K&M リターンズ!
ああ、ただし、その中心部分の宝石はあまりいじりすぎるでないぞ。肉体を変化させるエネルギーがあまり安定せんのでな」
「オッケーオッケー、もうしばらく遊ばせてもらいますぜ。もちろん、プロフェッサーのためにもね」
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「子供達の行方不明事件が相次いでいる」
地球署のミーティングルーム。
バン以下地球署の面々が、神妙な面もちでドギーの言葉に耳を傾けている。
ドギーが手許のパネルを操作すると、ホログラムがアリエナイザーの姿を描き出した。
「被害にあったオモチャ屋やホビーショップの店主の証言から、犯人はおそらくこいつ、--トレーカ星人アンコモン」
「…のはず、なんだけどね」
傍らにいたスワンが、手許の資料を見ながら困ったような顔をした。
「トレーカ星人に変身能力はないはずよ。被害者の証言だと『縛り上げられてから、自分そっくりの姿に変わって…』ってことになってるんだけど」
「そこらへんがネックですか」
センが手にした鉛筆をくるくる回す。
「なんらかの理由で変身能力を身につけたか、あるいは別のアリエナイザーなのか…」
「あーん、明日はお休みとって、ゆーーっくりお風呂つかろうと思ったのにぃ〜」
「月月火水木金金、S.P.D.に休日はなーいっ」
「からくりが暴けりゃ、一気に事件解決!俺達が暴いてやりますよ、ボス!」
「よし、じゃあおまえたちは手分けして調査を開始してくれ」
「ロジャー!」
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「きゃあーーー!!」
夕方の細路地に、子供の悲鳴が一瞬上がって消えた。
駄菓子屋の老人に化けたアンコモンの指が、地面に落ちたカードを拾い上げる。
「待てっ!!」
鋭い叫びに、アンコモンの動きがぎくりと止まった。
細路地の入り口に、ひとりの青年が立ちはだかっていた。
「なんだ、テメェ…」
「見ていたぞ、子供を返せ!」
ひょろりとした体つきにメガネを掛けた優男。
年齢は30前後というところか。
スーツをぴっちりときこなしたサラリーマン風だが、その口調には有無を言わせぬ厳しさがあった。
「けっ、ナニモンだかしらねえが、そこをどきな!」
アンコモンはメタモリングを解除し、本来の姿を現す。
「なにっ」
青年は一瞬たじろいだが、すぐにファイティングポーズをとり、アンコモンに立ち向かってくる。
「おっ、しゃらくせえっ」
アンコモンの口から火球が放たれ、青年を襲う。
「たあっ」
青年の体が宙に舞い、アンコモンの脳天をめがけて蹴りを放つ。
アンコモンはすんでのところで身をかわすと、まだ空中にいる青年の背後から火球を放った。
「うわあっ!」
火球は青年のジャケットの背に命中し、青年は地面にゴロゴロと転がった。
立ち上がろうとした青年の眼前に、アンコモンが立ちはだかる。
「わ…」
「出しゃばりが。死にやがれ」
かぱ、とアンコモンの口が開き、火球を放とうとしたとき。
ファンファンファンファンファン
「…ち、S.P.D.か」
アンコモンは慌てたようにメタモリングを回した。
みるみるうちにその姿は無害そうな若い女性の姿に変わる。
きびすを返し、路地を駆けだしたアンコモンの前に、バンとテツが駆けつけた。
「…た、助けて下さい!あっちで爆発が!宇宙人が!」
「ああ、もう大丈夫だ!」
「早く逃げて下さい、お嬢さん!」
銃を構えて路地へ駆けていく二人を尻目に、アンコモンはちろりと舌を出して逃げ去るのだった。
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「だーかーらー、僕は違いますってーー!!」
地球署。
青年はS.P.D.メンバーに取り囲まれ、事情聴取を受けていた。
「ウソつけ!じゃあなんであんなとこに倒れてたんだよ!」
「火傷してた背中も、もう回復してる。ナンセンス」
バンとテツに両側から挟まれてやいやいと言われているところに、ホージーが現れた。
「…照会結果が出た。結論から言えば、その人はシロ、だな。G.U.C.P.C.だ」
「じーゆー…?」
全く飲み込めないバンの代わりに、後ろから顔を出したジャスミンが答える。
「Garaxy Union Children Protect Committee、銀河連合児童保護委員会。
児童の育成や教育、犯罪からの保護などを司る、地球で言えばUNICEFね」
「えっ?じゃあ…」
青年はちょっと困ったような顔をしながら、懐から手帳型のライセンスを取り出した。
「改めて自己紹介します。
アイビー星人ニック。地球名、高瀬健。G.U.C.P.C.地球極東地区の調査官です」
「ほう、するとアイビー星で大学を出て、すぐに地球へ」
青年…ニックはドギーの向かいに座り、自分の経歴をざっと説明した。
「はい。この星で卒論を書いて、すっかり地球が好きになってしまったんです。
今回の連続蒸発事件に関しては、G.U.C.P.C.からも独自に調査指令が出ていたもので…」
「それについて多少ききたいんだが、ヤツはキミの目の前で『変身』したと言ったな」
「はい」
「トレーカ星人に変身能力はないはずなのだが、ヤツは一体どのようにして変身したんだ」
「確か…」
ニックの脳裏に、アンコモンの姿が甦る。
---サイレンを聞いた直後、彼は確か指先の何かに触れて……
「指輪…」
「えっ?」
「大きな指輪をこう、ダイヤルみたいに回してたような」
「ふむ…その指輪がおそらく、アンコモンに変身能力を与えたのだろうが…」
ピピピピピピッ
「どうした、ウメコ」
『ポイントKT-268、アリエナイザーとあと、変なロボ、きゃあっっ!』
スクリーンに映し出されたのは、変身したウメコに襲いかかるアンコモンの姿だった。
その傍らに、今まで見たことのない黒ずくめの人物が映っている。
ウメコの言っている「変なロボ」だろうか。
「あれは、まさか!?」
ニックが立ち上がり、「変なロボ」を凝視する。
「デカレンジャー、急行しろ!」
「ロジャー!」
「ニックさんまでついてくるとは思わなかったぜ」
「ちょっと心当たりが…いや、間違いならいいけども……」
現場に急行したメンバーを待ち受けていたのは、黒ずくめのロボットに襲われているデカピンク・ウメコだった。
ロボットの左腕につけられた巨大なナイフが、2度3度とウメコに向かって振り下ろされるのをギリギリで避けている。
「アンコモンはっ!?」
「サイレンが聞こえたら逃げ出しちゃったのよ!キャー!」
「くそ、何はともあれそいつを倒すのが先かっ」
ライセンスを構え、駆け寄ろうとするバン。
だが、それより早く、ホージーが銃を抜いた。
ヴィシュン!
狙い過たず、光線はウメコの肩口を貫き、手にしていたSPシューターを落とさせる。
「なにするんだよ、相棒!」
作品名:K&M リターンズ! 作家名:SAGARA