き方

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 屋内プールにはタント・メトロ・アンド・デヴォンテの『エブリワン・フォールス・イン・ワン』が流れている。
 尚、乃木坂46の女子達は皆が、水着の上にTシャツと短パンを着用している。乃木坂46ファン同盟の男子達は、ハーフパンツ丈のだぼっとした海水ズボンを着用していた。
 ビーチバレーが激化してくると、樋口日奈は持ち前の運動神経で大活躍し、和田まあやとのペアは、風秋&磯野ペアよりも20ポイントもリードしていた。
 磯野波平は飛んできたビーチボールに、ぼうっとしたまま腕を反応させたが、腕はビーチボールにかすりもせずに、磯野波平の頭部にバウンドした。
 樋口日奈と和田まあやはけらけらと奇声を上げて笑い転げる。
「やったやった~~、あっは、波平君そればっかりじゃ~~ん!」
「まあが眼ぇつぶって打った方がまだうまいよたぶん、んっふふん」
 風秋夕は顔面をしかめて、磯野波平の背中に言う。
「貴様………、ぜってえ、違うとこ見てんだろ……。つか、見つめてんだろ!」
 磯野波平は、ごくり、と真剣な表情で唾を呑み込むと、水面からビーチボールを拾って、それを高く向こう陣地へと打ち上げた。が、その眼はビーチボールを見ていない。
 和田まあやが反応して、後退しながら後ろにうまく跳び上がって、ビーチボールを打ち返した。
「やったまあやうまくない? ナイス私、おら行ったよ波平っ!」
 ビーチボールは弧を描いて、和田まあやと樋口日奈の濡れた姿を険しい顔で凝視している磯野波平の頭部に落ちてバウンドした。
 風秋夕は憤怒する。
「やぁる気ゼロキログラムかよてめえはっ!」
 和田まあやと樋口日奈はハイタッチしている。
 磯野波平は、彼女達の一挙一動を凝視したまま、水面に浮かぶビーチボールを取りに向かう。
 樋口日奈は、ふと笑顔をフリーズさせて、磯野波平に言う。
「ていうかぁ……、なんでずっとこっち見てるの?」
 和田まあやも、そう言われて、笑顔のままで磯野波平を観察する。
「ああ、確かに。見てるねえ。ずっとこっち見てる……」
 磯野波平は、眉を顰めて、真剣な表情で、構える――。その手にはビーチボールがセットされ、もう片方の腕がそれを打つ準備がされているが、その眼は二人の濡れた姿を凝視していた。
 風秋夕は磯野波平の背中に怒鳴る。
「いいか罰ゲームで蟋蟀(こおろぎ)食えって言われたら食わなきゃなんだぞ! 貴様の珍プレーでまだまだ負けてんだっ、巻き返すぞ波平! 聞いてんのあんた! ねえ! ねえってば!」
 磯野波平はビーチボールを一瞥もせずに、精確に高く、ビーチボールを向こう側の陣地へと打ち上げた。
 上方を見上げた樋口日奈と和田まあやが、水面からぴょんぴょこと動いてビーボールを見上げたまま激しく動いている。
 風秋夕は静かに移動して、そうっと磯野波平の顔を覗き込んだ。
 磯野波平は、鼻の下を伸ばして満面の笑みを浮かべていた。
「ほらあ! あんた何、どこ見てんの! その気色悪すぎる顔をとにかくすぐにやめろ!」
「あぁん? お前、だって……。鼻血もんだろ、こんなん」
「純粋な二人はまだ気づいてねえんだから、そろそろいいだろ。もうやめろ、その顔を! ムカつくんだよ!」
 返ってきたビーチボールが、磯野波平の頭でバウンドした。
 屋内プールにはクリスティーナ・ミリアンの『ワット・エヴァー・U・ウォント』が流れている。
 100メートル・プールの中央で、向井葉月は、与田祐希と山下美月と佐藤楓に笑いながら言う。
「えスラっとしてカッコ良ければそれでいいの? 性格は? 身長は? 趣味とかは? えどうでもいいって事ぉ?」
 与田祐希は眠たそうな顔で答える。
「性格悪くていいとは言っとらんやん。え、性格とかは……、なんか、のんびりした、感じの人?」
 山下美月は、大きな瞳を瞬(まばた)きさせて、含み笑いを浮かべながら言う。
「えーー、私、わっかんないかも、そういうの……。とりあえず、運転免許は持ってて欲しい派」
 与田祐希が思いついたかのように言う。
「あ落ち着いてる人、そうそう。落ち着いた感じの人」
 向井葉月は佐藤楓を見つめる。
「落ち着いてる人、て言われるとさぁ……」
 向井葉月は、今度は、視線を少し先にいる稲見瓶に向けた。三人も稲見瓶を振り返っていた。
「イナッチ思い浮かべちゃうんだよね……」
 与田祐希は眠そうな眼をしかめて、手を顔に当てて言う。
「違う……。なんか、クールっぽくてえ……えー」
 佐藤楓は笑う。
「イナッチじゃん。イナッチクールじゃんか」
「違うんだよな~……、何ていうか、イナッチ、て感じじゃなくて……」
 与田祐希は、考え始める。
「夕君っぽい感じ?」
 山下美月は笑顔で言った。
「えー、もう、わっかんない。いいや」
 与田祐希は笑顔であきらめた。
 佐藤楓は、ガールズトークの続きに笑みを浮かべる。
「天野川君、なんかしゃべるとイメージ違うけどさあ、しゃべってない時、イケメンだよね、けっこう……。モテると思う」
 向井葉月は乙女チックな瞳で訴えかけるように言う。
「なんか、ヘラヘラしてない? しゃべると」
「そう、なんだよ~。もったいない」
 山下美月は面白がって言う。
「もったいない、て言ったらさあ、夕君なんて、どう? もし夕君が、一人の人だけに執着する人だったら……」
 向井葉月は鎖骨に触れて言う。
「え自分に、て事?」
「そう」
 四人の乃木坂46は考える。ガールズトークはまだ終わらない様子であった。
 屋内プールにはエリック・ベネイの『ジョージー・ポージー』が流れている。
 梅澤美波はタオルで軽く頭髪をぬぐって、肩にかけた。稲見瓶の発言に、に問いかける。
「え、どういう事? 本当は生まれなかったかもしれないって事?」
 稲見瓶は、シーリング・ライトの並び立つ大型の円卓テーブルの椅子を四人分引きながら、答える。
「12月31日に、そのぉ……、つまり、うちの両親が種付けをして、普通は妊娠したら、十月十日ぐらいで生まれてくる」
 タオルで軽く頭髪や身体をふいた岩本蓮加と阪口珠美と吉田綾乃クリスティーと梅澤美波は、テーブル席につく。
「だけど、夕と俺は、両親が種付けしてから、約12カ月かけて生まれてきた、奇跡の子供なんだよ。妊娠してから42週以降の出産を、過期産(かきさん)と言うんだ。42週を過ぎると、お母さんのお腹の中で子供が大きくなりすぎて難産になったり、胎盤がダメになったりと、まあね、12カ月かけて生まれて来る赤ちゃんは普通いないとどこでも言われるよ。もちろん、前例が無いわけじゃないけどね」
 吉田綾乃クリスティーは呆然と言う。
「それと、表情が無い事とかは、関係、してないのかな……」
岩本蓮加は大笑いする。「関係ねえだろ」と笑っている。
 稲見瓶は不器用に微笑んでいた。
 梅澤美波を筆頭に、五人は電脳執事のイーサンにドリンクとつまみのフードを注文した。
 屋内プールにはP・ディディの『アイ・ニード・ア・ガール』が流れている。
 梅澤美波はアイス・コーヒーをストローで飲んでから言う。
「なんかさ、最近ね、ここの、『リリィ・アースなんとか』って名前の付いた料理が美味しいんだって。誰か頼んだ事ある人いる?」
作品名:恐竜の歩き方 作家名:タンポポ