二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ズッキュン‼‼

INDEX|25ページ/36ページ|

次のページ前のページ
 

「ほんとでござる、小生、わざとらしくぶつかってきたのが許せなくて、生まれて初めて、この野郎、てめえ今わざとやったでござるなあ、ぶっ飛ばすでござるからな……と思ったでござる」
「えー…、え? 思った?」秋元真夏は吹き出した。「思っただけ? 言ってないの?」
「言ってないでござる言ってないでござる」姫野あたるは首を振った。「そしたらその猫が知らんふりして通り過ぎようとしたので」
「猫?」秋元真夏はまた吹き出した。「えぶつかってきた相手って、猫なの?」
「猫でござる?」姫野あたるは不思議そうに頷いた。「何ででござる? 猫と言わなかったでござるか?」
「言ってな~い、はっは」秋元真夏は笑う。「じゃ猫にケンカ売ったの?」
「売ってないでござるよ」姫野あたるは真剣に答える。「ぶっ飛ばすぞ、と心で思ったんでござる」
「あそっか……、はっは」
 秋元真夏は笑いを落ち着けながら、辛子明太子餅をまた齧(かじ)った。
 姫野あたるは険しい表情で続ける。
「ようは、その猫が行った後でござる……。まなったん殿は、幽霊を、信じるでござるか?」
「え……」秋元真夏は、もぐもぐしながら、姫野あたるを見つめたままで、首を振った。「怖いから、信じたくない……」
 姫野あたるはその表情を険しくさせる。
「小生も信じないでござる。怖いゆえ」
 秋元真夏は、ふうん、と頷いて、姫野あたるを見つめ返す。
「え、で?」
「その猫の入っていった路地から……、なんか、声が聞こえたような気がしたんでござる……。それは、小生の事を呼ぶ声のような感じで……。小生はその路地を、ちょこっと覗き込んだでござるよ」
 秋元真夏はもぐもぐを終えて、真剣な顔で餅を呑み込んだ。
「酔っぱらったおっさんでござった」姫野あたるは険しい顔をした。「おっさんは小生にこう言ったでござる、お前なんで青い顔してんだ? と……」
「……は、え?」秋元真夏は咄嗟にきき返した。「幽霊は? え、そのおじさんが幽霊って事?」
「いや、おじさんは酔っ払いでござるな。幽霊は別に出てこないでござるよ、この話には」
「あそう……。じゃなんで今幽霊信じる、て聞いたの?」秋元真夏は、苦笑しながら辛子明太子餅を齧る。「それで?」
「青い顔は、仕事の為だと、小生答えたのでござる」
「おじさんに?」秋元真夏はもぐもぐしながら言った。「そいで?」
「すると酔っぱらったおっさんは、恨めしそうな顔で小生に言ったのでござる……。お前、ペンキ屋なめてんのか……、と。いやいや、なめてござらぬ、ペンキ屋は大変な業種だし、そもそも小生はペンキ屋ではござらぬ。と小生が答えると……、酔っぱらったおっさんは拳を振り上げて、小生めがけていきなり、ズボン! と言ったでござる……」
「……あ、え? 殴られたの?」秋元真夏は顔をしかめた。「殴られた音? 今の」
「いやいや、おっさんは小生に、ズボンと言っただけでござる」
秋元真夏は不思議そうに顔をしかめた。
「え? 振り上げた拳は?」
「おっさんは、肩の運動をして、こりをほぐしていただけでござるけど……。それが、何か?」
「いや、っふ」秋元真夏は吹き出した。「な~んか、ダーリンの話し方…、わかりずらい、はっは……」
「おっさんが言った通り、小生のズボンにはべったりと、青いペンキがついていたんでござるよ……。でも、でもでござるよ……。小生、そのズボンにペンキをべったりとつけたつもりは全く無くて………。まなったん殿は、心霊現象を、信じるでござるか?」
 秋元真夏は、餅を呑み込んでから、怯えたように、答える。
「やだやだ……。信じない」
「小生も信じないでござる」
「………」
「………」
「え?」秋元真夏は姫野あたるを見つめる。「それで?」
「ああ、そのズボンには青いペンキがついていたんでござるよ、しかも、べっとりと」姫野あたるは顔をしかめる。「それを酔っ払いのおっさんが教えてくれたんでござるな……。いやあ、そんな格好(かっこう)で電車に乗ったりしたでござるゆえ、恥ずかしくて…、少々、落ち込んだでござるよ……」
「……は、え。は? ……待って。ダーリン」秋元真夏は眉間に力を込めて、姫野あたるを見つめた。「怪奇現象は?」
「怪奇現象? ……ああ、うむ。怪奇現象は、小生は信じてないでござる」
 姫野あたるは、そう言ってから、深く頷いた。
 秋元真夏は、笑う。
「えへえ、なあに、……ふ、そのペンキべっとりが、怪奇現象なんじゃなくて? 信じてないだけ?」
 姫野あたるは、小首を傾げて、眼をぱちぱちとしている。
 秋元真夏は笑う。
「じゃあなんで今聞いたの? 怪奇現象信じてるか……」秋元真夏は困ったように苦笑した。「ダーリン、なんか……、なんか、頭打った? 今日」
 磯野波平は与田祐希の腕を触った。
 風秋夕が「ああ‼」と叫んだ。
「なに?」与田祐希は座った眼で磯野波平ににやけた。「ん?」
「いやよう、こ~んなきゃっしゃ~な腕じゃあ、フライパンも持ち上んねえだろ与田ちゃん?」
「ふん、持ち上がるわ」与田祐希は短く笑った。
 磯野波平は山下美月へと、手を伸ばす。
 山下美月は、それを凝視しながら、背を反らして腕を隠した。
「いいだろもむだけだろうが!!」
「あああ触るな!!」風秋夕は立ち上がる。「もむだけとっか……、きっさまぁ! それてめえの妹が言われたらどんな気持ちだ!」
「妹さんざ、ちっけえ頃だけよ可愛かったのぁ」磯野波平はしらけっつらで風秋夕を一瞥する。「べっつに、もむだけだぜえ? 腕をよう~、お前中坊かよ?」
「いいやダメだダメだダメダメ‼‼」風秋夕は興奮する。「乃木坂だぞ! 天使なんだぞ! エンジェルだよ‼ 見て楽しめ! 触れんな‼‼」
 姫野あたるは言う。
「そこで小生、その電車の中で、どうしても許せず……、思いっっきり、ガッツ~ン!と、ついにぶん殴ってやりたかったでござる……」
「え? 殴ってないの?」秋元真夏は吹き出した。「どうしたんだろ、ふふ、なんか、ふふん、なんか今日、ダーリンの話、うまく聞けないんだけど……」

       14

 翌日の夜――。この日の夜には秋元真夏と、乃木坂46の四期生が遊びに訪れていた。四期生の林瑠奈は、この後生配信があるという事で、この場には来ていない。休養中の掛橋沙耶香も四期生であるが、休養中の為にここにはいなかった。
 そこは地下二階のエントランス広場。そこに在る、東側のラウンジであった。皆は東西南北と四角く囲われたソファ・スペースに座って談笑している。
時刻はPM21時を回っていた。
 姫野あたるは顔に青い油性塗料をつけたままで、秋元真夏に微笑んだ。
「少々古い話なのでござるが……、まなったん殿になら、話してもいいかもしれないでござるなぁ~」
 秋元真夏はにっこりと微笑んだ。
「なになに、うん話して」
「それがぁ、昨日の事なのでござるが、コンビニでジャンプの立ち読みをしていると」
 秋元真夏は少しだけ驚く。
「え、昨日の話?」
「そうでござる?」
「あ昨日の話なんだ?」秋元真夏は笑みを落ち着けた。「いや、古いっていうからもっと昔の話なんだと思った……。はいそれで?」
「立ち読みをしている時に、小生……、なんだか、悪寒に襲われたんでござる」
作品名:ズッキュン‼‼ 作家名:タンポポ