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恐竜の歩き方

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 磯野波平の右隣りに座る稲見瓶が、抑揚無(よくような)く淡々(たんたん)と言う。
「デートでも構わないよ。実際に彼氏イベントもあるし。あれは多人数に対して、乃木坂は一人だし。要は同じだよね」

スペシャルサンクス・乃木坂46合同会社

「よーし、イーサン、映せるか?」
 宙に囁(ささや)かれた風秋夕の声に、電脳執事のイーサンのしゃがれた老人男性の声が応答した。
「しかし、一体、何が始まるのでござるか?」
 稲見瓶の右隣りに座っている姫野あたるが、不思議そうに風秋夕の方を見て言った。
「すぐわかる。ああ、イーサン、待て待て……。スットプな。お姫様の注文がまだだった」
 風秋夕はきょとん、と笑みを浮かべている樋口日奈に、開いたメニュー表を彼女の前のテーブルにずらした。
「俺らはクリアアサヒもう呑み始めてるから、先にごめんね、ひなちま」
「ああ、ううんそれは大丈夫~だけど、……なに、のーもーおーかぁーなぁ~……。じゃ、最初は私もクリアアサヒがいいな。イーサン」
 畏まりました――と、電脳執事のイーサンが応答した。
「ひなちまさん!」
「はい?」
 右の方を振り返ると、最も右側の席に、クリアアサヒをかかげている駅前木葉の笑顔があった。
「せんえつながら、私もいま~す。うふふ、笑止!」
「木葉ちゃーん、えっへへ怖いからぁその顔~……」
 店内のBGMが乃木坂46の『やさしさとは』に変わった頃、樋口日奈のファースト・ドリンクが〈レストラン・エレベーター〉にて到着した。
 5期生達も席から離れ、ドリンクを片手にそれぞれが樋口日奈へと「乾杯」の声を届けに来た。風秋夕達も同時に、盛大な「乾杯」を唱える。
 風秋夕は笑顔で言う。
「イーサン、映してOK。よろしく頼む」
 樋口日奈はクリアアサヒの炭酸の効いた苦みを、喉の奥へと爽快に流し込んで、眉を顰めて大きな息を吐いた。その眼はカウンター上部に設置されている大型ディスプレイに向けられている。
 大型ディスプレイに映像が流れ始めた……。
 私服姿の、遠藤さくらが映し出される。

『昨日の樋口さん……、ほんっとうに綺麗だったなぁ……。いつでも前向きな樋口さん。どれほどの苦労を乗り越えて、どれほどの感情と向き合ってきたのかは計り知れませんが、ずっと乃木坂を、太陽のように照らしてくれました……。樋口さんほど、心が綺麗な人に出会った事がありません、一緒に活動できて幸せでした!』

 樋口日奈は「わあ。えぇ~いつ撮ったのぉ~?」と驚いている。
 大型ディスプレイに、私服姿の、梅澤美波が映し出された。

『とってもとっても良い日でした……。みんなの涙と、モニターを見守る姿を見ていたら、日奈さんがどれほどの愛を一人一人へ注いでくれたのかが、身に沁みて分かる時間でした……。これほどに愛に溢れた瞬間なかなかないです! 凄く余韻が残っていて、今はまだ、ぽわ~っとしています。ああ、日奈さんが楽屋にいない事に気づくと、どんどん実感していくんだよなあ~……。それが当たり前になるのかなあ……。寂しくてたまらないね。誰もが憧れちゃうよ~。……本当に、理想の女性で、人として心から尊敬していました』

 大型ディスプレイに、田村真佑が私服姿で映った。

『日奈さんが大好きなんです! そっとここで愛を伝えておきます』

 樋口日奈は笑顔で「なぁにぃ~?」とまだ驚いている様子であった。
 大型ディスプレイに、向井葉月が映し出される。彼女も私服姿であった。

スペシャルサンクス・秋元康先生

『昨日のライブが終わってから、少しだけ連絡を取らせてもらったけど、言葉の一つ一つまで全て憧れです……』

 樋口日奈の目頭が、熱くなり始めていた。風秋夕はくす、と微笑むと、また大型ディスプレイを見上げる。皆も近くにある大型ディスプレイをそれぞれ見つめている。流れている内容は同じものであった。
 大型ディスプレイに、賀喜遥香が私服姿で映し出された。

『昨日は日奈さんの卒業セレモニーでした! 日奈さんがとっても綺麗で、ずっと、見惚れていました……。見つめてる私を柚菜ちゃんが撮ってくれていました。日奈さんは本当に本当に優しくて素敵な方で、こんな人になりたいとずっと思いながら一緒に活動させて頂いていました……。乃木坂46で会えなくなってしまうのは寂しいですが、これからもずっと大好きですし、ずっと憧れです!』

 樋口日奈は笑った。涙をぬぐいながら。
 大型ディスプレイに、私服姿の、佐藤璃果が映し出される。

『日奈さん……、あんまり離せなかったけど、でもやっぱりその存在に、支えられてた気がする。優しい日奈さん、お疲れ様でしただね、最後に同じステージに立てて良かった! お仕事行ってくる! ねえこれ、誰が観るやつ?』

 樋口日奈は声を出して笑う。
 大型ディスプレイには、続いて私服姿の、伊藤理々杏が映し出されていた。

『大好きな先輩達が卒業されるたびに、寂しい気持ちでいっぱいで、最後のライブの時は、頭が痛くなるくらい泣いてしまうけど、前にしっかりと進まないとですね! 日奈さん綺麗だったなぁ……』

 大型ディスプレイに、私服姿の、柴田柚菜が映る。

『日奈さんの卒業セレモニー…凄かった……。日奈さんの笑顔ってなんであんなにパワーあるんだろう……。まだどこかで会えたら嬉しいな~』

 樋口日奈は「えへへ、また会おう~」と涙をぬぐいながら笑っていた。
 大型ディスプレイに、私服姿の佐藤楓が映し出される。

『大好きな大好きなちまちゃん……、機能めちゃくちゃ綺麗だったなあ。…ずっと見惚れてた……。MCでは変なエピソード話したけどちゃんとした思い出もあるからね! ……みんなを優しく包み込んでくれたちまちゃん。抱きしめてくれた時の安心感は凄かったなあ。なんでも打ち明けられる先輩、本当に心が綺麗で一緒に涙してくれたり、もしかして今日からどうしようっていう気持ちがまだぬぐえない……。私も誰かに温かさを与えられる人になれたらなあと思うけど、なれるかはまだわからない……。けどちまちゃんに貰ったものを大切に、これからも前を向いて行きたいな、本当に大好きな先輩!』

 樋口日奈は「かえでぇ~……」と愛しそうに呟(つぶや)く。
 大型ディスプレイに、私服姿の、筒井あやめが映し出される。

『日奈さんお卒業おめでとうございます。誰もが憧れる女性です。私もその一人でぇ、日奈さんのような、優しくて、強い人になりたいです。また初詣(はつもうで)一緒に行ってください! と最後に言えました! 行きましょうねえ~』

 樋口日奈は、微笑んで「うん行こう~」と囁いていた。
 大型ディスプレイに、私服姿の、久保史緒里が映し出される。

スペシャルサンクス・今野義雄氏
作品名:恐竜の歩き方 作家名:タンポポ