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ズッキュン‼‼

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 考えればよかったのかもって思っちゃうくらい
 乃木坂もメンバーもスタッフさんも、
 応援してくれるファンの皆さんも大好きで。

 でもそんな大好きな人たちが作る
 ここから先の乃木坂を見ていきたい気持ちも
 同じくらいある。


 だから、卒業を決めました。


 この11年間、
 特にキャプテンになってからの3年間は
 変わらずにいることの大切さと
 変化を受け入れることの大切さを学びました。

 結成当初からグループにいる私からしたら
 今が第何章の乃木坂なのかわからないくらい
 変化はしているけど、その中で卒業していった
 メンバーが残してくれたバトンはしっかり
 後輩たちが受け継いでくれているって
 そのバトンを横に並んで握って
 一緒に走ってきた私が自信を持って言えます。

 生まれ変わってもアイドルになりたいし
 乃木坂46になりたい。

 そう思えるくらい大好きなグループに
 11年も居られて幸せでした。

 2/26は横浜アリーナで卒業コンサートを
 させていただくことになりました。

 バースデーライブの最終日。

 真ん中に立ったことないから…
 ドキドキしちゃうな。

 同期はいなくなってしまったけど
 後輩と走る乃木坂も最高だって
 皆さんに思ってもらえる1日にしたいと思います!

 そして、今後のお話ですが変わらず
 芸能活動を続けさせていただきたいなと
 考えています。

 感謝の気持ちを忘れずに、
 また新たなスタートを切って
 笑顔な私を皆さんに見ていただけるように
 頑張っていきます^^

 あと少し よろしくお願いします。
 そして、ここまで応援してくださって
 本当にありがとうございました。

       2

 卒業――。この事が、ファンにおいてどれほどの意味あるアクシデントであるかは、容易に想像がつくだろう。だが、これをただのイベントとして見れば、その見え方はまた違ってくるのだが。
 大抵の物事がそうだといえる。広義(こうぎ)に捉(とら)えれば、それはその情報をキャッチする者において重要な価値を意味するものにもなるし、狭義(きょうぎ)に捉えてしまえば、それはただの響きにもなる。
 感動や祝福、嘆(なげ)きや哀(かな)しみ、感激や興奮だって、その感情において1番相応(ふさわ)しい言葉をネストしているだけだ。
 しかし、それこそが道理であり、自然的で最も人間らしい思考的な現象だろう。水が低い方へと流れる事に近しい重力方向だといえる。
 ただ、その喜怒哀楽が齎(もたら)す感情のネストの中には、コモンセンスを重んじない、悲観的、否定的な異分子も発生する。
 大多数の束(たば)ねる感情という分子の中には、そういった異分子的なものが少なくとも少数含まれるのが理というものだろう。
 いつか複雑化されていた感情という知性は、成長と共に、社会的なルールという血液を巡回させて、記号化され、適正化され、より単純化されていく。その単純化を阻(はば)もうとする異分的な反逆こそ、正義を強く信じた幼少時代からの持つアナライズなのかもしれない。
 なぜ、分析(ぶんせき)する必要があるのか。それは単純化されていく自然的な流れから反(そ)れて、深い情愛を己の正義で裁(さば)いたという結果からきている。複雑化されていたかつての感情が、今も強く機能しているから起こる現象だ。
 だからこそ、人は愛する対象に疑心を持ったり、愛する対象の失敗や過ちを罵倒したりもできる。そうなると、今度は単純化された集団社会がそれを悲しんだり、痛んだりする。社会全体が1個の生命体だとしたら、爪(つめ)がはがれたら治療するのと同じで、そういった単純化から分離していく攻撃的な意見なんかから対象を守るネットワークが創(つく)られる。
 その繰り返しが、アイドルの歩む王道であり、ファンの歩み道のりだ。アイドルもファンも、皆が同じではないから、幸福や悲劇の捉え方も異なる。摩擦(まさつ)は起こり得るものだ。
 だが、意識の中に色濃くある【好き】という感情が全てを突き動かす。泣き、笑い、傷つき、傷つけ、癒され、癒し、離れ、集まり、また新たな個体として【好き】が復元させるもの。
 それが、乃木坂46という存在だ。
 卒業という、決して切り離せない運命もまた、乃木坂46の一部であるのだ。11年という時の流れの中に、一体幾つの感情が生まれ、根付き、滅びては、また生まれてきただろうか。
 今やインターネット化されたこの世の中で、誰もが憧れるアイドルというオブジェクトであり続ける事が、どれほど困難な事か。崇拝する者が愛を貫くとも限らない。興味の乏しかった者が最終的に愛を貫く場合もある。あらゆる場面において多様化された言語は常にアイドルを評価する。表現する。
 1個の容姿という、その美しさを持つ造形だけに【好き】が継続するわけではなく、アイドルであり続けるその気高いプロセスに人は心を奪われる事もある。普通、デザインは無駄を削ぎ落していくほど洗練されていくが、アイドルの美とは、重ね合わせた時間、削ぎ落すのではなく、抱え込んだ分だけ魅力的に見える。
 ならば、彼女はもう、両手がいっぱいのはずだ。くたくたのはずだ。
 疲労困憊だろう。やりきってきたのだから。駆け抜けてきたのだから。
 なのに彼女は、生まれ変わってもまたアイドルになりたいし、また乃木坂46になりたいという……。
 答えはとうに出ている。アイドルでいる事、乃木坂46というオブジェクトであり続ける事の困難を知った上で、本人がそう言ってくれるのだから。これ以上の幸福は、ファンにとってはないだろう。
 ならば、卒業も、しっかりと受け入れなければならない。ただ情報をキャッチするのではなく、理解して、愛情や悲しみや感謝を抱きしめるように、受け入れる。
 好きだからこそ、簡単ではない、難しい事だな……。
 稲見瓶(いなみびん)は、コーヒーカップの中のインスタント・コーヒーの揺らめきを一瞥しながら、そこで思考する事をやめた。
 東京都新宿区に聳え立つ世界的大企業〈ファースト・コンタクト(株)〉本社ビルの二十二階にある、〈03ミーティング・ルーム〉にて、稲見瓶は退社時間を迎えた事で、コーヒーを飲みに来ていた。
 否、本当にインスタントのコーヒーだけを飲みにここに訪れたわけでは無いが。
 風秋夕(ふあきゆう)は考え込むようにして、未来的なデザインを施された長テーブルに指を組んでいた。風秋夕は、稲見瓶と共に〈ファースト・コンタクト(株)〉において時期エース的な存在の期待のエリート社員である。風秋夕も稲見瓶も、共に二千二十三年一月九日の現在、二十三歳であった。
 綾乃美紀は、鼻から深い溜息を吐き、誰にでもなく苦笑する。
「でも、これだけ卒業が続いても…、驚きと涙って…、枯れないもんなんですよね~、えへへ……」
 稲見瓶は、まだ熱いコーヒーカップをテーブルに預けて、綾乃美紀を一瞥した。
 綾乃美紀(あやのみき)は、会話の節目節目で、その都度、滑らかな流れで柔らかな笑顔を浮かべる。ちょうど乃木坂46の二代目キャプテン秋元真夏もそうだった。
作品名:ズッキュン‼‼ 作家名:タンポポ