トキトキメキメキ
山本五郎左衛門は肉を握り掴み――、そのまま、大海蛇の皮と肉を左右逆方向に、思い切りに引き千切っていった――。
堪らずにレビィアタンは奇声のような悲鳴の大音響を叫び上げる……。
『見タカ悪五郎ォォォ、現(うつつ)ニオケル偽(いつわ)リデアレ謂(い)ウ決マリ事モ守ラズト、コオンナ妖(あやかし)デ勝負ヲ征シヨウトハ、片腹痛イワ‼‼‼』
洪水のような血液を土砂降りさせながら、血反吐を巻き散らす大海蛇は、山本五郎左衛門の頭に巨大な顎(あご)を食い込ませた――。そのまま、牙利醐利(がりごり)と食い殺し始める……。
『我ガ名ハ山本五郎左衛門(さんもとごろうざえもん)ンンン、真成ル魔界ノ魔王成リ‼‼‼』
高らかに笑い声を上げる山本五郎左衛門は、やがて頭部を失い、大量の泡(あぶく)のように融解して、白い煙へと蒸発して天へと遡上していった……。
梅澤美波は叫ぶように言う。
「初めてあの硬い鱗が裂けたっ、攻撃するなら傷口の中身しかない、一点集中だよみんなぁっ‼‼」
吉田綾乃クリスティーの【仲間意識統一通信(ボイスチャット)】でそれは皆へと伝えられた。
伊藤理々杏は海面に浮かびながら、吉田綾乃クリスティーの【仲間意識統一通信(ボイスチャット)】に叫ぶ。
「でもね綾てぃー伝えてっ、ハァ大きすぎて、不気味すぎてハァ脚がすくみ上っちゃって本気が出せないのっ、ハァどうしたらいいかなっ‼‼」
すかさずに吉田綾乃クリスティーが【仲間意識統一通信(ボイスチャット)】で皆に伝えた。
中村麗乃は【頭脳】の能力を発動させて、叫ぶ。
「珠美の【流行(トレンド)】で支配的で強気な精神を流行らせてっ‼‼」
吉田綾乃クリスティーの【仲間意識統一通信(ボイスチャット)】がそれを伝える。
阪口珠美は眼を閉じ、限界に近しい呼吸を整えながら、囁くように【流行(トレンド)】の能力を発動させる――。
「支配的で、強気な精神が、今のトレンドだよ……」
その死闘に参加している全ヒーローの姿が七割だけ、一瞬の光に包まれた――。
梅澤美波は凛々しき睨みで、レビィアタンを大きく指差した。
「血祭りだーーっ‼‼」
中村麗乃は【心を奪うもの】の能力を発動させる。
「ここは舞台上、海は客席! 私はリカ‼‼ あなたは観客! あなたはもう、スポットライトを浴びる私から二度と、意識を反らせないはずっ‼ 動くなぁぁーー‼‼」
レビィアタンの10キロもある天に届きそうな巨躯が眩い光を放った――。
梅澤美波は吉田綾乃クリスティーの【仲間意識統一通信(ボイスチャット)】に言う。
「伝えて吉田……。蛇が動けない今のうちに、理々杏とでんに、最後の一撃の指示、それから、海から二人が上がったら、与田に最後のカミナリの一撃の指示……、続けて桃子の式神での最後の一撃の指示……」
吉田綾乃クリスティーは【仲間意識統一通信(ボイスチャット)】で皆に伝えた。更に通信する。
「最初にうちと蓮加が海蛇の傷口に射撃するっ‼‼」
「了解、史緒里!」梅澤美波は凛々しく微笑む。「この作戦の本当の本当の一番手はあんただよ……。みんなが攻撃する前に、神の言葉で、みんなの攻撃が、悪を滅ぼす聖なる攻撃になるように、神の言葉で宣言して……」
久保史緒里は、よろけながら、立ち上がった。その顔には、笑みを浮かべている。
「わかった……。最後の、奇跡……。起こしてみせるね……」
「頼りにしてるぜ、相棒!」
久保史緒里は眼を閉じ――、【神の言葉】を顕現する……。
「これからレビィアタンに与えるヒーロー達の攻撃は、悪を滅ぼす聖なる攻撃へと変わる――」
ヒーロー達の姿が、不思議な力に満ち溢れていく……。
「行ってくる」
梅澤美波は〈空扉〉を開き、今一度、身動きを封じられているレビィアタンを振り返った。
「未来において起こりえる可能性のある悪共……、黙ってお前らは敗者として史に名を刻め……」
扉を閉めた梅澤美波は空間ごと瞬間移動し、崩壊したレインボーブリッジの岩本蓮加の眼の前にて、〈空扉〉の扉を開いた。
「蓮加、行こうか‼‼」
「行っときますか……」
蓮加はカラの弾倉を捨てて、新しい弾倉をデザート・イーグルに装填した。
13
どす黒い鮮血がどくどくと洪水のように溢れ出る大海蛇の背びれに開口した真っ赤な傷口の前に、〈空扉〉が開かれる――。
梅澤美波は大きく扉を開きながら、夜叉(やしゃ)の如き素早い身の熟(こな)しで飛び出していった蓮加に叫ぶ。
「行って来いっ1000人キルの最強大天才っっ‼‼」
「こおぉぉのぉぉぉぉっっーーーー‼‼‼」
蓮加は開口した傷口の淵に着地し、煮え滾るマグマのような大海蛇の血飛沫を巻き散らしながら、蠢(うごめ)く内臓へと鋼の銃弾を連続射撃していく……。
「撃つべし撃つべし撃つべしっ、撃つべぇぇっしっっ‼‼」
カラの薬莢(やっきょう)と弾倉が次々に海へと落ちていく……。
「よっくも何回もぶっ飛ばしてくれたなこのバケモンっ‼‼ ハァ、最強の獣さえ銃殺する人呼んでヴァロ様をなぁぁめんなよボンクラぁぁーーっ‼‼」
吉田綾乃クリスティーの一斉掃射するガトリングガンの銃撃も大海蛇の背びれにばくりと開口した傷口に次々と撃ち込まれていく……。
レビィアタンは強烈な叫びをあげた――。
「おっけい、行くよ蓮加っ‼‼‼」
梅澤美波の伸ばした手が、蓮加の制服の首根っこを掴んで引っ張り上げる。
「苦っしい死ぬ死ぬっ!!」
「よくできました、海蛇の体内に聖なる銃弾が埋め込まれたよ、もう充分。これ以上はあんたの体力が心配」
「いや首が苦しくて死ぬかと思ったわ!! ハァ……、まあ、も、すっきりしたかな」
吉田綾乃クリスティーの【仲間意識統一通信(ボイスチャット)】が作戦を知らせる。
「でぇぇぇん‼‼」
「やぁったるわぁぁーーーっ‼‼」
佐藤楓は、水面下から背中のジェット噴射で跳び上がった――。そのまま、最下層にある背びれの傷口に刀を突き立て、ジェット噴射の爆発力で下から上へと刀で大海蛇の内臓を切り裂いていく……。
「水の呼吸・拾の型・生生流転・改(みずこきゅうじゅうかたせいせいるてんかい)っ‼‼‼」
吉田綾乃クリスティーは【仲間意識統一通信(ボイスチャット)】で通信する――。
「次ぃ、理々杏ぁぁーーっ!!」
向井葉月は【猛獣使い】の能力で、伊藤理々杏に通信する。
「待ってりりあん、ここは私を信じて最後の力、一緒にぶちかまそうっ!! りりあん君に決めたぁぁ!! ハァまず、ふうりょくでんき‼‼」
伊藤理々杏は躊躇(ためら)いながらも、海面状で即座に実行する。
「ふうりょくでんきっ‼‼」
これにより、風特性の技を受けると、充電状態になり、次に使う電気技が二倍になる。
向井葉月は吉田綾乃クリスティーの【仲間意識統一通信(ボイスチャット)】に叫ぶ。
「史緒里の神の言葉で突風を起こして‼‼」
吉田綾乃クリスティーはすぐに【仲間意識統一通信(ボイスチャット)】でそれを皆に伝えた。
久保史緒里は【神の言葉】を行使して祈る。
「神風、ハァ吹き荒れろぉぉ‼‼」