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齋 藤 飛 鳥

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 齋藤飛鳥と生田絵梨花は、ほぼ同時にそちら側を振り返っていた。木製カウンターにサンタのピエロの姿はもう無い。
 齋藤飛鳥は顔を前に戻して言う。
「え誰? 誰だったんだろ……」
 伊藤万理華は顕在的なまったりとした視線と口調で言う。
「夕君とぉ、…波平か、は、外にいたから~違うとして。誰だろうね」
 中元日芽香はストローでアイス・コーヒーを飲みながら、小首を傾げて言う。
「地下二階には、ピエロいなかったの?」
 齋藤飛鳥と生田絵梨花は、互いに顔を見合わせて言う。
「いた!」
 生田絵梨花は、今度は単独で言う。
「ピザだ……。ええ! …誰ぇぇ?」
 店内にカウ・ベルの周波数の高い音が鳴った。
 開きっ放しのドアから、堀未央奈と北野日奈子が入って来た。
 堀未央奈は齋藤飛鳥を発見して、大きな瞳を驚愕(きょうがく)させて微笑む。
「飛鳥! いた」
「やっほやっほー」
 齋藤飛鳥は軽い口調でそう答えてから、立ったままでミャンマー・プレミアム・ビールを呑んでみた。コクと喉越(のどご)しのバランスがよく、甘みがやや強めで、なかなかに吞みやすかった。
 北野日奈子は笑う。
「生田さんもいるじゃん」
「はーいいるよ~~ん」
 生田絵梨花も、シュバルツ・ビールを呑む。重めの口当たりだが、ビール好きには間違いなく虜(とりこ)となるような味であった。
 入り口からは、続いてぞろぞろと元乃木坂46二期生の集団が入って来た。
 相良伊織は、木製の丸いテーブル席に、中元日芽香を見つけて声を上げる。
「あ~~ひめたん、ここにいたのぉ~……。あ、飛鳥さん。飛鳥さんいる! らんぜ飛鳥さんいるよ」
「え~どこ~? ああ、飛鳥さんだ~、わーいまた会えた~、メリークリスマ~ス」
 山崎怜奈はにやけて、齋藤飛鳥と生田絵梨花に片手を上げる。
「こんばんはー、飛鳥、いくちゃん。おお、なんかもっといるぞう?」
 佐々木琴子は入り口付近から前に出てきて、ぺこり、とお辞儀をした。
「メリークリスマ~ス……」
 鈴木絢音は、佐々木琴子の横から顔を出した。
「あ~、メリークリスマス」
 そのキャンドルの明かりに保たれている店内に『メリー・クリスマス』の挨拶が花咲いた。店内のBGMはダニー・ハサウェイの『ディス・クリスマス』に移り変わっていく。
「うちら焼肉食べて来るから」
 生田絵梨花はそう言って、呑み干したグラスをカウンターに戻しに行った。
 堀未央奈と北野日奈子が、立ちっぱなしでミャンマー・プレミアム・ビールをちょびくりと吞んでいる齋藤飛鳥に歩み寄ってくる。
 堀未央奈は甘えた声と表情で言う。
「え~~ん、飛鳥行っちゃうのぉ? せっかく会えたのにぃ……」
 齋藤飛鳥は何とも言えない哀愁ある無表情で答える。
「うん、焼肉がな……」
 北野日奈子はカウンターを指差して言う。
「えーここでも牛タンシチュー食べれるよぉう? パンの中に入ってる奴」
「ほー、あでも、それも美味しそうだなぁ……。まあ、でも、肉がね……」
 生田絵梨花は新しいビールを持って戻って来た。またドイツ産のシュバルツ・ビールである。
「はい行くよ、飛鳥」
「はーい。じゃあね、ふふ」
 堀未央奈は悲しそうに言う。
「ぴえーん、じゃあね……」
 北野日奈子は鼻筋に皺(しわ)を寄せて二人を睨(にら)んだ。握った拳で、ぶつマネをしている。
「じゃあね! また今度ね!」
「はーい」
 ドアから出ると、またドイツの何処かの広場のような街並みが視界に広がった。洒落た造形のベンチには、もう風秋夕と磯野波平の姿は無かった。
 代わりに、そのベンチには、伊藤純奈と渡辺みり愛が座っていた。
 生田絵梨花は、二人の手前に行って、声をかけた。
「メリークリスマス」
 伊藤純奈と、渡辺みり愛が、笑顔に更に笑みを加えてそちら側を振り返った。
 伊藤純奈はハンサムに微笑む。
「メリクリ。おお飛鳥いるじゃん」
 渡辺みり愛も、齋藤飛鳥を大きな瞳で一瞥した。
「あ~すかちゃん、元気ぃ?」
「ひっひ元気」
 齋藤飛鳥はなぜだか大笑いした。生田絵梨花は、そんな齋藤飛鳥の手を引っ張る。ドイツを模した街並みは、どのログハウスもオレンジ色にライトアップされていて、雰囲気は上々である。
 二人は、大きな十二メートルもあるホワイトのクリスマス・ツリーを一瞥しながら、その石畳(いしだたみ)の街並みを、元乃木坂46一期生達の待つ、炭火焼きテーブルまで引き返した。
 待ち構えていた仲間達が、席を空け、二人を待ちわびたかのように快(こころよ)く受け入れた。
「飛鳥、カルビ、いける人?」
 齋藤飛鳥は眉を顰める。
「無理……、油、ちょい、もう無理かな……、脂っこいのは……」
「じゃあ、ハラミ? タンとか?」
「うん。ふふ、あじゃあ、飛鳥ボーダー、焼いてあげる」
「飛鳥ボーダー? んふ何それ……」
 立ち上がった白石麻衣が、巨大な炭火焼きの鉄板網の上に牛脂を滑らせながら、二人を一瞥する。
「ななみん、飛鳥、好きなの焼いちゃって~……」
 齋藤飛鳥は「はーい」と返事をし、前の席を見つめる。
「……。焼いてよ」
「あれ、飛鳥ボーダーってやつ、やってくれるんじゃなかったっけ?」
「ああ、っはっは、やりますぅ?」
「よくがんばったね」
「…へ?」
「11年…、よくがんばったね………。ずっと飛鳥の事見てたよ…、ここまでよくがんばった。お疲れ様」
「……そういうの、あのいらないんで。ちょ、今日は無しで……」
「何泣いてんだよ!」
「…んん~!」
 齋藤飛鳥は、くしゅっと苦笑して、その頭を殴るマネをした。その間(かん)に、涙がこぼれたのかどうかは、確かめる事は野暮(やぼ)だろう。

       12

 二千二十二年十二月二十五日、クリスマスの夜。〈リリィ・アース〉は今宵も、一際賑やかな聖なる夜が続いていた。
 地下四階のクリスマス・マーケットには、広場の象徴として、中央の星形に五台並んだエレベーターから少し離れた場所に、数多のオーナメントと発光ダイオードで飾られた高さ十二メートルにもなるクリスマス・ツリーが立っている。
 齋藤飛鳥と生田絵梨花は、二日目にして、ようやく地下四階のクリスマス・マーケットの街並みを歩く事ができていた。
 小規模の人だかりを作っているログハウスを遠目に見つめて、齋藤飛鳥は、生田絵梨花を一瞥した。
「ねえ、お腹減りませんか?……。あそこ、なんだろうね。食べ物かな?」
 生田絵梨花は、眼を凝らして、その店を凝視する。
「んん~~、行ってみよう! 行く価値はあるわよ。行って違ったら、もう地下三階の焼肉行けばいいんだから」
「ふふ、そだね」
 ライトアップされたログハウスの前には、バカンス色の洒落たベンチが二脚あった。一脚に賀喜遥香と早川聖来と筒井あやめが座っている。トナカイのカチューシャをした風秋夕も、筒井あやめの隣に座っていた。二脚目のベンチには林瑠奈と矢久保美緒と金川紗耶が座っていた。
 齋藤飛鳥は賀喜遥香に近づいた。
「何飲んでんの?」
 賀喜遥香は元気な笑みで答える。
「クリスマス・メルティ・ホットショコラ・ドリンクです。美味しいですよ」
「おーおー、こじゃれたもん飲んでますなー……、それいくら?」
作品名:齋 藤 飛 鳥 作家名:タンポポ