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齋 藤 飛 鳥

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 磯野波平は大興奮で、テレビの前に腰をかがめて立ちはだかり、叫んでいる。
「シーソーに乗っている時は、な! 相手にまか~せ~た~の前の、シーソーに乗おってる時は~、な‼‼ 飛鳥ちゃんばっちり映ったろうが言った通りだろうがあ‼」
「あんたのケツで飛鳥ちゃんの笑顔も見えないでしょうがあ~っ‼‼」
 月野夕はソファから嫌そうに興奮する。
 姫野あたるはテレビが見えにくかったので、磯野波平の横に移動した。
「いやあんたもかよ姫野さんっ、見えない、つってんだろうが馬鹿たれぇっ‼‼」
「ほい僕は僕らしく普通で、いられるのは~、な! なぜだろう? の前のいら~れる~の~は~、のとこな飛鳥っちゃんな‼‼」
 稲見瓶は笑う。心の底から笑ったのは、いつぶりになるだろうか。今日という日に、四人の親友と就職という財産が手に入った。それを導いたのは、紛れもなく、乃木坂46の存在だった。
 磯野波平は月野夕に尻を蹴り上げられても、微塵も気にせずに絶好調で叫ぶ。
「はい映った~気の合う友達と思ってる~、のとこな‼‼ おらな? 言ったろ?」
 月野夕は溜息を吐く。
「録ってるからいいか………。馬鹿者め……」
 月野夕は、南側の大型ソファに一人で着席する。北側の大型ソファに座る稲見瓶は、共にそのソファに座る駅前木葉に語りかける。
「六回目になりますね、飛鳥ちゃん。ぐるカー、制服のマネキン、バレッタ、命は美しい、太陽ノック……、今、話したい誰かがいる。個人的に、俺と夕は、最初に好きになった乃木坂のメンバーに、飛鳥ちゃんがいるんです。その飛鳥ちゃんの選抜入りは、お祭り騒ぎをしたくなるというか……。この特別な気持ちは、はたして、箱を名乗っててもいいのかな……」
 駅前木葉は微笑む。
「ええ、もちろんです。単推しになってもライバルは沢山ですよ、ふふ。飛鳥ちゃんさんはこの世に一人しかいませんから」
 稲見瓶は磯野波平と姫野あたるの背で、見えにくいテレビを見つめる。
「ほいまぎれもない過去の答えがあるぅ、のとこなっ‼ 飛鳥っちゃん左っからパーンなっ‼」
「あんたテレビ見た事ない人の騒ぎ方でしょうよそれえぇ‼‼ 見えねんだよ馬鹿野馬鹿平‼‼」
「なんか飛鳥ちゃんデイでござるなあみんな、かっはっは草っ! 選抜入りやっぱり嬉しかったでござるな! 期待の星、でござるっ!!」
 稲見瓶は、ふと、月野夕の視線に気づいた。
 月野夕は、口元を引き上げて言う。
「最強の夢をみたんだ………。俺達でファン同盟やって、時間が許される限り、乃木坂を推し続ける……。そんでさ、いつか、飛鳥ちゃんが、シングルのセンターやるって未来だよ……。叶うと思うか、イナッチ」

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 二千二十二年十一月五日、乃木坂46公式ユーチューブ・チャンネル『乃木坂配信中』にて、純白の衣装に身を包み、カメラの前に一人立った齋藤飛鳥の凛々しく整ったその姿が、彼女のその毅然とした態度を反映しながら、全国へと生配信されている。

『こんばんは、齋藤飛鳥です。改めまして、私は約11年滞在した乃木坂46を卒業する事に決まりました……。発表してすぐに生の声をお届けできるは思っていなかったので、さすがにソワソワしています。私はずっとですね、自分の事をお話ししたりするのが恥ずかしいなという気持ちがありまして』

『皆さんに『飛鳥、好きにしゃべっていいよ』って時間を頂けるのって、ツアーの時以来かなと思うと、恥ずかしいような気もするのですが……。恥の気持ちを大事にしたいなぁというふうにも思っていたんですが、自分の中の大事な気持ちを皆さんにお話ししたりする時に、なんかモジモジしたり、恥ずかしいなぁと思っているばっかりじゃいけないなぁと思って……、そんな事も、11年で学べました』

『今年の全国ツアー、こうやってこの景色を見られるのも最後になるのかもしれないと思っていたから、いつにも増してお客さんとか、メンバーの、楽しそうな姿とか見てました……』

 そう言った齋藤飛鳥は、込み上げた涙を堪えるようにして、後ろを向いた。

『今年は特に、色んな子が話しかけてくれて、楽しかったんですね、すごく……』

 そう言った齋藤飛鳥は、ライブ会場の煌びやかな風景などをひとたび回想すると、再び深い情愛に誘われ、涙した。

『色んな事が、1つ1つ、大切な思い出になりました……』

 途中、涙を堪えきれず、カメラに背中を向ける彼女は、その溢れる涙を何度も何度もぬぐい、言葉を詰まらせながら、カメラの背後にて温かく撮影を見守るメンバー達に眼を潤ませながら……。

『私がしゃべってるここに……、メンバーがいっぱい並んでて、ちゃんと寂しいなぁって……。卒業決めてから、初めて涙が出ました。あぁ…なんか、寂しくなっちゃった』

 齋藤飛鳥は、両手で涙をぬぐう。

『大切なみんなに、大切な時間をもらって、私を送り出す為にみんな色んなふうに動いてくれていて…、今から披露させて頂く楽曲も、みんな一生懸命フリ入れしてくれて、すごく素敵なものができました』

 齋藤飛鳥は、その表情と共に、思いを一新と、切り替える。

『ちょっと泣くのはもうこのへんにして、せっかく作れた素敵なパフォーマンスを、皆さんにいい形でお届けしたいと思います……。じゃあ、行きますね。――泣いたの、見なかった事にしてもらっていい? 皆さん、心して下さいね。それでは聴いて下さい。『ここにはないもの』……』

 ――設楽修氏――
『いや、もうついに来たかですよね。齋藤飛鳥ちゃん辺り、いわゆる看板というかね、それぞれ看板ですけど、一時代を築いた人っていうかね。ちょっとショックですけど、これぐらい長くやっているグループって。宿命というか、長くやればやるほど、前の人達はいなくなるっていう、卒業の連鎖は止まらないっていうか。――飛鳥ちゃんと樋口と和田の三人って、13歳とかで入ってきたメンバー何だよね。秋元は、スタートが普通の一期生と遅れたんだよね。――まだちょっとあるけど、あっという間だよね。あとちょっとだけど、どうするんだろうね』

 ――日村勇紀氏――
『もうびっくりしちゃったよ! ――設楽さんがいうように、1つの興行団体って考えた時に、それは入れ替わりますよね。俺もショックだもん!』

 二千二十二年十一月六日の日付変更線の前――。乃木坂46ファン同盟のリーダー、風秋夕と、団員の稲見瓶、磯野波平、姫野あたる、駅前木葉の五人は、同盟の掟であるはるやまのスーツを着飾り、〈リリィ・アース〉の地下八階にある〈BRAノギー〉にてその時を過ごしていた。
そこは東京都港区の高級住宅街に、秘密裏に存在する巨大地下建造物〈リリィ・アース〉。その地下二十二階まである秘密空間には、乃木坂46、そしてそのOG達や、乃木坂46の関係者達が、こぞってよく立ち寄るという秘密のルールがあった。〈リリィ・アース〉は、文字通り秘密の花園なのである。
今宵はそこに、乃木坂46一期生の秋元真夏と、三期生の梅澤美波と、岩本蓮加と、伊藤理々杏と、阪口珠美と、佐藤楓が小休憩に訪れていた。
秋元真夏は己も座るカウンターの左隣に座っている風秋夕に、表情を豊かに険しくさせた。
作品名:齋 藤 飛 鳥 作家名:タンポポ