恐竜の歩き方
齋藤飛鳥が『私は特に優しさを出す事もなかった』と照れ隠しすると、樋口日奈は『飛鳥は遠くから見守る優しさ、涙のわけを聞かない優しさだったよ』と明かした。
樋口日奈は改めて語り始める……。
『最近も私が歌番組で1か所、間違えて落ち込んで泣いていた時に、家に帰ってから一番に連絡をくれたのは、飛鳥だった。優しいなと思いましたよ』
齋藤飛鳥は言う。
『声を大にして言ってくれる?』
そう笑いを誘った齋藤飛鳥に、秋元真夏が『それいらないよ』と、仲の良いところをみせてくれた。鈴木絢音は『いいですね、1期生の優しさの連鎖みたいな感じで』と羨(うらや)んでいた。
樋口日奈は、笑顔で、鈴木絢音は『同期じゃないけど、同志』だとも語った。
VTRが流れる――。『気づいたら片想い』は、MV撮影で、涙を流すシーンがあり。選抜のメンバーは次々に涙していて、泣けない自分に『これが選抜メンバーとアンダーの差か』と深く心に思った一曲であると当時の思いを赤裸々(せきらら)に語ってくれた。
樋口日奈がセンターで『気がつけば片思い』が始まる――。4期生とこの思い入れの深い楽曲を歌う……。樋口日奈は美しく、これを歌い踊り切った。
田村真佑のMCで、樋口日奈と4期生達のトークが始まった。
樋口日奈にとって『気づいたら片想い』は初選抜、初Mステ出演でもあり、やはり特別であったと語る。このチャンスを何か残したいなと思っていたとも語ってくれた。
MV撮影では、泣くシーンで、泣けなくて、選抜のメンバーはぽろぽろ泣いていて、すぐに応じられる力が必要なんだと、学びのあった一曲だと語ってくれた。
当時、樋口日奈が『気づいたら片想い』を歌った時期と、4期生の今の時期が同じぐらいな事もあり、一緒に歌いたいなと思ったと、彼女は笑顔で語った。
27枚目シングルで、樋口日奈が『賀喜ちゃんみたいなしっかりした子はちゃんと見てるし、いつでも話しかけてきていいんだよ』と言ってくれて、樋口日奈の一語一句に助けられてきたと、賀喜遥香は泣きながら伝えた。
日産スタジアムでは、樋口日奈の笑顔に沢山救われたと、柴田柚菜は語ってくれた。
弓木奈於は『今何してきたんですか?』と、最初に樋口日奈にその質問をしたと語った。三日間、樋口日奈のマネをして生活してみたが、無理であったと、笑いを誘いながら一所懸命に伝えてくれた。
樋口日奈のセンターで『あの日 僕は咄嗟に嘘をついた』が始まる――。名曲と名高いこの曲を、樋口日奈のセンターで、乃木坂46のアンダーメンバーが全力で表現する……。
「ううううおおおお! この曲聴くと泣くーーっ!」風秋夕は発狂する。
「っはは、確かに名曲中の名曲だ」稲見瓶は笑った。
「それとーも好きにーなあーた日ぃーーっ!」磯野波平は共に歌っている。
「うう、ううう、ひなぢま~~っ‼‼」姫野あたるは耐えられずに泣き崩れた。
「ひなちま~~! 鳥肌立つ~~っ!!」来栖栗鼠は眼を見開いて喜こぶ。
「ひなちま……、俺、俺……。ひ~な~ちぃまぁぁ~~っ!」天野川雅樂は泣き叫んだ。
「ええ、ええ、こういう迫力が魅力の曲がこの曲です! ひなちゃんさーん!」駅前木葉は大きくサイリュウムの手を振る。
「アンダーの歴史もくんでくれるのですね……、わたくし、素直に、感謝しますちまちゃん。アンダーが大好きなのよ……」御輿咲希は胸に手を当てて、その頬に涙をこぼした。
「い~い歌ね~~……。一生聴いてられるわ」宮間兎亜は興奮しながらも、うっとりとした瞼を、巨大スクリーンに向けた。
「………」比鐘蒼空は、声を失って呆気(あっけ)に取られている。
伊藤理々杏のMCで、樋口日奈とアンダーメンバーでのトークが始まった。
この曲は私を奮い立たせてくれた曲――。
MV撮影で、全然私映ってないない――。
アンダーメンバーは色んな葛藤がある――。
当時は、今もそうだけど、前に進まなきゃと思っていた――。
アンダーライブを観て、更に乃木坂を好きになった――。
そう聞く度に、居場所を見つけられた――。
どうしてそんなに強くいられたのか――。
辛い時期に卒業を考えちゃうと、乃木坂が嫌な場所に思えてしまうから――。
楽しいと思える瞬間が必ず来るから――。
マイクを持った時、すでに、矢久保美緒は、泣いていた。
中村麗乃は『滑走路』で樋口日奈とシンメになれた事が嬉しかったと、いつでも樋口日奈が太陽のような笑顔で包み込んでくれて、沢山、救われてきたと、涙ながらに語ってくれた。
北川悠理は、樋口日奈にお下がりの洋服を貰った事が本当に嬉しい事だったと、樋口日奈の優しさに触れた瞬間であったと、樋口日奈がいるからこそ、こんなにも温かい空気が満ちているのだと語ってくれた。
向井葉月は、樋口日奈の卒業についてを語ってくれた。樋口日奈に憧れた良い部分を吸収したと。樋口日奈を必死に追いかけていると。これからもずっと憧れ続けると語ってくれた。
最後、向井葉月がどうしてもききたかった質問で『家で何着てますか?』と、樋口日奈にに対して問いかけた。樋口日奈は『ユニクロの、パジャマ』とにこやかに答えていた。
樋口日奈のセンター曲『シークレットグラフィティー』が始まった――。可愛らしいこの楽曲を、乃木坂46のアンダーメンバーで、天使の舞いのように踊って歌い見事にパフォーマンスする……。伊藤理々杏が『手拍子お願いしま~~す!』と『もいっかい!』と『もっと~~!』と煽(あお)った。会場のオーディエンスに手を振っていく樋口日奈……。
「僕はダーーリンっ‼ ひなちまはリンダっでござる~~っ!!」姫野あたるは最強の大声量で大声援を叫んだ。
「うおっ、……なんだこいつ、泣きながら……」磯野波平は姫野あたるの大声に一瞬ひるんでから、己も負けじと大声を出す。「俺がダーリンでひなっちまがリンダだぜーーっ!」
「リンダーーーっ‼」風秋夕は笑顔で大興奮する。
「ひなちまは、本当に、美しいね……」稲見瓶は必死でオレンジと紫色のサイリュウムを振る。
「僕の青春半分くれてありがと~~ひなちま~~っ!!」来栖栗鼠は涙ぐみながら叫んだ。
「リンダあぁーーーっ!!」天野川雅樂は、夢中でサイリュウムを振り上げては、振り下ろす。
「ダーリン泣きすぎ! ま無理も無いか。ひなちまーーっ! リンダっ!」風秋夕は無邪気に微笑みながら叫んだ。
「やっぱりこの曲が最強ですね、ひなちまさんは!」駅前木葉は巨大スクリーンに眼を焼き付けている。「永遠のマドンナ、その名は、リンダです!」
「駅前さんやめて泣いちゃいますから……」御輿咲希は指先を折り曲げて涙をぬぐう。
「ひなちまーーっ! 素敵よーーっ!」宮間兎亜は満面の笑みで叫んだ。
「ひなちまーー!!」比鐘蒼空は無意識に叫んでいた。夢中になってサイリュウムを振り下ろしながら……。
樋口日奈のセンターで『思い出ファースト』が始まる――。樋口日奈と共にこの楽曲を歌うのは、もちろん3期生――。
磯野波平は一瞬にして心の底から打ち上げてきた感動の大波に、悲しみに負けぬようにと、強く顔をしかめて、樋口日奈を見つめた……。