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恐竜の歩き方

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 吉田綾乃クリスティーが手を挙げた。
「うち、リリィ・アース・ハヤシライス食べた……。あとぉ、何だっけな……。あリリィ・アース海鮮尽くしコース、だったかも。名前は忘れた」
 梅澤美波は興味深そうにきく。
「でぇ、美味しかったの?」
「うん」
 吉田綾乃クリスティーは弱い笑みを浮かべて答える。
「たぶん、素材がいいもの使ってるんだと思う……。あと、ちょっと時間かけてあるものとか。ハヤシライスはねえ、コクが凄くてえぇ……海戦は、とにかく身がぷりっぷりのやつばっかだった気がする……」
 梅澤美波はにやける。
「じゃあそれ頼まなきゃダメじゃん。えイナッチ、知ってます?」
 稲見瓶はストローでルイボスティーを飲む事を中断して、答える。
「うん。知ってる」
 阪口珠美は大きな瞳を稲見瓶に向けて、ふわふわとした表情で言う。
「え、何が美味しい?」
「外国の名前が付いたコース料理は、リリィの名前が付くと大体更に格別だし、ちょっとしたジャンクフードとか、日本食も、リリィの名前が付くと豪華になるよ」
 阪口珠美はにやけて言う。
「いや、何が美味しいのかきいてんだけど」
「個人的には、ステーキとすき焼きと、生姜焼きだね」
 阪口珠美は納得する。
 岩本蓮加は稲見瓶に言う。
「え、飲み物も一緒?」
「ああ、うん。リリィが付くと味が異なるものが届くよ。あとは、お気に召すかどうか、だね」
 梅澤美波は微笑んだ。
「ちと試しに頼んでみようよ……」
 皆がその案に賛成し、五人は電脳執事のイーサンにリリィ・アースの握り寿司・雅(みやび)、一人前と、リリィ・アース・アイス・カフェラテを一つ注文した。
 屋内プールのBGMがシャニースの『アイ・ラブ・ユア・スマイル』に変わった頃、注文した品々は大型の円卓テーブルに付随した〈レストラン・エレベーター〉に届いた。
「なんだろ……。色とか見た目は、普通…かなあ? 飲んでみるね」
 梅澤美波は、リリィ・アース・アイス・カフェラテを試飲してみる……。
「うん! …ああぁ~~……、い~い甘さ。微糖の具合がいいね!」
 岩本蓮加は、リリィ・アース握り寿司・雅の大トロ鮪を試食してみる……。
「……ん、んん。ヤッバ……。……。もう無いよ、溶ける」
 吉田綾乃クリスティーはリリィ・アース・アイス・カフェラテを試飲してみる……。
「ああ、うん……。別に。普通……。普通に美味しいけど」
 阪口珠美は、リリィ・アース握り寿司・雅の中トロ鮪を試食してみる……。
「……、溶けるとける! ……。とろけた」
 梅澤美波は黙り込んでいる稲見瓶を一瞥してみる。
「……、ねえ、ねえ見て」
 四人の乃木坂46の女子達は、稲見瓶を見つめる。彼は静かな寝息を立てながら、眠り込んでいた。

       8

「夏男殿、あの山の到達地点に、何と言ったか、はて、屋敷があると言っていたでござるな?」
 姫野あたるは、窓の外の森林風景を指差して言った。
「うん。オレンジハウス、ていう屋敷があるんだよ。ヘリポートもあるし。ほら、夕君のお父さんの、ウパっていうあだ名なんだけどね、ウパ達がヘリコプターで昔そこに降りて、オレンジハウスと、山を下りた処にちょうどある、このセンターを使ってたんだよ」
 夏男はキッチンでインスタントのアイス・コーヒーを作りながら、機嫌良さそうに答えた。
 姫野あたるは、旨そうに煙草を吸う。
「オレンジハウス……。なぜに、そういう名前なのでござるか?」
「ああ、あのね……。屋敷の、屋根と壁が、全部オレンジ色なんだよ。だから」
「ほう……、それはそれは、ハイセンスでござるな」
 二千二十二年九月某日。――姫野あたるは〈センター〉に連泊していた。今日で三日目になる。
 姫野あたるは木製の壁掛け時計を見上げる。時刻はAM11時過ぎであった。
 夏男はグラスに淹れたアイス・コーヒーを縁を隠すような鷲掴みで二杯、キッチン・テーブルに置いた。
「ああ、いただくでござるよ、夏男殿。かたじけない」
「そのさあ、ひなちまって人、そんなにセクシーなのう?」
 夏男は不気味な笑みを浮かべて、煙草を用意しながら、姫野あたるの言葉を待つ。
 姫野あたるは、煙草の煙をいっぱいに吐き出してから、夏男に微笑んだ。
「んふふん……。それはそれは、もう……、せぇくすぃ~~、でござる。幼き頃からセクシーなオーラの持ち主でござったのでござるが、まずはセクシーではなく、ひなちまを語るのならば、鉄棒、でござろうな」
「てつぼう?」
 夏男は不思議そうに、煙草の火を付けながら言った。
「うむ。ひなちま殿と言えば鉄棒なのでござるが、まず、ひなちま殿は乃木どこという番組で、足掛け回りを披露したのでござる。なのでござるが、これがまた、鉄棒に右脚を掛けて、前にぐりんぐりんと回転するのでござるが、これが必死すぎて、草っ‼」
 夏男は貰い笑いをする。姫野あたるは幸せそうに笑っていた。
「まだあるでござるよ。夏男殿、鉄棒と言えば、誰でござるか?」
「え? 樋口日奈さん、でしょう?」
「ご名答。そうなのでござる。ひなちま殿は、くるりんぱ、という鉄棒の技も持っており、それは鉄棒の棒の上にて座って、後ろにくるりん、と回り、パっと下りる、という必殺技なのでござるが……。ひなちま殿の地面への手の付き方が、ズダン! という激しい下り方で、大草原っ! これがまた、危険すぎたでござるよっ森っ!」
「ははは、いいね~、それ。ねえ……、笑ってるのそれ?」
「草っ!」
 時刻が正午を過ぎても、姫野あたるの思い出話は終わりをみせなかった。夏男も調理をしながら楽しく聞いている。
 クーラーの温度は、24度に設定されている。室内温度計には、25度と表示されていた。
「ひなちま殿は心の優しき人でござるよ。夏男殿、以上の優しさの持ち主でござるかもしれぬぞ、夏男殿」
「俺は優しいのとはちょっと違うよ~」
 夏男はあんかけチャーハンを調理中であった。姫野あたるは、満足げな笑みを浮かべて、窓の外の眩しい景色を見つめる。
「ひなちまは友人やメンバー、スタッフ様やファンにだけでなく、家族にも優しいでござるよ~~」
「へ~え。いい子だね~、聞いてると惚れ惚れするねえ」
 姫野あたるはにこ、と笑い、また窓の外を見つめて、話を続ける。
「お父さんの事は『おーちゃん』と呼んでいるそうでござる……。これは、一般的に公表している情報なのかどうか、小生は直接ひなちま殿に聞いたゆえに、一応、情報は秘匿して下され、夏男殿」
「は~い」
「長女殿の事を『ねーね』と呼び、次女殿の事を『ゆずちゃん』と呼ぶそうでござる。お姉ちゃんとは、呼んだ事がないとの事でござった」
「あ、仲良しそうだね~? 俺も妹の事は名前呼びだよ、妹はお兄ちゃん、て呼んでくるけど」
「夏男殿の妹さんの名前は、なんというのでござるか?」
 夏男はフライパンを振りながら、鼻歌をやめて答える。
「馬子(まご)美(み)だよ」
「ほおう、まごみ殿。どういう字でござるか?」
「馬の子は美しい、だよ」
「馬の………。そ、そうでござるか」
 姫野あたるは、箱から煙草を一本抜きとって、指先につまんで、100円ライターで火をつけた。
作品名:恐竜の歩き方 作家名:タンポポ