二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

恐竜の歩き方

INDEX|27ページ/32ページ|

次のページ前のページ
 

 今頃よ、後悔ってするんだな……。俺は果たして、ひなちまに、好きだって、ちゃんと言ったかな……。何回ぐらい、言ってきたのかな、なあ、ひなちまよ……。
 本当は抱きしめて、それから、抱き上げて、くるくる回りてえんだぜ……。
 俺は勉強もろくすっぽしてきてねえ馬鹿だからよ、愛情表現なんて、それぐらいしか知らねえし、できやしねえ。
 ひなちまがアンダーん時、俺はアンダーだって選抜だって、どこにいたってひなちまが大好きだっつって、抱っこしてやれたかな……。
アンダーと選抜のはざまで思い悩んでるひなちまを見てきた。悩んでんのも、辛いのも、笑ってたけどな、実は知ってたぜ……。
 俺は、ひなちまに何をしてやれてきたかな……。
 なあ、ひなちまよ……。
 行くんだろ?
 11年、つったか。もうそんな経ったんだってな。ひなちま、ファーストシングルの個人PVで、ギャルんなってたなあ。あれん時が中坊だもんな。俺もおんなじぐれえのガキだったんだもんな……。
 ひなちまが、大っ好きだ………。
 もうな、それは世界中の誰でも知ってる感情で、たぶん、世界一最高の感情だぜ。
 それが、俺のひなちまに思う、大好きだ。
 俺も一緒に行くからさ、大丈夫だぜ。ちゃんとついて行くからよ。
 幸せになってもらいてえんだ。本当は俺が幸せにしてえぐらいなんだけどよ、そこはご愛敬って事で、深堀しねえどく。
 ひなちゃん。元気でな。
 笑った顔、ぜってえ、忘れねえぜ。
 そりゃあそうだろうよ。これからも一緒なんだからよ。
 一回、バイバイな――。ひなちゃん……。
「ひーーなぁーーぢぃーーまぁぁーーーーっ!!」
 磯野波平は鼻水を垂らし、顔面を歪めて泣きながら、声を上ずらせて叫んだ。今度会う時は、笑顔でいる事を心で約束しながら……。

「ひなちまが思い出ファーストか……、ヤベえな貴重すぎて忘れられないな!」風秋夕は英雄のように口元を笑わせた。
「最高の夏の曲だぜ、砂浜の、タコスのキッチンカーだぜ?」磯野波平は、鼻をすすりながら、涙を浮かべて、稲見瓶にどや顔で説明する。
「歌詞を言ってるだけだろお前は。別に言わなくていい、知ってる」稲見瓶は巨大スクリーンを眺める。
「ああ、三期生とひなちま殿が……。泣けるでござるふううう~~!」姫野あたるは少し考えたら、強く実感が沸き上がり、そのまま号泣した。
「ひなちまーーっ! 与田ちゃーーん!」来栖栗鼠は汗をそのままに、笑顔で楽しそうに叫んだ。
「ひなちまあぁーーーっ!」天野川雅樂も汗だくで叫んだ。
「ちなちま~~っ!! 梅ちゃ~~っん!!」御輿咲希は、精いっぱいで叫び上げる。
「この曲も、どの曲もね、結局は……。あたい達って、思い出に溢れてるのよね」宮間兎亜はにんまり、と笑って囁いた。
「ひなちまさ~~っん!!」駅前木葉は全力で叫ぶ。
「ひなちま……。ひなちまーー!」比鐘蒼空は無我夢中で叫んだ。


 駅前木葉は、樋口日奈の昔の面影と、今の姿を記憶の中で合体させる。どうしても、涙が発生してしまうのだった……。
 これが悲しみでないのなら、何がこの世界に涙を流させるのでしょうか……。
 傷がえぐれていくのではなくて、傷が癒されていくような、そんな悲しみ……。
 真面目でひたむきなその性格には、辛い事も多かった事でしょう。
 人の為に泣く事の出来るあなたは、本当に本当に、心が穏やかで、そして途方もなく優しい方でした。
 (引きとめてよ! 行ってしまうわ嫌よそんなの!)
 涙が証明しています。私はあなたを尊敬し、そして、愛しています。
 (行かないでよひなちゃん! 大好きなのよ……)
 大好きですよ……。
 (どこにも行かないと言ってよ! 誓ってよ!)
 あなたの11年間に、笑顔と涙の栄光がありました。
 全てが笑顔ではなく、全てが辛さではない。
 それが乃木坂46になるという覚悟、そのものなのだと教えられました。
 (大好きなのよぉぉ……、行っちゃ嫌ぁぁ……)
 これから先、あなたの旅も、乃木坂の旅も、きっと長く果てしなく続きます。
 (元気でね……。大好きよ、ひなちゃん……)
 私は決して見失わない事を誓いましょう。あなたと、乃木坂の、それらの未来が放つ光の中を、しっかりと進み歩きます。
 想いは尽きないですけれど、最後に、あなたへ……。
 11年、素晴らしい時間でした。
 ご卒業、おめでとうございます。ひなちまさん……。
「ひなぢゃ~ん、ひなぢゃん、ひなぢゃ~~ん!」
 駅前木葉は子供のように泣きじゃくりながら、俯いてメガネを外した。それから、巨大スクリーンに映る樋口日奈に、笑ってみせる。それが相応(ふさわ)しいと、なぜだか彼女が教えてくれた気がしたから……。

 梅澤美波のMCで、樋口日奈と3期生のトークが始まる。
 樋口日奈は『思い出ファースト』を選んだ理由として、『これ単純に好きだから、絶対にやりたかった』と語ってくれた。3期生は、1、2期を好きで来てくれた子達だから、今もモチベーション上がる――と語った。
 佐藤楓と樋口日奈がノギ英語を一緒にやっている時、樋口日奈が深夜まで話していた『生霊の話』が、今も思い出すと恐ろしくて眠れない、と佐藤楓は語った。
 与田祐希は、樋口日奈を人としても、アイドルとしても、尊敬しています。と語ってくれた。
 阪口珠美は、辛い時もいつも寄りそってくれて、明日から私は大丈夫かなと、近くにいないのは寂しくて不安になってしまうんですけど、明日からも頑張っていきます、大好きです――。と、泣きながら一所懸命に語ってくれた。
 梅澤美波は、3期生は、風当りとかに、負けそうになった時とかに、色んな処(ところ)で、樋口日奈の存在に助けられたと、涙ながらに語ってくれた。
 大好きです――と、皆がそう言っていた。
 VTRが流れる。
 久しぶりの選抜で歌ったのはインフルエンサー。
 強烈に憶えている。
 今の私達なら大丈夫。
 ああ、乃木坂で良かったと思える瞬間でした。
 その年、インフルエンサーはレコード大賞を受賞した。
 翌年、二年連続で、シンクロニシティもレコード大賞を受賞する事になる。
 樋口日奈のセンターで『インフルエンサー』が始まる――。赤に染まった空間にフラッシュライトが明滅する。今度は青く、白く、そしてまた赤く……、ステージは染まり、乃木坂46は歌う。
 樋口日奈のセンターで『シンクロニシティ』が始まった――。巧(たく)みなライティングの生み出す大迫力の可憐(かれん)な世界観の中、美しく舞い踊る歌姫達……。樋口日奈の笑顔が咲き乱れる……。

「うおおおおーーーっ‼ ひーなーちーまーーっ‼」磯野波平は汗を飛び散らせながらサイリュウムを激しく振った。
「ひなちま殿のセンターをこんなに見れるなんてっ、感無量でござるスタッフ様達殿、今野さん殿っ、みんなっ、あぁりがとう~~っ!!」姫野あたるは号泣する。
「熱いな、ひなちまーーっ超愛してるよーーっ!!」風秋夕は笑顔で楽しそうに叫んだ。
「えーすごーい、なんかあ、ひなちまって天使みたいだね~~!」来栖栗鼠は天野川雅樂に言う。
「おう! 天使なんだ、ひなちまは!」天野川雅樂は涙を浮かべて、微笑んだ。
作品名:恐竜の歩き方 作家名:タンポポ