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ズッキュン‼‼

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 秋元真夏は姫野あたるを見つめて、黙って頷いた。
「いやそのオカンではなくってっ草」姫野あたるは笑った。
「え?」秋元真夏は驚いた。「なんにも言ってないんですけど、私……」
「オカンではなく、悪寒に襲われたでござるよ……。すると、コンビニの壁である、ガラスの向こうから、なんとも質(たち)の悪い人相(にんそう)をした不良が1人、小生をじろり! と、睨んできそうだったので……、小生はとっさにその不良から」
「え、待って」秋元真夏は眉間を顰める。「じろりって…、睨まれてないの? まだ睨まれては、ない? の?」
「まだ睨まれてないでござるよ。いいでござるか、続けても?」姫野あたるは、頷いた秋元真夏を見つめながら、その表情を険しくさせる。「小生、とっさに立ち読みをやめたんでござるよ……。するとでござる、後ろから小生が棚に戻したジャンプへと、強引に手を伸ばしてきた一人のおっさんが、おいこら、クソガキぃ……、俺の邪魔だからそこをどけこらあ! と突然にそう言ってきそうだったんでござる。だから小生は」
「え、言われてはないの?」秋元真夏は吹き出した。「そこをどけって、言われたの?」
「言われてないでござる、言いそうだったんでござるよ……」姫野あたるは続きを話す。「だから小生、ぱっと身を翻(ひるがえ)して、ドリンク売り場の方へさっさと行こうかどうか迷ったんでござる」
「え?」秋元真夏は、吹き出した。「ドリンク売り場には、移動してないの?」
「してないでござるしてないでござる、まだジャンプの手前でござる」
 秋元真夏は苦笑する。
「なんか、そのペンキ顔についてから、ダーリンちょっと変だよ?」
「変で、ござるか?」姫野あたるは、苦笑した。「まあ、そのジャンプの棚からどいて、小生は外へ出たでござるよ……。すると、先ほどの質の悪い人相をした不良が、きゅ~に、小生の眼の前まで来て…、急にでござるよ? 小生に、おいこら…、何見てんだてめえ! て言ってきたら困るなあ、と思い……、小生は」
「ふふ、はっは…、言われてはないんだ?」秋元真夏は短く笑った。
「言われないでござる、安心して下され。と小生はその場でつぶやいたのでござるが、その不良が」
「え、待って待って、なに、今、私に言ったんじゃなくて?」秋元真夏は苦笑する。「その時、安心して下され、て自分に言ったの?」
「そぉうでござる」姫野あたるは大きく頷いた。「しかしその時、その不良が顔面という顔面を怒らせて、」
「顔面って1つでしょ……」秋元真夏は困ったように吹き出した。「ちょ、ごめん、はい。そいで?」
「怒った顔面で、小生の事を、グーで…、グーででござる。突然でござるよ? ボォッコォーン‼‼‼ ……と、殴りつけてきたら、怖いじゃないでごるか?」
 姫野あたるは澄ました眼で、秋元真夏を見つめる……。
 秋元真夏は、少し遅れて、驚いた顔をした。
「あ、え? なに……、私に聞いてる?」
 姫野あたるは、頷いた。
「怖いでござろう? 殴ってきたら……」
「は、え。殴ってきたわけじゃないの?」
「違うでござる」姫野あたるは真剣な顔をする。「そういう、凶悪なつらをして、小生をガンつけてきたのでござるよ、と心の自分がささやいたのでござるが、実際にも」
「え、待って待って……、はっは」秋元真夏は笑う。「ガンつけてきたの? ガンつけられてないの? どっちなの?」
「いや、ガンつけられてるのでござるよ、と、自分自身がそう言ってざわめいたんでござるよ。心が……。でも、実際によく見たら、その質の悪い人相をした不良は、小学生ぐらいで、チャリンコの周りをうろついていたのでござるよ」
秋元真夏は「あ小学生だったんだ」と、もはや大笑いしている。
姫野あたるは、顔つきを険しくさせた。
「小生は、すぐに……、ピンときて、観察したのでござる……」
 秋元真夏は「なに、小学生を観察したの?」と興味を持っていた。
「小学生は、チャリンコを盗もうとしていたんでござるよ……。それを証拠に、小学生は、とあるそのチャリンコの鍵を、強引にぶっ壊していたでござる」姫野あたるは、眼を見開いた。「もう、小生は完全にぶっち~ん‼‼ て、切れたでござる……。て言ってやりたくて」
「言ってないんだ?」秋元真夏は顔をしかめる。「ていうか、切れたよ、て言ってやりたかったんだ……。なんか、ふふ、難しいよ? ダーリン」
「ぶっちん切れた、と真っ赤な顔して小生は、そう、いつ言ってやろうかと、冷静に…、観察を続けていたのでござるが」
「冷静なんだ」秋元真夏ははにかむ。「はいそれで?」
「なんと、そのチャリンコは、びっくりでござるよ…、まなったん殿……。なあ~んとぉ、そのチャリンコ~、小生が乗ってきた、チャリンコじゃあないのでござった!」
 秋元真夏は顔を驚かせたままで、「え? は?」と囁いた。
「小生のじゃないでござる……」
「ああ、違ったのね……、ふふダーリン、ちょと、今日もなんか、言い方が変だよ? なんか変わった言い方してるよ?」秋元真夏は可笑しそうに笑った。「ほんと、頭とか打ってない? 大丈夫?」
 風秋夕は、ふと眼が合った柴田柚菜に、上品に微笑んだ。
「来月から、世界野球が始まるね? 野球のワールドカップかのかなあ? よくは知らないんだけど、ゆんちゃん知ってる?」
 柴田柚菜は、屈託(くったく)なく微笑んだ。
「う~ん。そぉーう、始まるのぉ~~」
 風秋夕はにこっと微笑む。
「俺がもし野球選手なら、こう言うな……。ゆんちゃん、今日もしも、俺がホームラン打ったら……、結婚して下さい」
 来栖栗鼠は鼻で笑ってみせた。
「夕くぅ~ん、そぉれじゃあ、ただの臭いセリフだよ~……。僕ならこう言うなぁ~? ゆんちゃん……、今日、もしも、誰かがホームラン打ったら、僕と結婚して下さい」
 磯野波平はむくりと、ソファから背を起こして「ガキがっ! 他力本願じゃねえかそれじゃあ」と吐き捨てた。
「どいつもこいつも、センスね~えな~……。俺ならこうだ……。ゆんちゃん、今日から俺のバットはゆんちゃんのも」
「下ネタじゃねえかっ‼‼」風秋夕は激しく突っ込んだ。「てめえだわセンスの欠片(かけら)もねえのは!」
 遠藤さくらは、聞くつもりはなかったのだが、その話題が耳に入ってしまい、必死に込み上げる笑いを堪えた。
 金川紗耶は、必死で笑いを堪える遠藤さくらに気づき、「さくちゃんにうけてるよ」と笑った。
 風秋夕と来栖栗鼠と磯野波平は、ぴたり、とざわつくのをやめ、笑いを堪えている遠藤さくらを静かに一瞥した。
 風秋夕は、来栖栗鼠と磯野波平に、無言で頷いた……。来栖栗鼠と磯野波平は、それぞれが個性的な笑みで大きく頷き返していた。
 風秋夕は、賀喜遥香に微笑む。
「かっきー……。歌を作ったんだ、もしも、この曲がオリコンで1位になったら、俺と、結婚して下さい……」
 賀喜遥香は、眼玉をひんむいて、驚いた顔で、ゆっくりとそう言った風秋夕から、皆へと視線を見回した。
 来栖栗鼠は鼻で笑う。
作品名:ズッキュン‼‼ 作家名:タンポポ