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ズッキュン‼‼

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 風秋夕はでれえとはにかんだ。
「桃ちゃんのなまり、やっぱ可愛すぎるな……。とうとう標準語にならなかったね。良かった……」
「なまってないですけど」
「あっはは、超なまってる。可愛い愛してる桃ちゃん」
 風秋夕は指先でキュンを作って、大園桃子に向けた。大園桃子は、むっとしてそれを手で掃(はら)う仕草をしていた。
「あれ与田ちゃん、ちょっとジェラシー?」風秋夕は、秋元真夏も見る。「あ、まなったん妬(や)いちゃった?」
 与田祐希は眠そうな眼でにやける。「う~ん、ジェラシーかあ……。祐希には無い感情だな~」
 秋元真夏はにっこりと微笑む。「私だけを見てて、ズッキュン!」
 風秋夕は胸に両手を当ててあえぐ。
「どうしたのまなったん、今日はずいぶんとサービスがいいね?」稲見瓶は同じソファに座る秋元真夏に微笑んだ。「何かいい事でもあったの?」
 秋元真夏は笑みを浮かべたまま、通常のテンションに戻って答える。
「いや夕君に、どのぐらい通用するのかな~って、思った。ははっ」
 岩本蓮加は「部屋行きま~す」と、ソファから立ち上がった。
 歩き出す岩本蓮加に「おやすみなさい」が飛び交ったが、彼女はこれからビデオゲームのVALORANT(ヴァロラント)を朝までやる。
 山下美月はスマートフォンの録画した動画から顔を上げて、磯野波平を見る。
「ねえ、波平君。……他の曲、歌えないの? あの、洋楽とかで」
 梅澤美波は「それ撮ってんの?」と山下美月を一瞥していた。
「うん撮った……。ねえ波平君、もっと歌ってみてよ。泣ける系でも、何でもいいから」
 磯野波平は眉を顰める。
「何でもいいからって……。あそっかあ!」磯野波平は表情を明るくする。「とにかく聴きてえわけな? があっは、そんなに良かったあ? 美月ちゃ~ん」
「うん」山下美月は親指を立てた。「最高」
「があっはっはあ!」
 秋元真夏は、思い出し笑いがようやく落ち着いてきたので、磯野波平に言う。
「今度こそ、今度こそ私への想いを込めて歌ってよじゃあ」
「いやさっきも込めてんだけどな……、今度はって」磯野波平は腕を組む。「なんだろうなぁ………。美女と野獣か、アラジンか……、ライオンキング?」
 風秋夕は慌てて言う。
「いつかのクリスマスに、あんた美女と野獣とアラジン歌って、乃木坂の前で大変な事になったでしょうが……。事故だぞ、あれは……」
 稲見瓶はスマートフォンから顔を上げる。
「アラジンと美女と野獣は、今回はやめて。ライオンキングを歌うといいよ。ライオンキングというと、二曲思い浮かぶけどね」
「ザブトン・ジョンの方だな」磯野波平は決め顔をした。
「エルトン・ジョンだ馬鹿め……」風秋夕は座視で言った。
 大園桃子は円(つぶ)らな瞳を輝かせる。
「えー、聴きたいかも……」
 与田祐希は完全に座った眼でにやける。
「歌え歌え……」
 梅澤美波はチーズ餃子を食べ終えて、ティッシュで口元をふいてから、皆を見回す。
「え、でも波平君、声はでっかいから、ちゃんと歌えば感動しますよねえ?」
「ちゃんと歌えばって何だよ……」磯野波平は顔をしかめて小首を傾げる。「ちゃんと歌えばってどゆ事よ、梅ちゃん」
「え? 例えばぁ……、私達が、歌詞の意味を理解すれば、とか?」
 磯野波平はにやけて親指を立てた。
「次に歌うのは、ケビン・コスナーのライオンキングのエンディング曲に使われた名曲だ、歌詞の内容もばっちり愛、だぜ」
「ケビン・コスナーって俳優だよう?」風秋夕は困った顔で磯野波平を見る。「エルトン・ジョンでしょうが……。どっからケビン・コスナー出て来ちゃったのその頭は……」
 秋元真夏は、子供のような無邪気な笑みを浮かべる。
「期待してる。感動して泣かせてくれたら……、どうしよっかな、……う~ん」
 磯野波平は希望を見つけたような顔で言う。「一晩(ひとばん)!」
 風秋夕は叫ぶ。「ダメそういうの!!」
「ズッキュンな!!」磯野波平ははにかんだ。
「ズッキュンかよ……」風秋夕は考えてから、驚く。「おい一晩中ズッキュンかよこわ!! なんの拷問(ごうもん)だよまなったん疲れきっちゃうでしょうが!」
「はい、いいよ歌って、いいから」山下美月はスマートフォンを構えて言った。
 磯野波平は、咳払いをして、少しだけ緊張した笑みを浮かべた。
「この曲はなあ……、バラードだ……。だ難っしいんだけどな、実はガキん頃からカラオケで歌ってる十八番(おはこ)なんだ。曲はデンゼル・ワシントンの『キャン・ユー・フィール・ザ・ラブ・トゥナイト』だ……」
「だからその曲歌ってるのエルトン・ジョンだってば……。わざとぉ?」風秋夕は嫌そうに言う。「デンゼル・ワシントンも俳優だよぉ? ハリウッドの役者さんだよ?」
「はいうっせえ消えろ!」
 秋元真夏は上目遣いになって、小さな拍手をした。
 磯野波平は、せつなく、その表情をしぶくさせる。
「イーサン……、『キャン・ユー・セレブレイト』流せ……」
「安室奈美恵ちゃんに変わってるタイトル違うよお前、馬鹿なの? そこまで馬鹿だったの?」風秋夕は驚いている。
「間違えた」磯野波平は、心を入れ替えて、丁寧(ていねい)に言う。「いいかね、イーサン……。エルトン・ジョンの『キャン・ユー・フィール・ザ・ラブ・トゥナイト』、流したまえ…イーサン……」
 皆は黙って磯野波平に視線を集中させる。
 エルトン・ジョンの『キャン・ユー・フィール・ザ・ラブ・トゥナイト』の前奏が流れ始めた……。
 秋元真夏は、リラックスして微笑んでいる。
 磯野波平は、眼を閉じた……。

 レズ噛むスレンダー 2(トゥー)アザラシ危ねえ
 上んだひ~! ラブ・ロレックスうえ~!
 軽豚(けいぶた)ラムうぇい!

 縁日(えんにち)チェーン・ティック木綿(もめん)
 円(えん)だスイーツミーズルー
 いつ&ナイフ4(フォー)デスレッスンするウォーリアー
 JAS(ジャス)とBうぃズユー

 偏見(へんけん)指ザ♭(フラット)ツナ(ツナ)
 いいですうえ~! Wii(ウィー)を!
 いつなあ? 4(フォー)デブ笑うワンだ堕落(だらく)
 デッド! Wii(ウィー)が! ディス4(フォー)!
 偏見(へんけん)ユッフィー ズラ? 2(トゥー)無い(2(トゥー)無い)
 はあ? ディスれ中レース
 いつなあ? 爪(つめ)金でバカボン
 リフト便利(べんり)ベッド

 風秋夕はしらけた顔で言う。
「はいいいよ、イーサン、止めて……」
 東側のラウンジに流れていたBGMが1秒をかけて聴こえなくなっていくようにしてぴたりと止まった。
 与田祐希は笑う。
「偏見って言ってない? なんか偏見、偏見って聴こえる……」
 梅澤美波は感心していた。
「これが一番うまかったよ」
 磯野波平は照れ笑いを浮かべる。
「まなったん、届いちゃったか?」
 秋元真夏はバッグの中を漁(あさ)っていた。「ん?」と磯野波平の言葉に気がつく。
「聴いてやしねえし! いや聴いてくれてたか?」磯野波平は悲劇的な表情で秋元真夏を見つめた。「まなったんに歌ったんだぜえ?」
 稲見瓶は無表情で拍手する。
作品名:ズッキュン‼‼ 作家名:タンポポ