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ズッキュン‼‼

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 正直、先を見据えるというか、そういう事は当然できてた。理性による思考の普遍性(ふへんせい)と不変性を主張する思想は、啓蒙主義(けいもうしゅぎ)といおうか、その原義は『光』または『光で照らす事』だ……。自然の光としての理性を自(みずか)ら用(もち)いて、超自然的な偏見(へんけん)を取り払って、人間本来の理性の自立を促(うなが)す。俺の理想型は、それを無差別に見抜いちまう。
 それは、感覚的にいえば、特定の社会現象の論理的な典型をあらわす概念(がいねん)であって、単なる類型概念じゃない。とはいっても、理想型を用いての類型的把握(るいけいてきはあく)は可能だが……。
 そうだな、歴史的には、啓蒙主義時代の社会契約説の国家観も、この範疇(はんちゅう)に含める事は可能だな……。一般的に、未来を予感する俺のこの概念は、帰納法(きのうほう)や演繹(えんえき)によっては得られない、一種の発想概念だと考えられる。自然科学的定理が実験で確認される、経験事象からの飛躍(ひやく)を含んでいるみたいに、この概念自体も、社会現象の目的と動機から飛躍を伴(ともな)って導き出されてる。
 いわゆる、意味適合的方法だな。この理念的概念を定規(じょうぎ)のように社会現象の断面にそえて眺める事で、側面的に社会現象を性格づける事ができる。これをもって、具体的事象の発展過程や将来的な見通しある程度まで、この理念的概念にそって性格づけて予測する事ができる。
 方法的には分析的に社会現象の要素を一定程度まで分解して、その主要な部分を使って性格が明確に観察できる段階まで構築した概念が、つまりその俺の機能を勝手に使って先を見る根源であり、それ自体で理論的に完結した原始的存在で、それは時系列も含んでると考えられる。
 ごく一般的な社会現象は単一の理念的概念に基づくんじゃなく、もろもろの理念的概念の影響が考えられ、理念的概念からの逸脱度合いによってその性格把握ができる。一度理想的概念を設定すると、それを使って作業仮説や理論構築に必要な要素を抽出(ちゅうしゅつ)する事が可能だ。でも、俺が理念的概念と呼ぶそれは方法概念であり、本質概念の把握(はあく)の為に仮設された仮象的(かしょうてき)な概念だから、それそのものが社会現象の本質を捉(とら)えているという事は、保証されない。
 だけど根拠(こんきょ)みたいな、何か根源的な納得がある。それは統計的手法を用(もち)いて、理論的な裏付けを済ませて、己の弾き出す理論の進歩を促(うなが)してる。予測理論にも似たそれは、不思議と俺に嫌われない為にか、その働きを綺麗に論理化する。
その俺の中の理念的概念って奴は、時間の推移(すいい)と共に変化する偶然現象において、その数学的モデルとなる確率過程を探して、その構造を用いて未来の値をよりよく予測するという形式をとりたがる。それが結構いい感じに思える。理想的で、なんとも未来的でいいじゃない。
 未来は時間経過によって変動するが、定常状態にあるような偶然現象のモデルは、数学的にいえば確率過程の一種であって、それは、一部重複するけど、つまり時の経過に伴(ともな)って偶然性をもって変動する現象だけど、行き届いた飛躍的観測力と、あと主観的な思考を、確率変数を基盤としておけば、意外にも未来は丘の上から空を見上げるようによく見える。
 まあ、あんま見たくはないんだけどな。予測変換みたいなもので、上から塗り替えていかないとだな。簡単な理屈で、別の事に気を持たせればいいだけの話なんだが。それは卓上の理論かもしれない。美しいものから眼を離せなくなるように、未来は輝いているから。 
要約すると、【秋元真夏】ちゃんの乃木坂46卒業の悲しさからは、逃れられない。こんな時は、精神にATフィールドの張り巡らされた強靭な楽観が必要になる。
 必要になる、んだが……。
 風秋夕は、深い溜息を吐いた。
波平か……。こいつは確かに、鋼の根性と図太い神経で形成された馬鹿と筋肉の合成生物(キメラ)だ。卒業間近の【秋元真夏】ちゃんを目前にしても、なんら自然としてる。見習う部分もあるのかもしれない。1つ、波平とイナッチに頼ってみるかな。こいつらは、俺と違って強いから。
 頼りになる仲間じゃん……。たぶん、だけど……。
 比鐘蒼空(ひがねそら)は俯(うつむ)いている風秋夕を見つめる。比鐘蒼空は二十一歳の書店勤務のフリーターである。彼は今現在、地下二階の大空間が広がるエントランスフロアの、東側のラウンジにある四角く囲われるように並んだ巨人サイズのソファ・スペースにて、楽しそうに会話している秋元真夏と先輩ファン同盟の三人を存在感を消して観察している。
 磯野波平は横柄(おうへい)にソファにふんぞり返った。
「俺なあ、世界大会で、七位なんだぜ?」
 秋元真夏は吹き出すように眼頭に皺(しわ)を作って笑った。
「早口言葉で?」
「おうよ!」
 こんな単細胞(アメーバ)に頼っていいものかどうか、検討したいところだが……。
 風秋夕は座視を磯野波平に向ける。
「じゃやってみろ……」
 稲見瓶は、秋元真夏を見る。
「なんだっけ?」
 秋元真夏は「ん?」と顔を「ん?」にする。
 風秋夕が笑顔で補足(ほそく)する。
「早口言葉のお題……」
 秋元真夏は、瞬発的に子供のような笑みを浮かべる。
「あぁ~! にゃんこ、こにゃんこ、まごにゃんこ。ねえこれ意外と難しいの! ちょみんなやってみてぇ」
 風秋夕は笑う。
「卒業記念写真集のツイッターで、まなったん全然言えてなかったね、あ~、かわちい!」
「世界大会の七位が挑戦するべきだ」
 稲見瓶が言った。
 磯野波平は大きな態度で、鼻を鳴らした。
「か~んたんだぜぇ~……。おい、なめてもらっちゃあ困るんだよちみ達、ちみ達とは住む次元が違うからねえ!」
 風秋夕は脚を組んだ。
「じゃあ、間違えたら罰ゲームな。一生メシ食うなよ」
「死ぬじゃん俺………」」
 磯野波平は顔をしかめて、風秋夕を睨(にら)んだ。
「じゃああれな、チュウ、しちゃうかんな、間違えたら、つか間違えなくてもまなったんに。なあ~? まなった~ん?」
 秋元真夏は眼を無くして笑い、首を素早く横に振って苦笑している。
 風秋夕はソファから背を離して起き上がる。
「まあいいや……。じゃあ、覚えろよ。にゃんここにゃんこ、まごにゃんこ、だぞ波平。それを二回繰り返せ。練習は無し、はい、いくぞ、始め!」

「まんここにゃんこまごにゃんこっ‼ にゃんこおまんこまごにゃんこっ‼」

 風秋夕はぎゅ、と眉(まゆ)を顰(ひそ)めた。
「今、すっごい事言わなかったあ、この人………」
 秋元真夏は笑みをほどほどにして、小首を傾げた。
「ん、ちょと、よくわかんなかったから、も一回! もう一回やって」
 風秋夕は不安そうな顔をする。
「でもすっごい事言うかもよこの人………」
 磯野波平は、不安そうにそう言った風秋夕に、大袈裟(おおげさ)に鼻を鳴らす。
「ふんっ! んなんだよ、ちゃんと聞いてろよな~、グズだな~てめえは~……。おい、無表情、ちゃんと言えてたろ?」
 稲見瓶は、声に気がついて、スマートフォンをソファに置いた。
作品名:ズッキュン‼‼ 作家名:タンポポ