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齋 藤 飛 鳥

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「なんだねその不誠実な態度はあぁぁっ!!」
「まあまあ。ハッピーハッピーハーズデイ、磯野君。プレゼントは今度、自宅に郵送させてもらうよ。おめでとう、乾杯(かんぱい)しよう、みんな」
 稲見瓶は大型ソファに座ったままで、立ち上がったままで大興奮している中嶋波平を宥(なだ)めた。
「自宅って、住所知ってんのか? 俺の」
「いや、知らない」
「なぁぁめてんのかこのっ無表情っ‼‼」
 二千十六年八月六日の深夜AMを迎えると、しばらくしてから新感覚トーク音楽番組バズリズムが始まった。
 この日、バズリズムのメインゲストは、齋藤飛鳥をセンターとした乃木坂46。二千十六年七月二十七日に発売した15枚目シングル『裸足でサマー』を披露する。
 中嶋波平は絶好調で、大型液晶型テレビの前で大興奮したがっていたが、深夜という事も手伝って、月野夕の言いつけ通りに大型ソファから歯を食いしばって乃木坂46を応援していた。
 大型液晶型テレビの中では、センターという事もあり、齋藤飛鳥の姿が印象的に映し出されている。
「俺の誕生日に、はだサマだぜえ~~? 俺この曲いっちばん好きな~~」
 駅前木葉は、中嶋波平を一瞥して、含み笑いを浮かべた。
 姫野あたるは放送に夢中になりながら言う。
「飛鳥ちゃん殿がセンターでござるよ~みんな~~、なぁちゃん、まいやんと、強豪がいる中での大抜擢(だいばってき)でござる~……、いやはや、計り知れぬポテンシャル!」
 月野夕は画面に意識をのめり込ませながら囁(ささや)く。
「飛鳥ちゃん、可愛いぜ~……。世界1可愛いな……」
 中嶋波平は満足そうに言う。
「俺の嫁だかんな!」
 月野夕は、嫌そうな顔をした。
「十七歳って結婚できたっけえ?」
「はいうっせえ。俺のもの~~、飛鳥っちゃんはい俺のもの~~」
 月野夕は、座視で、溜息をついた。
 姫野あたるは叫ぶ。
「あああ、も~う、終わりでござるかぁ~? そうでござるかぁ~ふふん、い~い時間でござったあぁぁ~~。小生、今日はガードマンきつかったでござるよ、脚が臭いでござる、草!」
「もちろん先に洗ってあるんだろうな、姫野さん……。姫野さん、って、呼びずらいな? あたるだよね、名前」
 月野夕は明るい表情で、姫野あたるへと笑みを浮かべた。
 姫野あたるは笑みを返す。
「あたるでござる……。あだ名は、小生、ないでござるよ……。はは、もらったためしが無いのでござる」
「ダーリンな」
「ん?」
 姫野あたると、その場の全員が、月野夕の笑顔に注目した。大型液晶型テレビはバズリズムの番組を続行している。そのボリュームだけが今は絞(しぼ)られていた。
「うる星やつらってあるだろ? 高橋留美子先生だよ、犬夜叉の……。作者の高橋留美子先生の作品で、うる星やつらって、あるんだけど知らない? みんな……」
 月野夕のきょとん、とした顔を見つめ返しながら、ぱらぱらと、皆はリアクションを取り始めた。
「ええ、もちろん、知ってますよ」
「知ってんに決まってんだろうが、ラムちゃんだろ?」
「知ってるよ。鬼の人でしょ、シマシマのビキニを着てる」
 姫野あたるは、にっこりと笑っている月野夕に言う。
「小生が……、ダーリン? という、事でござるか?」
 月野夕は口元を引き上げて言う。
「ダーリンって呼ばれてるラムちゃんの旦那(だんな)さん、あれって、諸星(もろぼし)あたる、だろ? 姫野あたる、だろ? じゃダーリンでいいじゃん」
「しょ、小生に……、あだ名が………」
「今日からダーリンな」
 月野夕はそう言って、「似合ってんじゃん」と笑った。
 中嶋波平は「根暗、もよくねえ?」と顔をしかめて笑っている。
 駅前木葉は、「ダーリン、これからもよろしくです」と微笑んでいた。
 姫野あたるは、おろおろと情けなく微笑み、ガラス製テーブルに視線を落としていた。
「ダーリン……、史上最高のあだ名でござる……。く、くふぅ~~、小生は、今日からダーリンでござるぅ‼‼」
 稲見瓶は、微笑んで、リモコンでテレビの電源を落とした。
 楽しい時間は本当に早く過ぎる。それは『フロー』という状態に陥(おちい)っているからだ。『フロー』とは、物事に熱中していると、その時間は短く感じる、という状態を指す言葉だが、これはスポーツでいうところの『ゾーン』でもあり、俺はこの感覚をサッカーと乃木坂で覚えた。
 俺達が主観的に感じる時間は、脳がどのように働いているかで伸び縮みする。ぎこちなく感じる時間は長く、楽しい時間は短い。これが最初に覚えた『相対性理論』だった。
 本当にその通りだ。
 月野夕は、スマートフォンで、乃木坂46の『裸足でサマー』を流した。
 乃木坂46がくれた時間――。これさえあれば、乗り越えられない壁は無いのかもしれない。そう思えてしまうぐらいに、楽しくて仕方が無い。なんて強いパワーなんだ。単純に人を好きになるという事が、こういう事なのか。
 今の俺には、まだそれはわからない。乃木坂46以外で、人に惹かれたのは、身内以外は、ここにいる四人が初めてだから。
 人を好きになるという事は、どういう事なのか……。
 こんな時間は、いつまで続くのだろうか……。
 願うから、どうか、いつまでも……――。

 いつもの夏と違うんだ
 誰も気付いてないけど
 日差しの強さだとか
 花の色の鮮やかさとか
 何度も季節は巡って
 誰かを好きになる
 切ない入り口を…
 You know…

 オレンジ色のノースリーブ ワンピース
 サイドウォークで
 太陽が似合うのは君だ
 ルイボスティーを飲みながら
 なぜ 一人微笑むの?
 テーブルの下 さりげなく
 サンダル 脱ぎ捨てた

 裸足になってどうするつもり?
 そのまま どこかへ歩いて行くの?
 ねえ 何をしたいんだ?
 行動が予測できないよ
 他人(ひと)の目 気にせずに気まぐれで…
 そう君にいつも 振り回されて
 あきれたり 疲れたり
 それでも君に恋をしてる

 近くにいつも
 大勢いるよ
 男友達
 その中の一人が僕だ
 悔しいけどしょうがない
 告白もしてないし
 今の距離感 心地いい
 普通で楽なんだ

 それなら僕も 裸足になって
 一緒にどこでも歩いて行くよ
 何だって付き合うさ
 愛しさが背中押すんだ
 自分の気持ちは隠したまま
 そう君といると素直になれる
 欲しいものは前にある
 いつかはちゃんと話せるかな

 いつもの夏と違う
 君は気づいていないけど
 会っている回数も
 触れた指の引っ込め方も…
 何度も鏡を見ながら
 寝癖も直して来たこと
 すべてがぎこちない
 I know…

 裸足になってどうするつもり?
 そのまま どこかへ歩いて行くの?
 ねえ 何をしたいんだ?
 行動が予測できないよ
他人(ひと)の目 気にせずに気まぐれで…
 そう君にいつも 振り回されて
 あきれたり 疲れたり
 それでも君に恋をしてる

       4

 宮間兎亜(みやまとあ)は洗面所から戻り、柴田柚菜と林瑠奈と御輿咲希(みこしさき)の座るテーブルに座り直した。
作品名:齋 藤 飛 鳥 作家名:タンポポ