K&M リターンズ!
「……相棒って言うな。それに、そいつはウメコじゃない」
「へ?」
「…チッ、流石に2度目はねえかよ」
ピンクのスーツの左手に、大きな指輪が光っている。
きり、とリングを回し、アンコモンが姿を現した。
「ウメコをどうした!」
「あそこだよ」
アンコモンの指さす先で、ドロイドが気絶したらしいウメコを抱えていた。
「オニさんこちら、ってなあ」
負傷した腕をかばいながら、アンコモンがドロイドと共に走り出し、その先の廃工場に消えた。
追おうとしたメンバーの前に、ロボットが立ちはだかる。
巨大なナイフを振り回し、力任せに叩きつけ、ぶんなげ、はじき飛ばされる。とんでもない馬鹿力だ。
「てめ、この、どけってんだよっ!」
「なんなんだ、こいつ!」
ロボットの腕ではじかれたバンとセンを受け止め、ニックがロボットの真正面に立った。
「バンさん、ここは僕が引き受ける!はやくウメコさんを!!」
「え、でも」
「僕なら大丈夫」
ニックは上着のポケットから何かを取り出した。
先ほど見せられたライセンスではない。もっと大きめのアイテムだ。
「ドルフィーーーン!!」
叫び声と共にアイテムを天高くかざしたニックの頭上に光り輝く物体が現れ、同時にニックの姿がその光に溶けるように消えた。
光を放つ物体--どうやら車のようだ--と一体化したニックの体が、その姿を変えていく------
数瞬。
光がおさまったとき、そこに立っていた姿は、先ほどまでのニックではなかった。
「星雲仮面、
---マシンマン!!!」
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「あ、あ、あやつはあああ!!」
モニターを見ていたKがワインを噴き出し、ついでに勢い余って椅子から転げ落ちた。
「何者です」
あまりの慌て振りに、アブレラがモニターとKを交互に見やりながら問う。
Kは床に転がったまま、手足をばたつかせて絶叫した。
「不倶戴天のカタキじゃっ!毎度毎度毎度毎度毎度、ワシの邪魔ばかりしおっておったヤツじゃ!
しばらくぶりにワシが楽しもうと思っておったのに、こやつまで顔を出すとは思わなんだ!!!
えーい、ナイフ男!マシンマンと刑事どもをギッタギタに切り潰せ〜〜〜!!」
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「…アンビリーバブル」
「ウソ…」
「…ナンセンス」
「マジかよ…」
「…はあ…」
5人は呆然と、ニック---マシンマンを見ていた。
ナイフ男の振り下ろした腕をがっきと受け止め、受け流す。
だが、まだナイフ男のパワーが微妙に上なのか、受け流した後の体が微妙によろけているようだ。
「よし、俺達もいくぜ!
----エマージェンシー!」
「デカレンジャー!!」
5人の姿が変わり、と同時に、体当たりでふっとばされるナイフ男。
「ワープスロットル!」
マシンマンの手に銃が現れ、ナイフ男の顔面を狙ってビームが放たれる。
視界を奪われ、思わず顔面をかばったその隙をついて、バンとテツがナイフ男の両脇を掛けぬけた。
後を追おうと立ち上がりかけたナイフ男の後頭部と背中に、ワープスロットルとSPシューターの集中砲火が浴びせ掛けられる。
「グアッ」
キナ臭いにおいが立ちこめ、ばちばち、と青白くショートを起こした回路がむき出しになる。
それでもナイフ男の動きはとまらない。
立ち上がり、マシンマンに向かってものすごい勢いで襲いかかってくる。
だが彼は動かなかった。
「マシン」
ナイフ男の突進を紙一重のさらに半分でかわし、ほんの半歩ほど退く。
すれ違いざま、まばゆい光輝が二人の隙間を埋めた。
「サンダー!」
数メートルのオーバーラン。
一瞬の後、ナイフ男の体がぐるりとこちらを向いた。
振り向いたその胸に淡く光る、「Z」の文字。
背を向けたままのマシンマンの背後で、ゆっくりとその体が後ろ向きに倒れ……爆発した。
「さあ、早くバンさんたちと合流を!」
(……あのー、『マシンマン』って…)
(ていうか『星雲仮面』って…)
(その…スタイルというかコスチューム……)
どうしても突っ込みたい気持ちを今はぐっとこらえ、3人はマシンマンと共に廃工場へ突入した。
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廃工場の中では、膠着状態が続いていた。
アンコモンはウメコを盾にしたまま、バンとテツに火球を浴びせかける。
反撃しようにも、ウメコに当たるのを恐れて全く手が出せない状態だ。
「くそ、ウメコ!…おいウメコ!」
バンの必死の呼びかけにも、目を覚ます様子がない。
「俺ぁそろそろおいとまさせてもらうぜ。子供もたくさんカードに出来たしな、あちこちの星で元に戻して売り飛ばしゃおめえ、しばらく遊んで暮らせらあな」
カッ、カッ、と吐き出された火球がテツのボディを直撃する。
「ぐあっ!」
「テツ!」
そこへ駆けつけた4人。
「おおっと、動くな!下手なマネすりゃこの女刑事さんの命はねえぜ」
全員がその場に凍り付く。
「よくやったな、アンコモン」
そして、物陰から現れた長身の人影がふたつ。
「アブレラ!!」
「--K!!」
「ぬははは、久しぶりじゃなマシンマン。息災でなにより。
そしてS.P.D.諸君、お初にお目にかかる。ワシの名はK、プロフェッサーKじゃ」
アブレラと共に現れた老人は呵々と笑いながらそう言った。
「あなたがアンコモンに指輪を与えたの!?」
ジャスミンがちょっと戸惑ったような面持ちでSPシューターを構える。
「いかにも。ワシのメタモリングは完璧じゃろう?ちいっと抜けてるのが相手とはいえ、天下のS.P.D.まで騙し仰せたのじゃからな」
「う、うるせえ!!大体てめえ地球人だろ!なんでこんなコウモリ野郎に手を貸してるんだよ!」
バンが慌てて叫ぶ。おそらくスーツの下の顔は真っ赤に違いない。
「ワシはな、子供が大嫌いなんじゃ!子供の泣き声や悲しむ声を聞くと、胸がすーーっとするんじゃ。
このワシの天才的な頭脳をもってしても、子供達をカードにするなどという面白いマネはできなんだ。
いつでもどこでも好きなときに子供の泣きっ面が眺められるなぞ、画期的と言わずしてなんと言おう!」
「そんなくだらないことのために、アリエナイザーと組んだってのか!」
センの握りしめた拳が震えている。
「なんとでも言うがいいわい。我々はこのままおいとまさせてもらうでな、下手な動きはせんほうがいい」
じりじりと下がりはじめたアリエナイザーたちを前に、6人は一歩も動けない。
---不意に、差し込んできた西日がきらりと足下のガラスのかけらにはじかれて、アリエナイザーたちの顔を照らした。
一瞬のほんの何分の1かだったが、マシンマンとホージーはその隙を見逃さなかった。
抜き撃つ手も見せず、二人の銃が放った光線がアンコモンの腕に命中する。
「うあてっ!」
作品名:K&M リターンズ! 作家名:SAGARA